フジテレビ火曜9時ドラマ『アタシんちの男子』を楽しみましょう!!
ドラマは感動のうちに幕を閉じましたが、まだまだ『アタ男』熱は冷めません。
終了したドラマなのでネタバレ含みます。ご承知おきください
『アタシんちの男子』をこれから見る方、ストーリー、次回予告、登場人物をお探しの方は、
「はじめに」「まとめ」のカテゴリーからどうぞ
『続きシリーズ』『その後シリーズ』など、お話を読まれる方は、
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アタシんちの男子のその後を考えよう

ちょこっと話が進みます
智のクラスメート、ご記憶でしょうか?




リビング


明日、午前10時にお伺いいたします。1年3組担任 吉田伊代
千里が昨日送られてきたファックスを読み直している
今日は早めにファックスくれたね、吉田先生。
そうだな、でも、なんだろ。夏休み後半の課題はもうもらってるのに
智、首をひねる。


カウンターのFAXが受信を知らせ、用紙を吐き出す

すぐそばにいた智がファックスを読み上げる
急に体調を崩したので、代理の者が訪問します。吉田伊代
なんだよ、これ
代理??


ピンポーン
結局FAXおせーんじゃねーか
智、舌打
千里、玄関へ迎えに出る


はーい
玄関を駆けると、立っていたのは制服を着た、めがねで細身の男の子とツインテールの女の子
吉田先生の代理できました、1年3組のクラス委員の田中と岡崎です
男の子・田中が千里に自己紹介
あ、智の?
はい、はじめまして。今日は吉田先生の代理で
繰り返す田中を制して、千里、にっこり
上がってください
いえ、今日はこれを大蔵くんに渡すだけ…
暑い中、ごくろうさま。冷たいものでも飲んでって
いえ、玄関で大蔵くんに会うだけでいいんです
まあまあ
千里、二人の腕をつかんで家の中に引っ張り込む
あの・・・
戸惑う田中だか、千里は聞いちゃいない
二人の背中を押してリビングに促す
日本の住宅のスケールを超えた内装に、田中と葵、目を白黒
豪邸訪問…
ケタが違うよ
井上さーん。アイスティー、入れてもらえるー?
額の前に差し掛かったとき、千里、井上さんに声をかける
はい
いつものようにローテンションのお返事で井上さんが額から出てくる。
わ。
なに?
井上さん、驚く二人を一瞥
そのまま廊下を進み、リビングのフェイクの扉の前で緊張の面持ちで立つ田中と葵。二人の背後で、こうもり叩いて扉を開ける千里。
キキキ、というコウモリの声とともに、何もない壁が観音開き
きゃー。トリッキー!!
え?
からくり満載な自宅に住んでるのね、大蔵くん
ピントのずれたことを言う葵を田中が睨む
すると千里が振り返りニコニコと笑いかける
よく分かったね、ここ、トリックハート城って言うの。またの名をからくり城
千里の人懐っこい笑顔に田中と葵、ちょっと見惚れてしまう。
おねえさん、かわいいね
うん
思わずうなずいてしまい、あわてて口元を隠す田中
智ー!お客さまー
千里が田中と葵を招き入れる
智、目をぱちくり
俺?
クラス委員の、えーと、田中くんと岡崎さんが来てくれたよー
智、ぶんぶんと手を顔の前で左右に振る
え?
千里、田中を振り返る
田中もぶんぶんと手を振る
え?
両者の顔を見比べて千里
知り合いじゃないの?
知り合いも何も、俺、一日も高校行ったことないし
俺も、4月から同じクラスですけど、会ったことないっす
初対面なの?
三者、うんうんとうなずく
あたしてっきりあったことあると思ってた
ねーよ。お前、俺がひきこもりって知ってるだろ!
そうだったね
千里苦笑い
ま、せっかくだから、お互いに自己紹介しよーか
何がせっかくだよ
わざわざ来てくれてるのよ
千里、智の背中をポンとたたく


千里、こほんと咳払い
ではでは。ここにいるのが智。
・・・
智、ほら、ご挨拶は?
・・・はじめ、まして・・・
で、こちらがクラス委員の、えーと
田中元です。はじめまして
ハジメちゃんが初めましてって
横で噴出す葵
田中、葵を小声でたしなめる
えと、彼女もクラス委員のー?
千里名前がすぐに出てこない
岡崎葵です
ぺこり、と頭を下げる
顔を上げた葵を見て、千里「あ」と気づく。
続いて葵も「あ!」と思い出す
ネカフェの!
二人同時に思い出す
智も気がついて無言
田中、頭抱える
先日は、すみませんでした!!
葵、立ち上がって腰を90度に曲げて深く頭を下げる
隣の田中も立ち上がり「友達として、謝ります」と葵と一緒に頭を下げる
ちょっと、頭を上げて
たまらず千里が声をかけるが
すみませんでした!
テーブルに頭を擦り付けんばかりの二人


先に田中が頭を上げて
先日、岡崎が大蔵くんにひどいことをしてしまい、謝りたいと吉田先生に相談したんです。そしたら、先生が機会を作ってくれて
そうだったんだ
吉田の急な予定変更が腑に落ちた千里と智
ごめんなさい。大蔵くんのことも考えずに、あんなことして
葵、下を向いたまま言葉を搾り出す


あ、あのさー
智、言いにくそうに頭をかきながら、
俺、あんたのこと、怒ってねーし
は?
智、そっぽを向いて
今日の、今、自己紹介するまで、俺、あんたのことはまったく知らなかったわけだし
葵、意味がわからないといった視線で智を見る
あの時点で、俺、あんたのこと、全然知らない人なわけじゃん
葵を指差す
知らない人がやったこと、怒りようがねーじゃん?
智、うまく説明できているかちょっと心配ながらも言葉を続ける
俺のことをよく知らない人が、俺があの動画を見てどう思うかなんて、普通、考えないでしょ?
え?
千里も智の話を聞いてちょっと驚いている
そんな、先生に相談するほど、気にかけてもらったとなると、かえって悪かったっつーかさ。
あまり自分の気持を表現しなれない智だが、言葉を捜してなんとか説明をしようと試みる
俺は、自分が動揺しちゃったこと、誰のせいなんて思ってないし
でも、あれはあたしが軽はずみなことしたから
まあ、かなり変な奴だとは思ったけど・・・。あんときは、いまだにああいうの見ると、動揺しちまう自分にショック受けたのと、結局逃げ帰っちまったことに、腹がたったっつーか
後半はそのときの自分のことを説明するみたいに千里を見て話す智
怒ってないんですか?
緊張が解けた葵の頬が安堵で緩む
怒ってはいないよ、少し不快、くらいかな。ずーずーしいとかなれなれしいとか
コラ、智!
智の毒舌がちょっと出てきたので、千里軽くいさめる
葵の表情が、だんだん普段の「調子のり」の色を含んできたので、田中も釘をさす
岡崎も調子に乗るなよ
委員長さ、何でこいつにくっついてきたんだ?
まあ、成り行きっていうか?
彼女、とか?
違います
そーかー、すげー趣味だと思って。
さとるー!
千里、智を止めようと、足を踏む
いって!
踏まれた足が痛くて思わず飛び跳ねる智
何すんだよ
報復に千里を小突こうと伸ばした智の手を、千里、抜群の反射神経でガード。智の手を捕らえる
お!?
ねえ
智の手をつかんだまま、千里が今気がついたことを話し出す。
離せよ
智、もがくが、井上さんをも負かすパワーの千里、びくともしない。
けっこー、普通に話せるんだね、女の子と
な!!
智、千里の言葉に真っ赤になる。
バカ、お前、何言ってるんだよ。こいつのしゃべり方だかなんだかが、なんか、俺に毒舌を言わせるんだよ
何でだろ?
猛さん並みの、KYだからじゃないですか?
アイスティーのトレイを持った井上さんが通りすがりにつぶやく
あ、なるほど、猛か!種類は違うけど、猛級のKY …
智、妙に納得
井上さん、お客様なんですけどー
苦笑いでとがめる千里を見る井上さん。注目点はもがく高校生男子智を片手で封じ込めている千里のパワー。
負けられない
アイスティー乱暴に配膳して、井上さん、あわただしくサウナに入っていく
バタンと乱暴に閉じられた扉には、「井上さんトレーニング中」のプレートが揺れている

千里、不思議そうな表情で井上さんの去ったほうを見る
田中、智たちのやり取りを聞いて苦笑い
岡崎、すごいですよ。空気読もうとしたことがないですもん
なるほどねー
葵、話の流れとは関係なく、いいこと思いついた!と上機嫌
ねぇ、あだ名、つけっこしません?
こういうとこがねー
なるほどねー
呼び方決めると、その人が特別になって、仲良くなれるんですよ
そうなの?
千里が相槌を打つと、葵、だんだん調子に乗る
たとえばー、田中はタナタナ、大蔵くんはさっとんとかー
なんじゃそら
ださ。センスねえぞ
えー、かわいいよー
千里だけがオッケーサイン
ダサいって言うなら、大蔵くんのセンス、見せてくださいよ
葵の挑戦状
めんどくせーなー
にげるんですか?
にげねーよ。
智、負けず嫌いに点火
じゃあ、田中のフルネームはー・・・?
「岡崎に乗ると大変ですよ」と言いながら、田中元、と自分の名前を紙に書いて智に向ける田中
画数、少な。13画かー。じゃあー。大蔵の蔵よりも画数少ないから「蔵以下」
田中、絶句
岡崎さんのフルネームは?
葵、岡崎葵、と田中が名前をかいた紙に書き足す
じゃ、宮崎あおいを目指してもらうと言うことで、「宮崎」で
智のセンス、変!
千里、びっくりして笑い始める
あおいは不機嫌
あたしは他人の名前じゃん
でも、憶えやすいよ。「クライカ」と「ミヤザキ」
ふーん。大蔵くん、俺の本名は?
えーと???
憶えてないし
田中苦笑い
おねえさん、あだ名作戦成功ですね。ハジメちゃんと大蔵君がなじんでます。
なじんでねーよ
肝心の本名、忘れてるしな


でさ、今日は何しに来たんだよ。あだな付けに来たわけじゃないんだろ?
そうそう。肝心な用件を果たさないと、ね、ハジメちゃん
ハジメちゃん、ゆーな
田中、かばんの中からクリアファイルを出す
一番メインは岡崎が謝りに来ることだったんで、これは急ぎではないそうです
智が受け取って中身をチェック
日誌?
うん。毎日でなくていいから、外出してて気がついたことを送ってくださいって、吉田先生から
ふーん
今回の岡崎の件、吉田先生もちょっと気にしててさ
そうなの?
自分で外出勧めたことが、裏目に出たんじゃないかって
・・・
明るく外出を進めてくれた吉田先生を思い出し、智、ちょっと驚く。
吉田先生が、自分の予想以上に気遣ってくれている。千里も、吉田先生みたいに、自分のせいじゃないかって心配してくれていた。なんだかんだで、見守られてると、智、しみじみ実感する
智、ちょっと面映くてこめかみを掻く
そんな智を千里が優しく見守っている


田中、葵を肘で突っついて、そろそろ引き上げようと合図を送る。
もうちょっといたい葵は唇とがらせて不満顔だが、不承不承うなずく
お騒がせしてすみませんでした。そろそろ
田中が千里に声をかける
きょうはわざわざありがとうね
千里が二人に頭を下げる
智も、ペコ、とへんな角度でお辞儀をする
よかったら、また、遊びにきてね
はい
元気に返事をしたのは葵
田中、苦虫噛み潰す
二人の掛け合いに千里、思わず笑ってしまう


智と千里で玄関まで二人を送る
元気に手を振る葵と、礼儀正しくお辞儀をする田中
二人の姿を見送っている千里の表情が、なんだかうれしそうなのを見て、
「どうしたんだよ」
と智がたずねる
千里が、えへへ、と笑って智を見る
いいなーと思って
あの二人?
うん。
ふーん
あの二人も、吉田先生も、
不思議だよね。と千里が笑う
智、問いかける視線を千里に向ける
智が一回も言ったことがない学校なのに、智のことを考えてくれてる人が、いるんだよね。智が傷ついてるんじゃないかなって、心配してるの
悩み事って、自分だけで解決しようと四苦八苦するのが当たり前だと思ってるけど、時々ちょっとつらくなるよね。
自分を心配してくれる人がいるって、悩んでいる間は忘れがちだけど、先生とか、田中君とか、葵ちゃんとかみたいに、智が思いもよらなかった人が、智のことを気にかけてくれてるの。あたしのことじゃないのに、なんか嬉しくなっちゃって。
世の中すてたもんじゃないって言うかさ。と千里が智を見て微笑む。


ニコニコと城の中に戻って行く千里の後ろ姿に、恥ずかしくて面と向かってはいえない言葉をつぶやく
俺が誰より支えられてるのは、うちのみんなが変わらずにいてくれることなんだよ
外へ出てへこんでも、うちに帰ってくれば、また力をためることが出来るって、今は思えるようになってきたから
智の口元には照れくさそうな微笑が浮かんでいる
千里、智が何かをつぶやいてるのが耳に入って、振り向く
ん?
聞こえなかった、と言うふうに右手を耳に当てて智を見る
なんでもないよ
智、ちょっと小走りに千里に追いつく
並んでリビングに戻りながら、智は隣の千里に思念を送る。いつかは言って見たいけど、まだまだ口には出せない感謝の言葉


千里さんがきっかけをくれたから、俺はがんばれてるんだよ