フジテレビ火曜9時ドラマ『アタシんちの男子』を楽しみましょう!!
ドラマは感動のうちに幕を閉じましたが、まだまだ『アタ男』熱は冷めません。
終了したドラマなのでネタバレ含みます。ご承知おきください
『アタシんちの男子』をこれから見る方、ストーリー、次回予告、登場人物をお探しの方は、
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『続きシリーズ』『その後シリーズ』など、お話を読まれる方は、
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アタシんちの男子の針を進めたら…

少しだけ上げます
猛がやっと出てきました(笑)
風の話が長すぎました。
だって響子さん、好きなんだもん



■猛の仕事


公園
藤棚の下のベンチに寝そべって、肉まんを食べてる猛


ここしばらく、猛は父親の勤務している工務店の仕事に通っている
やり始めてみたら、猛は自分がこういう傾向の仕事を好きなことに気がついた
それも、ノコギリ引いたり、トンカン釘を打ったりするのが性に合っている
時田と敵対していた時、トリックハート城に篭城するために、廃材でバリケードを組んだが、状況は置いといて、結構楽しい作業だった
そういえば、昔、角材とベニヤ板を買ってきて、自分で本棚とかテレビ台とか作ってたよな
単に貧乏だったってこともあるけどな


しかし、こいつはやっかいだ
猛の膝の上には銀色のアタッシュケース


以前、大物政治家に、高級カツラを届ける仕事をした
弁護士に中身をダイナマイトに掏りかえられたり、高級カツラが行方不明になったり、風に恋するハードゲイが現れたりとバタバタだったが、何とか無事に任務終了した
もう、こんなめんどくせー仕事はごめんだと思っていたら、猛の古巣、スマイリースマイリーの社長から電話が来た
高級カツラメーカーから、「今回の配送方法は大変良かった。また次回もよろしく」と、猛指名で仕事の依頼があったととのことだ
メーカーの担当者は、

配達人は、とても配送業者には見えないいでたちで、SPとのやり取りも、傍目、暴走族がいちゃもんつけに怒鳴り込んできたようにしか見えなかった。あれならカツラを疑うものはいないだろうと、上得意である大物政治家から好評をいただいた。おかげで、信頼置ける業者だと、数人の新たな顧客も紹介され、大変感謝している。

と大変、上機嫌だったそうだ

世の中、なにが人のためになるのか、わかんないもんだよねー
社員には雇えないけど、単発で頼むよ。お願い!

笑顔がにこやかだが、意外とシビアな社長に依頼され、慢性的に懐が寂しい猛は不承不承ながら頷いた


つっても、カツラってーのは、そんなに必要ねーんじゃねーか?
と、たかをくくっていた猛だが、なかなかどうして、依頼は結構あるもんだった
調髪の具合や、白髪の混じり具合など、リアルに散髪や染毛をしているかのごとく、数種類のかつらを使って装うらしい
すでに道楽の域だな
しかし、そうまでして隠密で運ぶ必要あんのか?


猛、最後の肉まんの一塊を口に押し込み、正方形の紙袋をくしゃくしゃと丸め、ゴミ箱に投げる
ち!
外した紙くずを律儀に拾いに行く猛


お?
ゴミ箱のそばに行った猛、噴水のふちに腰掛けて両手にランドセルをいくつもぶら下げた男の子に気づく


男の子、俯いて、ふーとため息
荷物はな、預ったんならちゃんと届けろ、いやだったら最初から断れ
急に声をかけられびっくりした男の子、声の主を見上げてまたびっくり
目の前に、赤い特攻服が変な顔して立っていた
食え!
猛、もう一個残っていた肉まんを割り、半分は自分の口の中に、半分は紙袋ごと男の子に渡す
男の子、勢いに押されて、肉まんを受け取る
ありがとう、ございます…
怪訝そうな顔でお礼を言って、紙袋を開く
と、中には肝心の具がない皮ばかりの肉まんの片割れ
男の子、あからさまにがっかりした表情
遠慮すんなよ
もごもごと猛
なんか変なおじさんだな、と猛を見ていた男の子。「あ!」と、猛の顔を思い出す
コーンおじさん!
と、猛を指差す
んだと、ガキ!人をカールおじさんみたいに言うんじゃねー!!…って、あれ?
猛、上を向いて記憶をたどる


初夏、この公園で、やっぱりアタッシュケースを抱えて、バイク便の荷物について思案しているときに、何人かの小学生が、小柄な男の子を取り囲んでいたのを思い出す猛


お前、あん時のガキか!
男の子、頷く
アイス、食ったか?
コーンしかなかった
嘘だろ?
どういういやがらせかと思った
猛、男の子に加勢しに行ったとき、ソフトクリーム振り回してクリーム落としてたことに気がついていなかった
励ましてやったんだろーが
気まずそうに表情ゆがめる猛
いいから、食え
と、男の子が持った紙袋を口元へ寄せる
肉まんなのに、肉がない
男の子が小さな声でつぶやく
そんなわけねーだろ
猛、袋を覗き込む

男の子の言うとおり、肉まんの真ん中は空っぽ
交換してやろうにも、もう半分はすでに猛の胃袋の中
…においで食えにおいで
とむちゃくちゃを言う猛
男の子、両手のランドセルを丁寧に置いて、渋々肉まんの皮に噛み付く


その様子だと、まだやられてんのか
猛が男の子を見て片眉上げる
…友達だから
ふーん。ダチねー
と、そこへ流れる演歌の調べ。山川豊の霧のシアトル
猛が特攻服のポケットに手を入れると、携帯電話を取り出した
フルボリュームの演歌に、顔をしかめる男の子
時間だ
猛、携帯にバイク便の指定時刻をセットしていた
アラームを切り、携帯をポケットに戻しながら、男の子を見る


ガキ、おめーの名前はなんてーんだ?
…新海、航
にいみ、わたる、か。どんな字だ?
「新」しい、「海」に、航海の「航」
何年だ
5年
猛、航と名乗った男の子の頭に手を置き
しけた面してんじゃねー、少年!
と、わしゃわしゃと荒っぽく頭を撫でる
おめーがダチだって思ってんなら、言いてーこと言ってもいんじゃねーか?

航の返事はない
ま、俺には関係ねーけどよ
猛、特攻服の内ポケットを探り
なんか相談があったら、連絡してこいや
と、航の鼻先に黒地に赤文字がハデに散らされた名刺を突きつける

夢邪鬼 初代総長 大蔵猛
夜露死苦 健康第一 七転八倒 喧嘩上等 兄弟愛 特攻野郎etc
E-mail:takeru.ohkura@ohkura.ne.jp

あんまり至近距離だったので、航、思わず名刺を掴んでしまう
じゃーな
ビシッと揃えた2本指で敬礼して、特攻服を翻して航の元を去る猛


決まったんじゃねーか?と内心ほくそえみつつ、猛、自分のバイクに向う
と、山川豊のアメリカ橋のメロディが流れ出したのに気づく猛
猛の音声通話の着信音
ポケットから携帯取り出したが、覚えのない番号からの着信に、首をひねりつつ電話を取る
…航です
お、少年!なんだ、早速、俺の教えを請いたいってか
これ、おじさんのカバンだよね
あ?
猛が振り向くと噴水のそばで、航が銀色のアタッシュケースを高く掲げている
やっべ!
慌てて駆け戻る猛


バカ、お前、早く言えよ
アタッシュケースを胸に抱いて、航に苦情を言う猛
「勝手に来て勝手に帰って行ったくせに…」と、航、小声でぼそぼそ
あん?
なんでもない。おじさん、なんか用事があったんじゃないの?
お、そうだそうだ
猛、自分の額を掌でぺちと叩く
アタッシュケース抱えて、数歩駆け出すした猛、くるりと振り向き
俺はおじさんじゃねーぞ。口のきき方に気をつけろ、少年!
と一言叫んで慌しくバイクに飛び乗り、公園を後にする


変なおじさん
航、手元の名刺と、走り去るバイクを変わりばんこに眺める


よいしょとランドセルを両手にぶら下げる航


おじさんが言うほど、世の中甘くないんだよ
友達だからって、言いたいこと言って、みんなが離れちゃったら、僕、ほんとに1人になっちゃうじゃん


「ふー」とまた1つため息をついて、とぼとぼと公園を出て行く航




突進部隊・スマイリースマイリー事務所


バイクを止めて、軽やかに階段駆け上がる猛
勢いよくドアを開ける


物は大切に扱いましょうって学校で習わなかったかー?
帳簿つけている社長、顔は上げないが、音だけで猛とわかり、苦情でお迎え
壊れるとしたら、俺のせいっつーより、安普請だからでしょ
うるさいよ
社長、イライラと顔を上げる
任務遂行、いたしやした!
指を二本揃えて敬礼
おー、お疲れー
社長、猛の真っ赤な特攻服を目を細めて眺める
なんすか
まさか、そんな悪趣味な服が、役に立つ日が来るとはねー
どーいう意味っすか!?
猛、不満げに唇を突き出す
ま、いーや。このご時世、仕事いただけるだけで御の字だよ
社長、小さく首を振りつつ、デスクに用意してあった封筒を猛に手渡す
ありがとうございますっ!
猛、合掌してから両手で封筒を受け取る
それからね
社長、隣の部屋はいると、銀色のアタッシュケースを持って戻ってくる
これは、今週の金曜日の7時にね。
えー。またっすかー?
またっす
この、配達日まで保管するってのが面倒なんすよー
しょうがないね。その分、上乗せしてバイト代出してるんだから、ヨロシクたのむよ
社長、猛に顔を寄せ、声を潜める
くれぐれも内密にね、君の「イノチ」に関わるから
社長、某プロレスラーの真似して、猛にあごをしゃくってみせる
「イノキ」に、ですね
猛も自然にあごがしゃくれる
そ、「イノチ」に
社長も負けずにしゃくれ合戦
「キ?」
「チ!」


大人2人が額をすりあわせんばかりに、しゃくれ合戦を展開しているのを、他の社員が呆れ顔で見ている


何を張り合ってんだか
結局、社長は猛さんに辞めて欲しくないんだよね
素直に言えばいいのに
なんだかんだで、いいコンビだな




トリックハート城


アタッシュケースを小脇に抱え、上機嫌で封筒を覗きながら、猛が廊下を歩いている
予想以上の金額に、にやーと笑うと、内ポケットに封筒をしまう
リビングの前でこうもりを押し、タイミングを合わせてドアを蹴り開ける


今、帰ったぞ!!


おかえりー
リビングには智と明
8時過ぎてるので智はマンガ、明は携帯ゲーム機をそれぞれ持って、いつもの自分の席に座っている


毎回そんなことしてたら、丈夫なドアでも壊れちゃうよ
いきなり明のお小言
猛、舌打ち
ガキの癖して、うちの社長みたいなこと言ってんじゃねー
何だよ社長って
意味がわからない智、アヒル口
うるせーよ。
猛、ダイニングの自分の席に座って、テーブルに足を右足を上げる
あー。腹減ったー
汚ねーなー
猛が座った椅子の脚を蹴る智
んだよ!
テーブルは食事する場所だよ
明が平板口調で注意
ったく、てめーら、ちびっこがきてから、ちいせー事にいちいちうるさくなったよな
猛、不満そうに唇を突き出し、反抗的に左足もテーブルに上げる


常識が出てきたって、言ってよねー
暖炉の階段から千里が降りてくる
おめーは、そのかわいくない口より先に、俺に言うことがあんだろ、常識的に!
猛、両手を頭の後ろで組んでニヤニヤ
千里、「あ、そうか」と、思い当たり、猛のそばまで来て
おかえり
とかわいく微笑む
お、おう
急に千里に素直に出られて、びっくりしちゃった猛
猛がひるんだ隙を付いて、千里
あたしもちゃんと言う事言ったから、猛もやる事やってよ、ね!
千里、テーブルに載せられた猛の足を払う
のわ!
椅子の脚、前二本を浮かし、後二本足に体重かけていた猛、バランス崩して大慌て。溺れてるみたいに手足をばたつかせる
智、明、大笑い
猛、慌てて椅子から飛び降りて、仰向けに倒れることだけは免れる
椅子が床を撃つ大きな音
猛、千里をにらみつける
猛の逆襲読み込んでいた千里、あらかじめ暖炉脇の階段のところまで避難している
てめー!この!ちびっこ!!なにしやがんだ!!
前のめりで千里に挑みかかる猛から逃げるように、千里、階段を半分上りながら
猛、ご飯、どうするー?
とたずねる
むかつくやろーだな!食うに決まってんだろ!!
あたしは「やろー」じゃありません。支度してくるから、手、洗って待っててねー
千里、リビングの猛に手を振って、さっさとキッチンに駆けて行く
あんのやろー
だから千里さんは「やろー」じゃないってば
明の冷静なツッコミに、智、腹を抱えて大爆笑
っとに、むかつくやろーどもだ
千里を捕獲し損ねた猛、ドカドカと足を踏み鳴らし、智と明の頭を連打してリビングを出て行こうとする
いってーな!
暴力反対!
うるせー!
リビングの階段の手すりを掴んだところで猛が振り返る
おい、あいつらは?
風さんはデート、翔さんは残業、優さんはドラマの撮影で「てっぺん過ぎる」って
頭をさすりながら律儀に明が答える
ほー
自分でたずねておきながら、気のない返事をする猛
猛も遅かったじゃねーか
まーな、ちょいと野暮用があってよ
高級カツラの件は緘口令が敷かれているのでごまかす猛
なんだよ野暮用って
怪訝な表情の智に
猛、階段に片足かけると、ふっと笑って、
大人には大人の事情があんだよ
とキメキメの顔で言う
はあ??
満足げな猛とは対照的に、あまりのばかばかしさにあきれ返る智
「ま、そういうこった」と踵を返す猛
おい、飯、食うんじゃねーのかよ
手ぇ、洗ってくんだよ
と、猛、階段を一段越しでリビングを出て行く


素直じゃねーな
こめかみをかく智
どこが大人!?全然子供じゃん
普段、表情少ない明も呆れ顔


結局、千里の言うことを聞いてる猛の後姿に、顔を見合わせる智と明
また、猛に張り飛ばされるといやだから、今度は2人でニヤニヤ笑い