フジテレビ火曜9時ドラマ『アタシんちの男子』を楽しみましょう!!
ドラマは感動のうちに幕を閉じましたが、まだまだ『アタ男』熱は冷めません。
終了したドラマなのでネタバレ含みます。ご承知おきください
『アタシんちの男子』をこれから見る方、ストーリー、次回予告、登場人物をお探しの方は、
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『続きシリーズ』『その後シリーズ』など、お話を読まれる方は、
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アタシんちの男子の針を進めたら…

昨日の続きです
なんか最近ふざけすぎですかね(笑)
食べ物の話が多いのは何で?っておもうけど、多分、『母親10か条』があるからですよね
家って、「食事する場所」「喋る場所」「くつろぐ場所」「元気になれる場所」って、いうように、いろんなパワーを回復できる場所であるといいなあと、思いますよね



■疲労回復のお薬



猛が言うとおり、満腹になると些細な問題は気にならなくなるって効果のせいか、
猛も風もそれぞれ自室に引き上げ、最終的には千里と2人でゆっくり話ができたせいか、
キッチンで、千里と並んで洗い物をする頃には、翔の気分はだいぶ回復してきていた


翔、千里がすすいで水切り籠に入れたグラスを、ふきんで持って、指跡を残さないように慎重に拭いて、トレイに伏せている
翔の手さばきを、感心して見る千里
ピカピカだね
グラスがきれいだと、飲み物が旨いからな
そんなに違う?
絶対違うよ
そうなんだ
ま、職業病ってやつ?…あ、元の、な
翔、照明にかざしてグラスのくもりをチェック。「見習い時代に、散々やらされたよー」と、グラス越しに千里の顔を覗く
千里、グラスの曲面でぐにゃんとゆがんだ翔の顔を見て、そのしぐさに思わず笑ってしまう


お皿をすすぎながら、千里、翔に尋ねる
今のお仕事は、忙しいの?
なんで?
いや、なんか、さっき帰ってきたとき、元気ないなーって、思ったからさ
んー、忙しさでいったら、訪問販売とホストの掛け持ちしてた時のほうがひどかったよ。
翔、数枚の平皿を手に取り、器用に一枚ずつ後に送りながら、布巾で拭いている
でも、訪問販売は、売上って形で成果が出るし、ホストもさー、比較的気持ちに区切りがつけやすい仕事だったんだ。
何より、人相手の仕事って、目の前に対戦相手がいるわけじゃん?
対戦相手って、お客さんでしょ?
まあ、そうだけど、俺にとっては勝負なわけだよ。
と、翔、作業の手を一旦止めて、千里に笑いかける
たとえば、ホストだったら、一人一人のお客さんに、持ち時間いっぱい楽しんでもらって、満足してもらえば俺の勝ち、ご機嫌そこねりゃ俺の負け、みたいにさ。
そういうのを積み重ねて一日が終わる感じだったりしたんだよねー。
だから、気に入らない客がいたり、うまく行かない日があっても、次の客とか、次の日とかには、気持ちも切り替えていけたんだ
うん
すすぎ終わって、蛇口を閉める千里。
シンクにもたれかかって、翔の作業を見ながら話を聞く
今の部署は、おもちゃ博っていう大きな目標に向って、みんなでいっこずつ、ブロック積み上げてるみたな…。下手すると、そのブロック自体も最初から作り上げているような…。すごく、長ーいスパンの仕事なんだよ
翔が、拭き上げた皿を千里に差し出す
受け取った千里、お皿を戻しに食器棚のほうに移動
食器棚といっても、そこはトリックハート城の調度品。木目の美しい無垢材に、きれいにカットが施されたガラスが嵌め込まれている、アンティークな雰囲気のキャビネット
翔、次は鍋焼きに使った一人鍋を手にとって、手を滑らさないように慎重に拭きながら、食器棚の千里のほうに体を向けて話を続ける
たださー
うん
食器棚に皿を収めながら、千里も背中で話を聞いている
ゴールが遠すぎるから、毎日毎日、「今日もやったー!」って感じにならなくて、気持ちが跳ねないってのが、難点なんだよなー
と、ちょっとだけため息をつく翔
千里、手を止めて翔を振り向き見る
翔、千里と目が合ってしまい苦笑い
あー…、これは、どーする?
照れ隠しに辺りをキョロキョロ見回して、土鍋をどこにしまったらいいか探している振りをしてごまかす翔
あ、ここにしまうんだよ
と、足元のルーバー調の扉を開ける千里


千里、自分にはちょっと想像がつかない世界の話を聞いて、「ふぅん」と小さくうなずいてみる
翔、土鍋を重ねて、千里のいる食器棚の前に来ると、
ま、俺なんかペーペーだから、仕方ないんだけどねー
と、さっきのため息を取り消すみたいに、明るい口調で
おもちゃ博って、メーカーとバイヤーだけでなく、メーカーと普通のお客さんが直接出会える、数少ない、大事なイベントなんだ
だから、最後まで付き合ったら、きっとものすごい感動するんだろうなって予感はしてるんだよ
と、千里に笑顔を向ける
翔の表情から、ネガティブな印象は受けないから、大丈夫なのかなと、千里、少し安心する
翔、しゃがみこんで鍋を戸棚に納め、「完了!」と閉じた扉をポンと叩く


片付け終わっても、そのままキッチンで喋っている2人
千里は、キッチンスツールに腰掛け、翔は、食器棚にもたれかかり


でも、自分がやってる仕事が、大事なんだってわかって働けるのって、いいよね
そうかもな
うん
そう考えると、時田の無茶苦茶な研修も、役に立ってるのかもしれねーな
どんなことしたの?
千里の顔を見て、「たいしたことはしてねーよ」と、翔、苦笑いで首をひねる
見るのもやなくらい資料室に閉じ込められた後、メールの仕事をさせられたな。この歳になって、ガチの新人研修だよ
へえ、そんなこともやってたんだ
ガキの使いみたいなことさせやがってと思ったけど、結果的に、今、動いている会社の組織と社員の配置はバッチリ頭に入ったなー。地方の工場や、技師さんたちにも会えたしね。
「…ああ、あと、顔が売れた」と、翔、自分の頬を指で叩く
なにそれ?
翔のしぐさに、千里が首を傾げる
先代社長の後継者育成プログラムから逃げ出した3番目の養子が、現社長に続いてミラクルに入ってきたってことで、みんな興味津々だったみたい。
メールであちこち歩いたら、あっという間に名前を覚えてもらえたよ。おかげで、今の職場にもすんなり馴染めた
それが、時田さんの作戦なわけだね
「んー?」と唸って、首をひねると
いやー、それは、俺が、いい男だからじゃないのかなー?
翔、にっと笑ってウインクをする
千里、その表情に思わず笑ってしまう
時田の思い通りってのも腹が立つから、そういうことにしといてよ
はいはい
文書管理の仕事をしてるとさ、紙やデータを扱うだけなんだけど、ほんとに多くの人が、ひとつの仕事に関わって、物事が動いていくんだってことがよくわかるんだ
たくさんの人が商品を考えて、作って、何度も何度もテストをして、どんな風に手にしてほしいか、どうやって伝えるかって考えて…
それを、一番会社が伝えたい形で伝えられるのが、おもちゃ博だと思うんだ。
そこには、そんな思いを持った会社が、日本全国から集まるんだ
もちろん太郎の親父さんの会社も来る
そこで、ミラクルの存在感を示すんだから、顔には出さないけど、みんな、すっごい一生懸命やってるよ
「なんか、野菜作るのに似てるかも」と、千里がぽつりとつぶやく
ん?
義男さんに教えてもらって驚いたんだけど、野菜を作るのにはね、長ーい道のりと栽培工程があるの。
千里、長ーいと言いながら、翔に両手を思いっきり広げてみせる
そして、工程を思い出し、指を折りながら、順番に上げていく
道具を選んで、作物に合った土を作って、種を蒔いて、苗を選んで、肥料を上げて、害虫を退治して、病気から守って、マルチや寒冷紗をしたくして、水を上げて、土を寄せて、雑草をとって、間引きをして、支柱を立てて、ネットをかけて、
これを果菜、葉菜、根菜、いろんな野菜にあわせてするの
指を折って数えていた千里だったが、工程数は両手の指では足りないくらい
自分の両手をしばらく見て、翔の顔を見る
一個だけ見たら、何のための仕事かわかんないこともあるし、こんな回りくどいこと無駄じゃないのかなってこともあるんだけど、やっぱり、大事なことだったり、欠かしてはいけない作業だったりするの
翔、頷く
なるほどな、なんか作り出すってとこでは、おもちゃも、野菜も同じようなところがあるのかもな
うん
千里、うれしそうに笑う


翔の仕事のことを、自分のことに引き寄せられたせいか、千里、もう一度、さっきの翔の言葉をちょっと考えてみる
大事な仕事をしているってことはわかっていても、日々の仕事の成果は見えにくいって、確かに、すっきりしない感じは残るかもしれないね
そっか、それで、今日、帰ってきたとき、なんだか元気ないみたいに見えたんだ
千里、独り言のように呟いて頷く
ん?
聞き逃した、というように首を傾げる翔
「なんでもない。」と首を振る千里
そう?
うん
千里、ごまかし笑い


本当は翔にも聞こえていたんだけど、
千里が受け取ったように、仕事で疲れてるってのも確かにある
でも、今日に関しては、うっかり猛にやきもち妬いたのが元気がなかった原因だったんだけど
もっとも、この理由、恥ずかしすぎて、口が裂けても千里には言えやしないから、そのまま翔は聞こえなかった振りをしていた。


ねぇ、翔は机の仕事してるんだよね
外回りと半々かなー。今日は、ずっとプレゼンの資料を整えたりしてた
目とか疲れない?
まーな。確かにきつい時はあるよ
この間、眼精疲労回復の記事、雑誌で読んだの
へえ、
パソコンばっかしている明や智に教えてあげようかと思って、切り抜いといた。翔にもあげるね
あいかわらず、お節介だねー
翔がからかうように笑う
うるさいなー。愛情って言ってよ
千里、ちょっと口を尖らせる
ごめんごめん。ちょーど、そういうの、あるといいなと思ってたんだよー
翔の口調は、フォローしてるみたいなんだけど、なんだか面白がってるみたいな響き
千里と2人で話しているうちに、だいぶ調子が戻ってきた翔、「教えて?」と両手を合わせて、なだめるように千里にお願い
楽しそうに笑う翔に、千里も負けて、「いいよ」とごきげんを直す


千里、とりあえず翔に、自分が座ってたキッチンスツールに座ってもらう
ハイスツールでも余裕で脚が余ってる翔と千里は同じような背丈
こういうところが、目の疲れを和らげるツボなんだって
と、千里、最初に自分のこめかみを両手で押して見せ、次に、右手を伸ばして翔のこめかみあたりを探って指先で押さえる
翔、千里が押さえている反対側を自分の指先出で押さえてみる
目尻と眉尻から髪の生え際の間に存在する窪み、ここが「太陽」っていうツボなんだって
へえ
翔、両手で探ってみる
ツボの名前は忘れちゃったんだけど、ほかにはね、こういうところも・・・。
と、千里、鼻と目頭の間の窪みや、眉毛の中央部分もおさえてみせる
翔もその動きを真似する
なんか、普通に目が疲れた時に押さえるところだよな
そうなの。人間って、上手くできてるなーっと、びっくりしちゃった
ほんとだな
今度、ちゃんとの切り抜き、コピーとってあげるね
さんきゅ
強く抑えないのがポイントなんだってー
千里が解説しながら翔のこめかみを指圧みたいに押す
え、じゃあ、千里のバカ力で押さえたらダメじゃん
翔、自分の額の両端押さえてた千里の手をぱっとつかむ
バカ力って、なによ!
千里、翔の手を解いて肩口を押す
翔、大げさにスツールから落ちるようなしぐさをして大笑い


負けっぱなしが悔しい千里、ちょっと思いついた作戦実行
あー、目のストレッチっていうのもあったよ。
と、大きな声で、思い出したように言う


「やってみてよ」と翔の両腕をとって促す
翔の正面に立って、コホンと咳払いする千里
ハーイ先生
と、ふざけて右手を上げる翔
こうやって、目を、上下左右に動かして見るの
と、千里が「上、下、右、左」と大きな瞳を動かして見せる
翔、スツールに座りなおして、千里の掛け声どおり、ゆっくり眼球を動かしてまねをする
上…、下…、右…、左…、上…、下…、右…、左…
次にね、ぎゅーっと目をつむって、ぱっと開くのを、繰り返すの
千里、擬音をつけながらお手本を見せる
今度は一緒にね、と千里、翔の顔を見る
「ぎゅーっ」と言いながら、目を閉じてる時の千里の顔がかわいすぎて、翔、一緒にストレッチしないで眺めていると、「ぱっ」と目を上げた千里に見つかってしまった
「ほら、翔もやってみてよー」と、千里、翔に催促
仕方ないので、千里の掛け声に合わせて、何度も目を瞑ったり開いたりしてみる翔
なんだか目の辺りがちょっと温かくなってきた気がする
でしょ?
翔に効果があったことがわかり、千里、うれしそう。
最後にね、ぎゅーっと瞑ったら、「あー」って声を出してみて
なんだそれ。目と関係ないじゃん
いいから、いいから
翔、訝りながらも、目を瞑って「あー」と低く発音する
ちょっと長いな、と思った時、翔の口の中に甘くてほろ苦い味覚が広がる
びっくりして口を押さえる翔
疲労には、やっぱり甘いものがいいと思うよー
千里、いたずら成功に会心の笑み
甘党の翔が目を白黒させるのを想像して、翔の表情の変化をわくわくと見つめる
ところが


うまい
と、翔、普通にチョコレートを味わっている
確か、さっき、甘党じゃないって、言ったよね!?
びっくりして確認する千里
甘党じゃないよ。甘いものなくても、食わなくても平気。あえて自分で買おうとも思わない
だよね!?
でも、甘いもの嫌いとは、言ってないよ。
えー!?
残念でした。大変おいしくいただきました
翔、ごちそうさまの合掌して、「さんきゅ。元気出たよ。」とにっこり笑う
チョコレートを食べると、エンドルフィンが出るから、疲労回復するっての、理にかなってるんだよ
エンドルフィン?
聞きなれない言葉に、千里の眉間に皺が寄る
ま、カンタンに言えば、自分の頭の中にある、人間を幸せにする薬みたいなもんだ。チョコレートには、それを引き出す作用がある。
あたしが翔をびっくりさせるはずなのに、これじゃあべこべじゃん
難しい顔をしている千里に、
ま、バレンタインにチョコもらう時にでも、ゆっくり続きの話をしてあげるよ
うん…。って、え?
楽しみにしてるね
翔なんか、毎年たくさんもらえるでしょ?
今年はホストじゃないからね
あ、そうか
愛情こもったやつを、お願いしますねー
プレッシャー、かかるなー
あ、俺、一個だけ食べたら、あとは千里にあげるから、自分が食べたいの、選んでいいよ
なにそれ
首を傾げる千里に、翔、まず自分を指差し
甘党じゃないから、たくさんいらないけど、千里からチョコ貰いたい俺とー
次に千里を指差し、
甘いものには目がない千里の、利害関係が一致してるわけじゃん
と、かわりばんこにお互いを指差す
じゃあ、自分のために買うみたいなことになってない?
現実的でしょ?
現実的って言うかさー
翔、千里の呆れ顔に思わず笑ってしまう
まー、それはそれでいいけどねー
いたずらしかけたのに失敗しちゃって悔しい千里、不満そうに唇尖らせる
俺を驚かそうなんて、10年早いって感じ?
翔、楽しそうにニヤニヤ笑い
ひどーい
それに、驚かすなら、このくらいしないと
ふくれてる千里を引き寄せて、翔、ちゅっ、と軽いキスをする
!!ちょっと!!
形勢逆転、突然の展開に、千里、大混乱
うちに元気の元がいるって、すごくいいよな


翔、反撃試みる千里を封じ込めてごきげんで抱きつぶす
う゛〜
と、悔しかったり、恥ずかしかったりでうめき声を上げてる千里なんかお構いなし


やきもち妬いて元気なかったはずの翔、千里に甘やかされて、完全復活したみたい