フジテレビ火曜9時ドラマ『アタシんちの男子』を楽しみましょう!!
ドラマは感動のうちに幕を閉じましたが、まだまだ『アタ男』熱は冷めません。
終了したドラマなのでネタバレ含みます。ご承知おきください
『アタシんちの男子』をこれから見る方、ストーリー、次回予告、登場人物をお探しの方は、
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『続きシリーズ』『その後シリーズ』など、お話を読まれる方は、
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『ジャンヌ・ダルク』

先週の土曜日に見に行ってきました
ちょっと無理やりのスケジュールだったので、ダウンしてしまいましたw

レビューというより感想です
核心部分のネタバレはしてませんが、ちょっとはあります
今から観劇予定の方は気をつけてください
ついでに、長ーいです
それでもよろしい方はどうぞ










真希ちゃんの主演舞台がを知った時、実は『ジャンヌ・ダルク』と聞いて「そっかー・・・」と思ったんです
その理由は2つあって、「神の声」を聞いたという歴史上のスーパーヒロイン・ジャンヌにこれまでいまいち愛着が持てなかったっていうのが一つ
「男装で戦う少女」「断髪」って所も瑞稀が浮かんでしまい、なんか安直?と言う印象を受けたのがもうひとつの理由です
その後、脚本が中島一樹さん、演出が白井晃さんということを聞いて「お?」と、興味を惹かれました
白井さんはここ数年好んで見ているお芝居に、よく俳優や演出で参加している方だし、新感線座付き作家・中島さんは、いつも楽しくかっこいい活劇エンターテイメントを見せてくれる方
この顔合わせはちょっと楽しいかもとテンション上がりました
繊細だけど熱い演出をする白井さんは真希ちゃんにあってると思ったし、全身で表現する活劇は真希ちゃんが生きると思いました
真希ちゃんが役に歩み寄る様子をインタビューで読んだり、白井さんが彼女の「初舞台」を大事に考えていることを知り、心配は期待に変わりました
でも、演劇の方向性の違う中島さんと白井さんが果たしてかみ合うのか、そして、私がジャンヌを好きになれるかどうか、そこは初日のレビューを見るまではちょっとだけ不安でしたね
初日の幕が開き、真希ちゃんが絶賛される中の観劇だったので、当日は安心してお芝居に臨めました



長方形の縦長舞台で緞帳はなし
二つの開口部とワイヤで可動する舞台はシンプルだけどダイナミック
フラットで照明の陰影もきれいに現れ、演劇の楽しみである見立ても十分味わえるいいセットです
あるときは戦場に、あるときは旅路に、宮廷に、牢獄に、法廷に。俳優の体がと観客の想像力が場面を作り上げていきます


衣装は、宮廷の男性の長いマントや女性の優美な模様のドレスの揺れるさまが華麗で、音を鳴らす兵士の甲冑や民衆のくすんだ色の衣装との対比で、ジャンヌが生きた時代を感覚で知ることができました
女性メインキャスト3人の中で唯一男装のジャンヌは、衣装という面からも異質でした


音楽はブルガリアンヴォイスが印象的でした
ジャンヌが聞いた神の声の気高さを、教会の荘厳さを、そして彼女の戦いや悲劇を、素朴な女性のコーラスの響きが力強く表現していました
神の声や群集の熱狂など、舞台上に姿かたちは見えないものたちを感じさせる良い音楽で、CD買おうかと迷いました
帰りの電車の時間がなかったので、物販に立ち寄れなかったw。見たら買ってたと思います


甲冑の兵士が足を踏み鳴らし、旗を振り、鉄の剣を打ち合わせる。これも音響として大きな機能を果たしていました
衣装、小道具、エキストラの人数を総合しての効果なんですが、人間の体が立てる音は、リアルな効果音となり、生身の体が駆け抜ける空気の動きも観客を戦いの真ん中に連れて行ったと思います
人の体が発散するパワーは、一番人に影響を与えると思います
だから劇場は楽しいんですよね
白井さんや串田さんの舞台では、生演奏や、出演者がセットを打ち鳴らす効果音が印象的に使われます
良きにつけ悪しきにつけ、生の音は想像以上に人の体に食い込みます
今回のエキストラは100人と聞きました
新感線でもやらない規模の合戦シーン、100人の人間の体が立てる音と風とで、白井さんは意図して劇場をひとまとめにして、ジャンヌの物語に巻き込もうとしていたんだと思います
そして、大勢の人間が綿密にリハーサルを重ねて望む合戦シーンは、「人の意思が集合する」ということをあらわし、戦場でのジャンヌの意味を感覚で私たちにわからせてくれた気がします


真希ちゃん登場から第一声まではちょっと緊張しました
でも、いい声が出ていました
安心しました
大劇場だからマイクを使うんだけど、そこに甘えることなく、ちゃんと鍛えたんですね
真希ちゃんの印象は、イメージしていたよりも大きかったです
多分、大きな舞台に合わせた所作のせいもあったと思うし、ジャンヌの力強い意思が体からあふれていたのかもしれませんね


ジャンヌを一番近くで護る傭兵に田山涼成さんと石黒英雄さん
田山さんは弓の名手。かっこよかったですよ。『アタ男』の義男さんがやっぱり真希ちゃんを護ってくれるので、なんだか頼もしかったです
石黒さんも、自分の危機をかえりみず、ジャンヌを守るまっすぐさが素敵でした。
豪快なラ・イール役の春海四方さんや強い闘志を持つアランソン公を演じた塩谷瞬さんも含め、ジャンヌに心を開く過程、快進撃から苦戦へと戦況の変化を表しながらも、ジャンヌに希望を見出すフランス軍の道のりを見せてくれました
それは、多くの兵士たちがジャンヌを見ている視線だったんですけど、ラ・イールのように最初からジャンヌを好ましく思っていた兵もいたし、アランソンのように、一緒に戦っていく中で心を開いていった人もいたんですよね


敵方、イングランド軍の将軍タルボットを演じた上杉祥三さん、体が切れてかっこよかったです☆
実際にジャンヌ軍と戦った彼と、山口馬木也さん演じるベッドフォード公、決して出番は多くなかったけどイングランドの権力者たちの物言いが、ジャンヌが処刑されることの理不尽に説得力を持たせたと思います
コーション司教の六平直政さん、憎たらしいほど奸智に長けてたけど、神学者を追い詰めるほど、ジャンヌの言葉が真実だということを浮き彫りにさせました。その憎たらしくやりきっちゃうところがかっこよかったです


シャルル7世を演じた伊藤英明さん、爽快に駆け回り、声を張るという役ではなく、鬱屈し、迷ったり、疑心暗鬼になったりする場面が多かったので、大変だったんじゃないかと思います
そんな彼の妻を演じた柴本幸さん、大仰に演じる部分はないのに、凛として、美しく、愛情深い姿を表現してて、すごいなあと思いました。
高杉真宙くんは、言葉を発しない象徴的な存在として舞台に現れていました。大事な役だけど、不思議な役なのでつかむのが難しかったんでは?がんばってましたね
やっぱり、浅野温子さんはずば抜けた存在感でした。台詞回しや仕草での表現ももちろん長けてらしゃるんですが、企みや優しさも視線であらわしてるのが、舞台から遠い私の席からでも、ちゃんとわかるのがさすがだなあと思いました
金銭欲と権勢欲が強く、政治を裏で操るラ・トレムイユ卿を演じた西岡徳馬さんも憎たらしかったですね。でも、ジャンヌの影響力をちゃんと把握しているからこそ、彼が謀るってことがわかるので、この場合、憎たらしいほどいいんですよ。すごいですよ。


ある人は希望を見出し、ある人はその純粋なパワーに恐れをなし、いろんな人々がジャンヌに影響されている物語でした


ジャンヌは、戦場で異質な存在でした
ただの田舎娘に神の声が聞こえるってこと自体が疑わしいし、痛い奴だと思われても仕方ないと思うんです
私も、巫女的な直感って、どうも首を傾げてしまうところがあって、物語にちゃんとは入れるか心配だったんですが、まったく問題なかったですね。よかった
ジャンヌも住む土地も含め、フランスの民が苦しんでいるという現実があるから、「フランスを救え」というジャンヌの直感に結びついて、「王太子の下に行き、オルレアンを開放せよ」という神の声という形をとったんだと思うんですよね。
ジャンヌは、ひたむきに彼女が信じることを伝え、行動するんです
彼女のひたむきさに撃たれ、行動を共にするものが現れ、彼女の起こす奇跡としか呼びようのない出来事を目の当たりにし、懐疑的な視線を送っていたものも、彼女を受け入れるようになります
でも、戦いに身を置くのは彼女が望むことじゃなくて、神の声を実現するために先頭に立って旗を振ったんです。
奇跡を起こしたいと思っていたというよりも、正しいことと信じているから、甲冑をまとい、軍と行動をともにできんですね。
彼女の聞いた声は、フランスの民衆や軍が聞きたかった言葉だったから、みなの気持ちがひとつになったんだと思います
これまでもそういう思いはあったと思うけど、そこに、ジャンヌという象徴が現れたことでみんなの気持ちがひとつになったんだと思います
彼女の姿は、護るべき自分の妻や子供を仮託するものだったのかも知れませんね


自分のブログだから勝手なことを書いてしまいますが、ジャンヌの求心力は、なんだか『花君』の瑞稀を思い出しました
髪を切るシーンや男装っていうとこもですが、「変な奴なんだけど、なんだか応援したくなる」ってところが瑞稀的だなあと思いました
真希ちゃんは、役が降りてくる「巫女的女優」ではなく、役に向かい合って理解してからその役を生きていく女優さんだと思います
ジャンヌの中の「神の声を聞き、フランス軍を勝利に導く」という特別な部分を拾い上げて役作りをするよりも、ジャンヌの中にある「17歳の女の子が、信じるもののために、怖いけども頑張って戦う」という普通のことを、自分と共通することを拾い上げていったんじゃないかなあと思います
ジャンヌが「選ばれた者」だから神の声を聞くことができたのではなく、「なぜだかわからないけど」普通の田舎娘の私に神の声が聞こえてしまったので、大切な神の声を懸命に伝えようとしているんだってことが分かり、ジャンヌに感情移入できたんです
だから、超人的なジャンヌではなく、迷い、悩む人間的なジャンヌになって、彼女が頑張るなら応援したいと思える存在になったんじゃないかと
それはそのまま、『ジャンヌ・ダルク』の劇中だけでなく、お芝居を作る現場でも起きていたんじゃないかなあと思います




今回、レビューどうしようかなあと迷ったのは、アキノは、第1幕の中盤から結構泣いちゃってたんですよね(泣きっぱなしではないですよ)
がんばってる真希ちゃんの姿に感動してるのか、真希ちゃんの演技がすばらしいのか、ちょっと判別不能の状態でした。中年になって、どうも涙もろくなってきてるもんだからねー



ジャンヌ率いる軍の快進撃は、劇中の意外なほど早い段階で終わります
ひとつの目的を達成した後、ジャンヌには神の声が聞こえなくなってしまいます
「神の声を聞いた者=ジャンヌ」とともに戦う仲間が倒れ、今、自分がしている戦いが正しいのか迷い、神に問いかけますが、神の声は聞こえません
実は、戦っているジャンヌよりも、苦悩するジャンヌのほうが長いんじゃないかと思います
活劇部分の迫力とと人としてのジャンヌの人間的な部分がわかる繊細さの両方があるのが、この舞台のいいところだと思います
悩みぬくジャンヌの姿に観客である私もなんだか辛くなってしまいました
彼女の正直さは、イングランド軍の権力者や聖職者までも揺さぶります。
彼らが人としてジャンヌに打たれながらも、立場の上でジャンヌを裁かなければならないのがわかると、ジャンヌの悲劇性もですが、彼女の尊い心が寄り清らかなものに映る気がします
ジャンヌと彼女の周辺人物ののキャラ造形をわかりやすく無理のないものにした脚本と演出あってこそですよね
もちろん、実現しちゃう俳優さんたちも見事です☆


「すごい」とかばっかりかいてますが、自分の語彙のなさが情けないですw
観劇後、一番印象的だったのは、
堀北真希ってこんなにすごかったんだね」って感想に対して
「そうでしょう?」とうれしくなったことですね
舞台の真希ちゃんはほんとにかっこよかった
でも、その片鱗はアタ男や今までのお仕事でも感じられるものだったんです
真希ちゃんをまた一層好きになる作品が、ひとつ増えたことが何よりもうれしかったです
いつでもひたむきにがんばっている真希ちゃん
彼女のひとつの現場を目撃できたこと、それがこの舞台の収穫でしたね


まだまだ公演が続きますが、怪我なく最後まで走り抜けて欲しいですね
公演の大・大・大成功をお祈りしています☆