フジテレビ火曜9時ドラマ『アタシんちの男子』を楽しみましょう!!
ドラマは感動のうちに幕を閉じましたが、まだまだ『アタ男』熱は冷めません。
終了したドラマなのでネタバレ含みます。ご承知おきください
『アタシんちの男子』をこれから見る方、ストーリー、次回予告、登場人物をお探しの方は、
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アタシんちの男子のその後を考えよう

その日の夜
出だしと着地がちょっとへんだけど、まあ、勘弁してください
ちょっと夜中のテンションで恥ずかしいですが、上げます(笑)
千里の話です


恐怖時計の部屋


ベッドの上にクッションを積んで寄りかかり、本を読んでいる千里
顔を上げて時計を確認。
今の時刻と本の残りペ−ジの厚さを見比べ思案
迷ったが、今日はこれまでと栞を挟んで本を置く


とん とん とん とん


ほんとにかすかなノックの音
気配に気づいた千里がドアを開けると、廊下の角を曲がりかけた翔がふりかえる
おかえり
千里、夜中なので小さい声で挨拶
わるい。起こした
翔、恐怖時計の部屋の前まで戻ってくる
起きてたよ。本読んでた。
夜更かしは良くない!
人差し指を立てて、わざと説教口調。でも顔が笑っちゃってる
起こしに来たんじゃないの?
違うよ。挨拶だけしにきたんだー

た・だ・い・ま
言葉を区切りながら、千里が開けた扉をもう一度叩いてみせる。
さっきと同じだ
そういうこと。
千里、笑って、もう一度「おかえり」といい直す


今日は結構、遅くなった
おつかれさまでした
うん。つかれた。
ふーと、翔が息をつく
熱いお茶でも入れようか
平気だよ。千里ももう休まないとな
「ありがとな」と千里の頭をぽんぽんとなでる。
ふわ、と千里が照れる

頭なでられるのって、嬉しいけど照れるね。子供の頃以来かも
そーか?
懐かしい感じなのかな?
ふーん。じゃあ、もうちょっとやっちゃる
いーよー
遠慮するなって
・・・もしかして、ちょっと酔ってる?
すこーし
翔、空いてるほうの手の親指と人差し指で、ほんの僅かな隙間を作ってみせる
だと思った
んー?
翔、首を傾げて千里を見る。
千里、しかたないなーって、顔をして見せるけど、ちょっとうれしそう
翔が、びっくりするようなこと言う時は、大概そうだから
そーか?
背の高い翔から頭を隠せるわけもなく、千里は恥ずかしくて首をすくめる
千里の頭をなでてた翔の手がふと止まる
猫の飼い方の本にあったんだけど。
ん?
猫をなでると、すごく幸せそうな顔するだろ?
頭に手を載せたまま、千里の顔を覗き込む
うん。かわいいよね。
話が飛躍して、ちょっとついていき損ねた千里、怪訝そうに翔を見返す。
猫は、人間になでられると、子猫の頃、母猫が毛繕いしてくれた記憶がよみがえってきて嬉しいんだって。
へえ、そうなんだー
だからたくさん撫でてあげてくださいって、書いてあった
ニコニコ笑って再び手を動かし始める翔
あたし猫じゃないんだけど
あれ、違うの?
翔、優しい笑顔で千里を見る
なんだか千里、反撃し損ねてしまった。


しばらく大人しく頭をなでられてた千里、「あ、そうだ」と思い出した
あのね
ん?
明日、智と一緒に仕事を探しにいってくる
なに?
寝耳に水の翔。千里を撫でてた手が止まる
千里、今日の智の家庭訪問の経過と、夕食後の話し合いをかいつまんで説明。
黙って聞いていた翔「ふーん」と低く呟く
で、そういうことになったわけ
千里の話が一段落するのを待って、翔、千里の髪ををくっしゃくしゃにかき回す
わ。ちょっとー
千里、翔を叩く
いて。バカ。静かに。夜中だから
それはこっちのセリフ
悪かったよ、ちょっと八つ当たりしただけだから
え、お寿司食べたかったの?
違うよ。そうじゃなくて・・・
珍しくちょっと言いよどむ翔
俺のいないときに大事なこと決めるなよって、思ったんだけど、・・・俺は仕事でいなかったんだから、しかたないかってねー。
ぼさぼさにされた髪を両手で直していたので、千里は翔の表情をはっきり見たわけじゃないんだけど、その口調にちょっと淋しがってる響きを感じ、
「ごめんね」と翔にあやまる
あやまることじゃねーだろ。頑張って来いよ
翔、何事もなかったかのように、明るく笑う
智のことも、よろしくたのんだぜ
うん。・・・まあ、どうなるか、わかんないけどね
しかしさー、俺の目の届かないところで、千里が無茶するかと思うと、ドキドキする
大丈夫だって
ほんとかなー?
今朝は「うちに閉じ込めとくわけには行かない」っていってたじゃん
まーな
翔、大きめのため息をつく
俺は、これからもずっーと、千里が何かやらかすんじゃねーかって、ドキドキして過ごすのかと思うと、心臓がいくつあっても足りないよ
大袈裟だってば
無茶をするなら、できるだけ俺がフォローできるときにしてくれよな
うーん。あたしにその微調整ができると思う?
まー、無理だな
でしょ?
お手柔らかに願いますとしか言いようがないなー
翔の口調に、千里、思わず噴き出します


さあ、もう寝よ。喋ってたら切りがない
はーい
今回の件、「報・連・相」で、お願いしますよ
ほーれんそー?
社会人の常識でしょー?就活だいじょーぶ?
えー!?なに?
報告、連絡、相談。なんかあったら俺に話せってこと。わかった?
了解
じゃあ、おやすみ
おやすみなさい




右手を上げて挨拶をして廊下を帰る翔の後姿を見送る千里
ドアを閉めて1人になると、自分の頭を撫でてみる
このへんに、幸せを感じるスイッチがあると思ったんだけど、自分では見つからないのが不思議だなと思う。
ベッドにもぐりこみながら、さっきの翔の話を思い出す


猫が、人に撫でられるとき、すごく心地よさそうに目を細める。
あの表情が、離れてしまった母猫の記憶をよみがえらせているのだとしたら、すごく幸せな子猫時代だったんだろうなって思う。
今日、翔に頭を撫でてもらって、子どもみたいで恥ずかしかったけどすごくほっとした。胸のあたりが温かくなった。
翔の話が本当ならば、あれは、あたしの中に、お母さんの思い出がちゃんと残っているってことなんだ。
亡くなって10年たっても、お母さんの感触を思い出せるってことなんだ。
目頭が、なんだかじんわりしてきてしまう。ベッドの中で、体を丸める。
でも、これは、淋しい涙じゃないみたい。久しぶりにお母さんと出会えた、嬉し涙みたいだよ。
お母さんが頭を撫でてくれたころのあたしは小さかったから、お母さんの手はきっと大きく優しく温かだったんだと思う。
大人になったあたしは、翔の大きな手で、その温かさを思い出したのかもしれない。
翔の手がスイッチだったんだね
声に出した言葉は、ちょっと遠くて、くぐもって聞こえる。もう半分眠りかけているのかも。
だんだん眠りに落ちながら、途切れ途切れに考える
何気なく話してくれた例え話だったろうけど、あたしは今夜の手と言葉を、一生忘れないんじゃないかな。


また、わすれそうになったら、甘えて撫でてもらおうかな


と、眠りに落ちながら千里は小さく呟いた