フジテレビ火曜9時ドラマ『アタシんちの男子』を楽しみましょう!!
ドラマは感動のうちに幕を閉じましたが、まだまだ『アタ男』熱は冷めません。
終了したドラマなのでネタバレ含みます。ご承知おきください
『アタシんちの男子』をこれから見る方、ストーリー、次回予告、登場人物をお探しの方は、
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アタシんちの男子のその後を考えよう

太郎の告白・その4です
まだ喋ります(笑)

誤字脱字加筆修正あります。
いつもいつもすみません
※これ、後半、大幅変更があるかもしれません。変えたら表示します


太郎の回想

ミラクル翻訳機


縁側に腰掛け、楽しそうに微笑む新造
20年前の田辺家の庭・春


ミラクル翻訳機?
丸い目をして首を傾げる5歳の太郎
これはね、ここのマイクで拾った音を、たちまち気持ちに翻訳してくれるんだよ。昨日、徹夜で作ったんだ
ほんやく??
えーと、よくわかるようにお話してくれるってこと。
ふぅん
今、太郎ちゃんが「翻訳」って言葉がわからなかったろ。そしたら「よくわかるようにお話しすること」って新造さんが言いなおした
うん
これが、「ほんやく」。…まあ、ちょっと違うけど気にしないで
新造、笑ってごまかす
すげー!!
太郎の目が輝く
その表情を見て満足そうな新造。得意気に発明品の解説を始める


たとえばね
新造、太郎を連れて、庭の犬のそばまで行く
新造、翻訳機をかざす
犬、警戒してワンワン吠える
怖くて新造の膝にしがみつく太郎
<<あやしい、あやしい>>
翻訳機が機械音で言葉を鳴らす
うわー!
太郎、機械の声にびっくり。目を丸くする
こっちにも行こう
新造、太郎の手を引いて、今度は庭で穀物を啄ばんでる鶏のそばへ
コ、コ、コ、コ、コ、コ
<<はらぺこ、はらぺこ>>
うわー!!
太郎の反応に、すっかり上機嫌の新造
これはどうかな?
と、今度は車のエンジンをかける
ブロロロロロ
<<ねむたい、ねむたい>>
ねむたい??…どこか調子が悪いのかな?それともサボりたいのかな?
新造、車を見て、大げさに困ったような顔をする
その顔を見て笑う太郎の声
キャハハハハハ
<<たのしい、たのしい>>
わ!
慌てて自分の口を押さえる太郎
新造、太郎を見てニコニコ
新造さん、すごいだろ!?
すごい!
太郎、興奮してぴょんぴょん跳ねる


新造、太郎の頭をなでる
太郎ちゃん、これは、お父さんや義男さんには、内緒にしてくれる?
うん
新造さん、パパなんだよ
ぱぱ?
僕にね、息子がいたんだ。
太郎ちゃんよりも、5つ、おにいちゃん
今ね、一緒に暮らしたいってお願いしてるんだよ。
おにいちゃん?
ここにきたら、一緒に遊んでもらえる
うん
太郎ちゃんは、志保ちゃん、知ってるだろ?
志保ちゃん、好き!
そうか。よかった。新造さん、志保ちゃんと結婚するんだよ
志保ちゃんと?
そう
けっこんって?
太郎ちゃんのパパとママみたいになるんだ
ふぅん
太郎、いまいちわかっていない
新造、釈然としない表情の太郎の頭をくしゃくしゃと撫でる
くすぐったそうに顔をしかめる太郎
撫でながら、新造がつぶやく
新造さん、志保ちゃんにお願いしたんだ
僕の息子の、ママになってくれませんかって
そしたら、志保ちゃん、笑ってうなずいてくれた。
新造の顔を見上げた太郎
新造さん、泣いてるの?
泣いてないよ。これは、すっごく喜んでる顔だ。新造さん、志保ちゃんと出会えて、すっごく、幸せだ
太郎、ほっとした表情で新造の手をとる
太郎の小さい手を握り返す新造
この前ね、新造さんと、志保ちゃんが手をつないでいる夢を見たんだ
新造、太郎の手をとって大きく振る
太郎、その動きが楽しくてニコニコ笑う
その夢の中ではね、新造さんと、志保ちゃんの真ん中に、女の子が1人いたんだ
おんなのこ?
目がおっきくて、すごくかわいい子だった…。
新造、目を細める
多分、僕と志保ちゃんには、娘が授かるって、神様が教えてくれたんだな。

太郎ちゃん、この子のことも、かわいがってあげてね
うん
新造さん、いっぺんに2人のパパになっちゃうんだよ。すごいだろ
すごいね
でも、新米パパだから、いっぺんに2人は大変だよね。新造さんにできるかな?
うーん。わかんない
だからね、お兄ちゃんにも赤ちゃんのお世話を、手伝ってもらおうと思うんだ。いい考えだろ?
うん!
夕方、ママがご飯の仕度で忙しくて、パパもまだ会社か帰ってこない
赤ちゃんがわんわん泣いている
10歳のお兄ちゃんは、赤ちゃんが何で泣いているのか、わからない
そこでこの、ミラクル翻訳機の出番だ
こっちのツマミで、お話できない相手をえらぶ
「動物、虫、鳥、機械…、あった、赤ちゃん!」
そしてこのマイクで赤ちゃんの声を拾う
新造「えーん、えーん」と自分で赤ちゃんの泣きまねをする
<<こわいよ、こわいよ>>
太郎、笑う
怖い?なんか違うけど、…まあいいか
お兄ちゃんは、そのうち、赤ちゃんの泣き声が、機械の答えと違うみたいって思えてくる
自分のほうが、うちの赤ちゃん・ぼくの妹に詳しいなって思えてくる
そうしたら、このノートの登場だ。今度は、お兄ちゃんが、自分で妹の泣き方を研究する
おなかが減ってるのかな?
もしかして、オムツが気持ち悪いのかな?
ママがいなくて、淋しいのかな?
頬擦りするパパのお髭が、痛いのかな?
おにいちゃんが遊んでくれて、うれしいのかな?
きっと、お兄ちゃんが研究した、赤ちゃんの言葉で、ノートはいっぱいになる
そんな風に、お兄ちゃん専用の「赤ちゃん語翻訳辞典」を作ってって欲しいんだ…
太郎、口を尖らせて不満顔
太郎ちゃんには、むずかしかったよね。ごめんごめん
新造、笑って太郎の頭を撫でる
新造さんね、このミラクル翻訳機を作ってみて、これから、どういう風な気持ちで、おもちゃ作りをしていったらいいか、わかった気がするよ
わかったの?
うん。自分の子どもの顔を、思い浮かべたら、きっと、いいおもちゃがいっぱい作れると思う
おもちゃ、いっぱい、いっぱい、つくってね
太郎ちゃんのことも考えて、楽しいおもちゃを作るよ
やったー!!
太郎がうれしそうに笑う
まかせなさーい
太郎の頭を手荒に撫でる新造
喜んで、キャーキャーと歓声を上げる太郎
太郎ちゃん、赤ちゃんのことと、おもちゃのことは、みんなにはナイショだよ
どうして?
太郎ちゃんのお父さんや、義男さんを、びっくりさせたいんだ。
びっくり!?
うん、きっと驚くぞ〜。楽しみだな
うん!!
男と男の約束だ
やくそく!
太郎、元気に小指を差し出す
新造、小指を絡めて指きりげんまんの歌を歌う
太郎、男と男の約束に大満足。早速ミラクル翻訳機で遊ぶ
奇声を発し、予想外の翻訳に目を丸くしたり笑ったり
気に入った?
すっごく!
微笑んで太郎の頭を撫でる新造



太郎、ミラクル翻訳機を懐かしそうに見つめる
これは、風くんと千里ちゃんのために、新造さんが作ったんだよ


この話は、大人になってから義男さんに聞いた話なんだけど、
新造さんは、風君の存在を知って、手元に引き取りたいと、志保さんに相談したんだって
志保さんは承諾してくれた
でも、風くんのお母さんは、風くんとの暮らしのために、資金援助を新造さんにお願いしただけで、風くんと離れるつもりはなかったんだって


志保さんは、親子は一緒に暮らしたほうがいいと、新造さんの前から姿を消した
「自分がいなくなれば、新造と風くんのお母さんが、うまく行くと思ったんじゃないか」って、義男さん、言ってた
志保さんは、悲しみ嘆いて新造さんの前を去ったんじゃなくて、自分の幸せよりも、誰かの幸せを一番に考えてしまう、筋金入りのおせっかいやきだったんだってさ。
多分、そのとき志保さんは、小さな風くんの幸せを、一番に考えてたんじゃないかな
太郎、千里の顔を見て笑う
千里、恥ずかしそうに笑って首をかしげる
風、複雑な表情で黙っている


でも、そのときはまだ、志保さんは、自分が身重なことを知らなかったんだって
志保さんは、自分に子どもができたこと、すごく喜んだ。
筋金入りのおせっかいの志保さんは、誰にも遠慮せずに世話が焼ける相手ができて、今まで見たことがないくらい、いきいきしてたそうだよ


千里、お母さんの元気な笑顔が脳裏に浮かぶ。
お母さんも筋金入りのおせっかいだったんだ


志保さんが去ったことを、自分のせいだと思った新造さんは、志保さんを追えなかった
「それはきっと、資格がないと思ったんだろ。」って義男さんは言ってた
志保さんは気丈だから、無理やり探し出したら、きっと突っぱねて、どっかいってしまう
新造さんは、「運命が、もう一度、自分と志保さんを、めぐり合わせてくれる日がくるのを、待つことにしたんだと思う」って、義男さん、言ってた


それからの新造さんは、夢中になって仕事をしたそうだよ
一緒に暮らすことを夢見た子どもたちのことを思って、子どものためのおもちゃを作ることに一生懸命だったって。
僕は、このことを少しあとになって知った
新造さんが「ナイショだよ」って僕に教えてくれた幸せな家族の姿が、実現してなかったことが、子どもながらにすごくショックだった
その後、僕は、新造さんとした約束どおり、親父や義男さんに、ミラクル翻訳機の話は一度もしていない


千里ちゃんと田辺家で初めて会ったとき、新造さんに娘がいるって知って、本当にびっくりした
予知夢なんか信じちゃいないけど、親子には、そういう不思議なことが起こるんだなあって
その夢を信じて、徹夜で発明品を仕上げてしまった新造さんって、すごいなあって思った
そのくらい印象的な夢だったんだね。
だから、志保さんが亡くなって、自分に娘がいるって知ったとき、新造さんの思いはどんなだっただろうって思ったら、恥ずかしいけど、俺、ちょっと泣いてしまった
そして、今こうして新造さんの部屋に、風さんと千里ちゃんが並んでいる
新造さんに見せてあげたかったなあ


俺の母親は、お前のお母さんの幸せを、壊しちゃったんだな
しかたのないことだったんだよ。そういう運命だったんだから。
でも、あたしたちは今こうして一緒にいる。新造さんが会わせてくれたんだよ
新造さんと、お母さんと、一緒に手はつなげなかったけど、風とは手を繋ぐことができる。こういうのも悪くないって、あたしは思うよ
千里、風の手を取る
あたし、お母さんの人生も、短かったけど、そんなに悪くなかったと思ってるんだ
新造さんとは一緒にいられなかったけど、お母さんは、自分の一生を狂わせてしまうほど、一途に愛してくれた、親父に会えたんだし
まあ、そのバカ親父のおかげで、あたしは、しなくてもいい苦労を、山ほどしょっちゃったけどね
でも、親父の借金で、あたしが絶体絶命になったから、
一生、自分からは、あたしの前に姿を現さないと決めていた、新造さんが助けに来てくれた
新造さんが亡くなっちゃったことも、すごく悲しいけど、自分がいなくなった後のことに知恵を絞ってくれたおかげで、今、あたしはみんなと一緒にここにいる
みんな、みんな、少しずつ悲しい思いをしたけれど、もっと大きな幸せを手に入れられたんじゃないかな
風のお母さんも、きっと風を手放すこと、すごく悲しんでいたと思うよ。でも仕方がなかったんだよ。
養子の事だって、自分のことよりも、風を守りたかったんだと思うよ。
だって、お母さんなんだから
風が傷ついたのは、かわいそうだったよね。
風が家を飛び出したから、新造さんはみんなを養子に迎え入れた
でも、そのおかげで、封にはあんなににぎやかな兄弟が出来て、あたしは大蔵家のみんなに会えたんだからさ
ね、悪くないと思わない?
千里、風を見て笑う
お前は、ほんとに、他人に甘いんだから
風、照れ笑い


千里、太郎の正面に回り、まっすぐに見つめる
太郎も千里にきちんと向かい合う
ありがとう、見つけてくれて
あたしこそ、ありがとう。新造さんの話を聞かせてくれて
2人で笑顔を交し合う
製図版の椅子に座っていた風が立ち上がり、太郎のそばに来る
太郎に頼みがあるんだ
なに?
風、ミラクル翻訳機を太郎に差し出す
太郎の作った、大蔵新造コレクションのファイルに、これを載せてくれないか?
いいの?
太郎、戸惑いながら、ミラクル翻訳機を受け取る
当然だろ、親父の発明品第1号だからな


太郎に笑いかける風の笑顔が、とてもきれいだなと千里は思った