フジテレビ火曜9時ドラマ『アタシんちの男子』を楽しみましょう!!
ドラマは感動のうちに幕を閉じましたが、まだまだ『アタ男』熱は冷めません。
終了したドラマなのでネタバレ含みます。ご承知おきください
『アタシんちの男子』をこれから見る方、ストーリー、次回予告、登場人物をお探しの方は、
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アタシんちの男子のその後を考えよう

おはようございます
時間があったので、ストック一本上げときます
田辺家の話です
誤字脱字加筆修正、後でやります

それでは行ってきます




田辺家の朝
おはよう
千里が元気に駆け込んでくる
おはよう、千里。
縁側で千里を待ちながら、お茶を飲んでいる義男
最近の義男は、朝作りをして、農協の出荷を済ませてから朝食を摂り、千里が来たら続きの作業を一緒に始めるのが習慣になっている
今日は、規格外の野菜が出たから、直売所に持っていって、帰って来たら秋野菜の種まきだ
はーい。秋蒔き野菜って、何があるの?
たくさんあるぞ。
ブロッコリー・キャベツ・カリフラワー・ニンジン・中国野菜・ダイコン・エンドウ・ゴボウ・ハクサイ・カブ・コマツナ・レタス・ネギ・ニラ・タマネギ・ホウレンソウ・ミブナ・ミズナ・シュンギク…
うわ、そんなに?
そうだよ。シチューや鍋物がおいしい冬のために
あー、いいよねー
千里はことこと煮えるシチューを思い、ほんわか笑顔になる
千里、食べもののこと、考えたろ
義男が千里をからかう
え、義男さんは違うの
ちがうよ。俺は大事な野菜の成長した姿を想像してたんだ
さすがプロ
ふふふ、と義男、照れ笑い


縁側の義男の隣に座る千里
少し体を傾けたとき、ペンダントにしていたオルゴールボールがかすかに鳴った
その音が、千里をちょっと淋しい気持ちにさせる


義男さん。義男さんがいなくなったら、この畑はどうなるの?
千里、前から気になっていたことを義男に聞く
うーん、誰か、ちゃんと畑をしてくれる人に引き継いでもらいたいな。
折角、いい土にしたんだし、アパートなんかになってしまうのは、悲しいな
そうだね。あたしにとっても、ここは大事な場所だもん
千里、田辺家の庭と、その向こうに広がる畑を眺める


義男さんちは、いつもあたしを懐かしい思いで迎えてくれる
毎日、ここに通うようにうなって、ますますその感覚が強くなった。


子供の頃、お母さんと遊びに来た場所
親戚をたらいまわしにされていたときから、ホームレスになって逃亡生活を送っている間中、唯一、ほっとできる場所だった義男さんの家
心配してくれて、叱ってくれて、褒めてくれて、いつでも笑顔で迎えてくれた義男さん
かげながら、いつもあたしと親父を気遣ってくれていたのも義男さんだった


そして、義男さんは、新造さんとお母さんの思い出を話してくれる、唯一の人
ここは、新造さんとお母さんが出会った場所
もういない二人に、触っていられるような場所
二人の思い出を聞くことは、悲しかったり淋しかったりもするけれど、知らなければよかったと思ったことは一度もない。
でも、新造さんとお母さんが一緒にいたのはずっと昔で、あたしが知ることができる二人の思い出もほんのわずか。


この間、翔にオルゴールボールを貰ったとき、耳を澄まさなければ聞こえないその優しい響きが、すごく懐かしく、なんだかほっとした。
気に入って、何度も何度も聞いているうちに、その響きは、千里にひとつのイメージをもたらしてくれた
オルゴールボールを揺らしながらその音を聞いていると、新造さんとお母さんの淋しい思い出も、あたしの心の中を、長い時間をかけて転がり続けるうちに、いつしか悲しみの角が取れ、丸くなり、研磨され、優しい光を放つようになっていくんじゃないかって思えてくる
そのほんのわずかの思い出から出来上がったいくつかの球体は、あたしの中にとどまって、いつか、思いもよらなかいときに、あたしの中でそっと動いてぶつかりあい、きれいなきれいな音を立て、あたしを微笑ませてくれるじゃないかって。
オルゴールボールは、もともとは、ドルイドベルという、ケルトの修行僧が瞑想に使う鈴だったって。それが今のオルゴールの発展したんだって翔が教えてくれたことがあった。――――それで、めずらしく、へんなことを考えたのかな?って、そのときは思った


淋しい涙にくれた思いは、いつしか懐かしい温かさに変わる


新造さんのことはショックだったけど、お母さんのこともショックだったけど、いつもここには、手を添えてくれる義男さんがいる
あたしが人間を嫌わないで済んだのは、どんなときでも、うるさいくらいにあたしや親父の世話を焼いてくれた、義男さんがいてくれたからからなんだろうなって、千里は思う
あたしに家族=大蔵家ができるまで、ここはあたしの大切な避難所だった


今日もなんだかその音に、もの思いに誘われてしまった千里


千里、どうした?
義男さんが長いこと黙っている千里を心配して声をかける
あ、ごめんごめん
千里、恥ずかしそうに頭をかく
野菜の袋詰め、しないとね
元気にガッツポーズして、気分をリセット
よし、たのんだぞ
二人で立ち上がって、作業場へ向う


もうそろそろ時期を外したきゅうりとトマト
夏を越してちょっと皮が固めのなす。畝を片付けてしまうので、まとめて収穫してしまったししとう
袋詰め作業しながら、また、おしゃべり


義男さん、うちに、昨日まで、あたしと同じ歳の、優の妹さんがきてたの
優くん、妹さんに会えたのか
義男の反応に驚く千里
あれ、義男さん、七海ちゃんのこと、知ってるの?
知ってるさ。おばあちゃんは、新造が尊敬していた先生だからな
義男、笑顔で頷いている
俺たちは大学で一緒になったんだが、、新造は高校卒業してから、大人になっても先生とずーっと手紙をやり取りしていたんだよ
そうなんだ
俺には、そんなに気の会う先生がいなかったから、うらやましかったな
そういえば、あたしもいないかも
「へー」と、千里、感心したように義男を見る
一度、夏休みにみんなで貧乏旅行したんだが、その途中で先生のところにも立ち寄ったんだよ。海のそばでな、いいところだった。岸田先生がまたびっくりするほどの美人で。あれは若い頃なら女優さんみたいだったんじゃないかって、太郎の親父と話してたもんだよ
義男、顎をさすって思い出し笑い
七海ちゃんもすっごい美人だよ
そうか。うん。そうだろうな
義男の脳裏には、七海のおばあちゃんの顔が浮かんでいるみたい
七海ちゃん、先生になるんだって
そうか
義男、なんだかうれしそう
七海ちゃん、おばあちゃんが大好きだから、おばあちゃんみたいな先生になるんだって
がんばってもらいたいな。きっとなれるよ
七海ちゃんと話していて思ったの
あたしも、自分が何をうれしいと思うかで、仕事を考えてみたらって
千里は何がうれしいんだい
あたしはね、大好きな人が、笑顔になるとうれしいなあって思うの。
大好きな人の笑顔か。それが見たくて、千里はお節介しちゃうんだな
あ、そうか。そうだね
千里、恥ずかしそうに苦笑い
義男がそんな千里を見て、楽しそうに笑う
でも、あたしがお節介なのは、義男さんの影響だと思う
笑われた千里、義男に反撃
俺が?お節介?そんなことないだろ
そうかなー。クソ親父に電話をかけさせたり、ネカフェに寄越したりしたのは、誰だったっけー?
千里、義男からわざとらしく視線を外してニヤニヤ笑い
そんなこと、あったか?おぼえてないな
義男もしらばっくれている
お節介の先輩に質問
千里が先生に手を上げるみたいに挙手
お。どうした後輩
義男、千里を指す
お節介に向いている仕事って、なんでしょうか
そうだなー
千里と義男、一緒に腕組みして考える
肝っ玉母さんくらいしか思いつかないな
義男、まじめな顔で断言
義男さんー。それ、職業じゃないよ
千里、大笑い
そうだな、と義男も薄い頭をかく


ふと、千里の作業の手が止まる
あたしね、義男さんちの畑を手伝うようになってから、ときどき考えてることがあるの
なんだい?
まだ、全然まとまっていないんだけど、
いいじゃないか、話してごらん。
「その代わり、手は休めるなよ」と義男、曲がったきゅうりを印籠のようにビシッと千里に見せ、自分も作業を開始する
千里、あ、と自分の手が止まっていることに気づき、慌てて作業再開
そのしぐさをおかしそうに眺めていた義男
で、なにを考えてたんだい?
と千里に話すよう促す
それはね
千里、5本ずつきゅうりを袋に詰めながら、義男に話し始める