アタシんちの男子のその後を考えよう
いよいよDVD発売！
その後どころじゃなくなってしまいますね
みなさんも、DVDを飽きるまで見たら、またその後読みに来て下さいね☆
智、今日はネカフェの日
ドリンクバーに食器の補充をしている智
昼間っから、客、来るもんだよなー。
卓上にダスターかけて、紅茶やミルクの残量チェックして
よし、と指差し確認
帰る前に、そばの雑誌コーナーの乱れを直して
完璧！
と小さく呟く
あ
智、ふと思い出して、今きれいにしたばかりのマガジンラックから、OL向けのファッション誌を手に取る
目次を確認してページを繰る
あった
開いたページは優の連載記事。第３回・中目黒。見開きの右ページが、記事と写真と、地図。
左ページが一枚写真のグラビア。迷路みたいなアンティーク家具店にいる優の写真
いーじゃん
智、うれしそうな照れ笑い
女性誌ってこともあり、柔らかい表情の、優の写真を選んでいるんだろう。いつものクールな写真や、この前のセクシーな写真より、こっちのほうがいいなと智は思う。
例のごとく、自分の載ってる雑誌を千里さんに押し付けて、恥ずかしそうに優が去って行った後で、この連載の第１回を見た千里さんが「これ、好き」って喜んでた。
優が褒められるのがなんだか悔しくて、そのときは「ふーん」と気のない返事をしたが、気になって後でこっそり雑誌を盗み見たら、やっぱり智も「これ、好き」と思った。
それから、なんとなく楽しみにして、ネカフェでチェックしている。
家ではとても気恥ずかしくて見られないし、優に見てるとも言ってない。
OL雑誌をコンビニや本屋で立ち読みできる度胸もないけど、ネカフェなら、仕事の振りしてチェックできる。
バイトに来ててラッキーだったな
「たぶん、俺が知ってる優に近いってことなんだろーな」と、智なりに分析している
写真を撮っているのは、千里さんの友達・沙織さんのお姉さん。
沙織さんは、時田さんとこの前婚約した。
千里さんが、おせっかい爆弾を投下したおかげで、うまくいったのかどうかは知らないけど。
うちの兄弟も、当然、そのおせっかいな作戦に巻き込まれたけど、「あれはあれで楽しかったな」と智、思い出し笑い
沙織さんのお姉さんであるカメラマンさんには、まだ会ったことないけど、この写真を見ると、優と馬が合ってるんじゃないかなって智は思っている
おねーさん系の雑誌読んでニヤニヤしてるー
ブースにランチを出してきた平次がトレンチで智の頭を叩く
いってーなー！
慣れてきたからって、サボらないでねー
てめーだってクリーニングに入ったブースでアダルトサイト見ようとしてじゃねーか
わーわーわー
平次、智の声を消すように大声で騒ぐ
うるせーんだよ！！
奥のブースからブリトニーが顔を出す
すみません
2人で頭を下げる
キッチンの入口から国土も顔を出して智と平次をにらんでいる
もー、やだなー智くんたらー
平次、智をヘッドロックするみたいに口を押さえる
騒いでたのはてめーだろー
智、抵抗
僕が見てたのはね、大好きなグラビアアイドルの、せくしーショットが乗ってるサイト。アダルトサイトじゃないから！
かわんねーだろ
大違いだよ。・・・それから、千里さんにこの話したら、許さないからね
小声で智を脅しつける平次
てめーの話題なんかでねーよ
智、鉄拳制裁。本日は肘鉄
い゛っ！
腹を抱えてうずくまる平次
二人でまだごちゃごちゃやってるので、国土、おかんむり
１７番のブース開いたから、クリーニング入って！
はい
平次が立候補の挙手
・・・聞こえてたよ
国土、怖い顔
は？
アダルトサイト見るような奴は、トイレ掃除！ブースは、智くん行って！
びしっとそれぞれの行き先を支持
はーい
智、逃げるようにその場を離れる
先輩ー、アダルトサイトじゃありませんよー
平次がいいわけ
問題はそこじゃなくて、サボってるのが問題なの！
智、クリーニングセット持ってさっさと１７番ブースに向う
平次が、国土に言い訳をしている声と、国土がイライラと小言を言う声が背中に聞こえる
社長室
決済書類に目を通している風
隣のデスクでは、時田が社内グループウェアに社長の日程を入力している
作業しながら時田が嬉しそうに含み笑いをしているのに気づいた風
あんまり押さえつけてると、あいつ、会社来なくなっちまうぞー
と書類に目を落としたまま、時田に忠告
何のことです？
時田、めがねを直しながら顔を上げて風を見る
翔のことだよ
風も書類から目を上げる
待ってくださいよ、苛められてるはこっちです。今日だって、秘書室女子全員味方につけて、私のこと、いじめるんですよー
時田、心外、といった表情
それは時田の日ごろからの行い！
風、右手で持ったペンで時田を指す
社長まで
時田ぶつぶつ文句を言っている
もうちょっと、翔の意向とか聞いて研修プラン立てたら？
給料貰って自分の思い通りなんて、甘いこと、考えてないと思いますよ、あの方は
余裕の笑顔の時田に
「ふーん、そう？」と、首をかしげる風
翔さんは、チャラチャラ喋ってますけど、筋金入りの負けず嫌いだと、私は見込んでるんです
書類はいったん脇に置いて、指を組んで時田の話を聞く
何でそう思ったんだ？
時田も、作業の手を止めて風に体を向けて話をする
翔さん、金銭面のご苦労、されてた時期があったじゃないですか
慰謝料や、ゆかりの園の借金のことか？
はい。力くんを引き取った経過もそうです
前の奥さんの、「できるわけない」って言葉で、スイッチ入っちゃったみたいだな
多分、彼女は、「話し合おうよ」「無理しないで」「一人で背負い込まないで」ってサインを出していたんでしょうけど
時田、咲の心理を分析。
ま、意地っ張りではあるよな、あいつは。…平気な顔をしたがるね
風も時田の分析に頷く
それに、翔さん自身は、まったくそんなつもりはないと思いますが、
ん？
翔さんは猛さんと並んで、大蔵家では一二を争う、お人よしですよね
ぶ
風、ふきだす
おかしいですか？
いや、そのとおりだと思ってさ
風、天を仰いで大笑い。
確かに、千里はお節介焼きだけど、お人よしじゃない。
笑いをなんとか収めて、風、自分の見解を時田に話す
千里が人を信じることが出来るのは、信じる度胸があるからだ。裏切られても、そういうもんだと思えるタフさがあるし、良くも悪くも単純だから、切り替えることが出来るのも強みだな
とまず妹を分析。続けて次男と三男と比較する
でも、猛は、人を信じられないって思ってるくせに、かんたんに他人に騙されるし、翔は、目端が利いて世渡り上手そうなんだけど、最終的には情に負けるんだよな。…うちの兄弟は総じてちょっともろいところがあるんだよ。お人よしとは、時田、うまいこといったよ。――――まあ、だから千里とうまくいくんだろうな
時田、ちょっと顔を曇らせ
志村っていう「ゆかりの園」の経営者は、そういう翔さんの性格を良く知ってたんです。お人よしな翔さんに、ダメ押しで「無理はいえない」「お前に頼む筋合いじゃない」って、情と負けず嫌いを刺激する意味合いの言葉も使って。だからあんなことになったんですよ
とため息をつく
ところがさ、あいつもお人よしは、俺たちが考えるよりも、一段上を行ってたらしいよ
風が頬杖をついて時田に微笑む
どういうことです？
逮捕された志村に、翔は、「信じてる」って言ったそうだ
え、まさか
千里が教えてくれた
風、そのときの兄弟の会話を思い出し
ま、結局、俺たちも、あいつのお人よしに負けて、ゆかり園に寄付をすることに決めたんだけどな
にわかには信じられないといった表情の時田だったが、ゆっくりうなずくと、納得したという表情に変わる
千里さんの無茶を翔さんがフォローしていると思ったら、反対だったんですね
概ねは、時田が言うように、千里が無茶をして、翔が後で心配してることのほうが圧倒的に多いと思うけど、普段大人しい分、翔のほうがでっかい爆弾を落すって感じかな
風、兄弟の分析をしながら、機嫌よさそうに、くすくすと笑っている
風の笑顔を見て、大蔵家の関係を羨ましいと思う時田
でも、翔さんのその無茶は、信頼できる方がいるから、できるんじゃないですかね
と風に微笑みかけると、あからさまに風の表情は不機嫌顔に豹変している
それ、千里のこと、言ってんのか？
眉間に皺を寄せ、百匹くらい苦虫噛み潰してそうな風の表情
千里さんだけじゃなくて、ご兄弟全員のことを言ってるんですよー
時田、兄バカ風の誤解をほぐそうと苦笑い
時田、一呼吸置いて椅子を立つと、風に「社長」と改まった調子で話しかける
翔さんは、自分で持ちかけた今回の話、納得するまでやめないと思いますよ
わたしが、何を振ろうが、無理難題吹っかけようが、絶対、何かつかんで帰りますよ。――――あの現実主義者の負けず嫌いが、手ぶらで帰るわけがないですからね。
そこが、わたしがあの人を大好きなところです
わたしは、翔さんのお人よしと負けず嫌いにに付け込んで、しっかりミラクルの柱に、仕上げて差し上げたいと思っています
時田の宣言を聞いて、肩をすくめる風
翔もえらい奴に見込まれたもんだな
わたしもそう思います
風と時田、笑顔で視線を交わす
風は、翔の顔を思い浮かべ、「ご愁傷様」とこっそり手を合わせる
もっとも、翔が時田の思い通りに動くとは、風には到底思えないけど
むしろ、時田が翔に引きずられてしまうんじゃないか
へっくし！！
資料室で大きなくしゃみをする翔
「埃っぽいところはやだねー」と、鼻先をこする
資料室の本棚を物色中
今日は活字はやめとこう。
マンガもあるんだ、あ、テレビアニメの原作コミックスねー。うちでおもちゃを作ってるってことか。
ぶらぶらと奥まで行くと図面の入っている筒がたくさん納まっているラックを発見
退色したラベルを目を細めて判読する翔
お！？
一本筒を取り出して閲覧台まで戻る
ポン、と音を立ててふたを外すと、中から建物の原図が出てくる
長年丸まっていたせいで、癖がついてしまった図面を、その辺の本を重石にして広げてみると
トリックハート城の図面だ
思わず感嘆の息を漏らす
あれ、でも・・・
その広げた平面図をよくよく見ると、遺産の隠し部屋も、恐怖時計の部屋もない
これは、この前、井上さんが言ってた、移築してきたエジンバラのお城の図面だ
・・・ってことは、
翔、腕組みをして考える
親父が設計した、今のトリックハート城の図面もあるんじゃねーか？
翔、楽しそうに笑うと、もう一度資料室の奥に向かう
