アタシんちの男子の針を進めたら…
風のお見合いにかこつけて、響子さんの話をしたいと思ってます
響子さんのことをちょっと考察(妄想)したことがあるので、それを材料に
今日は出来た分だけ上げます
ちょっとだけですが☆
■風のお見合い
お見合い？
はい
誰の？
もちろん社長のです
元体育会系・濃い顔・大きな体と３拍子揃った暑苦しさを持つ岩本副社長*1が押しの強い笑顔を風に向ける
あー、俺、そういうの、間に合ってますから
風、面倒くさそうに手を振る
そういうお話ではなく、まじめに、考えていただきたい
岩本副社長、風に詰め寄る
風、思わず後ずさり
いいとこのお嬢さんでしょ?
おきれいな方ですよ
俺なんかじゃ悪いって
風、岩本副社長の眼力の影響外へ、なんとか避難
時田、のれんに腕押しの実写版を見るようだと、同情半分、模様見半分
岩本副社長、今度は静かに説得口調で攻めてみることに。
若い頃はさぞかしモテたであろうその顔の、眉間に思慮深げなしわを寄せる
なかなかどうして、映画俳優のような渋さが漂っている
時田、笑いをこらえるのに四苦八苦
社長、よくお考えください。巨大ショッピングモールをもつハートグループのご令嬢との縁談です。町の小さなおもちゃ屋が激減し、親もおもちゃをネットで底値を調べて買うような時代に、子供が自分でおもちゃにふれられる、ショッピングモールのの存在は貴重です。いや、むしろ、百貨店が不振の今、イベントギフトの展開的にもショッピングモールは外せません。悪い話ではありませんよ
今は、姻族とか縁故とか、そんな時代じゃないでしょ
その名の通り風のように手応えない反応に、岩本副社長、ため息
社長、いずれはどなたかとご結婚なさるおつもりではいらっしゃるとは思いますが、そう言ってのらりくらりとかわされてるうちに、ついに先代社長は奥様を持たずに後継者候補を6人も
専務
大人しく横で話を聞いていた時田が口を挟む
岩本副社長、気まずそうに咳払い
風、「ほんとのことだから気にしないでください」と微笑む
はあ、申し訳ない
岩本副社長、一度頭を下げて謝意を表し、あらためて姿勢を正すと風の目をしっかり見て、力強く話しはじめる
とにかくですね、子どものおもちゃを作り続ける「ミラクル」にとって、家族というのはとても大切な一単位です
父親と母親が赤ちゃんに最初におもちゃを与えるところから、私たちの会社はかかわっています
社長にも、そんな幸せを体験していただいければ、また違ったおもちゃへの目がもてると思っておるのです
……
風、どうしたものかと思案顔
社長！
わかったわかった、預ります
風がお見合い写真の入った封筒に手を置く
岩本副社長、不承不承、引き上げることに
それでは、宜しくご検討ください
３０も年下の社長に、折り目正しく頭を下げて、岩本副社長、社長室を退出
風、岩本副社長が消えると、一応、お見合い写真を確認
お、美人
確かに
ちゃっかり時田ものぞきこんでいる
お見合い、なさるんですか
和服の似合うご令嬢の写真から、風に視線を移す時田
しないよ。週明けに岩本副社長に返す。
風、きれいな表紙のお見合い写真を、ぱたりと閉じて封筒にしまう
ああでもしなきゃ、延々一時間、お説教でしょう
デスクの一番上の引き出しに入れながら、風、ため息
まあ、そうかもしれませんね
ああみえて、岩本副社長、会社もおもちゃも愛してるんですよ
時田、岩本が出て行った扉をながめて微笑む
そうみたいだな
風も笑顔でうなずく
ねー、時田。俺と響子さんが結婚したらおかしい?
デスクに頬杖ついて風がたずねる
わたしはそうは思いませんが
時田、笑顔で答える
岩本副社長は怒るだろうね
役職上は、そうかもしれませんね
ふーん、そーかー
時田の返答にに首を傾げる風
私の見込みですと、
ん？
そのお話、うちの重役連中よりも、あの人を頷かせるほうが、大変だと思いますよ
え？響子さん?何で?
時田、両手を体の前で組んで自分の見立てに頷いている
まあ、私のカンですが
カンねぇ
風、苦笑い
どうかしました?
千里も昨日、そんなこと言ってたからさ
千里さんが、ですか？
そう、猛に好きな人ができたんじゃないかって。「女のカン」だそうだ
へえ。猛さんに?
時田、猛と恋という言葉が結びつかなくて、ぱちぱちと瞬き
「まあ、ほんとかどうかは、わかんないんだけど。」と風、机の上で指を組む
そしたら今日は会社で時田が、めずらしく俺の恋路を予言するしさ
まあ、生まれてこのかた、1人の女性としかお付き合いしたことのない、恋愛オンチの私の言うことではありませんね
謙遜しながら、軽くのろけてるよねー?
風、からかうように時田を指差す
そ、そ、そそそそ、そんなことありませんよ
時田、赤面して挙動不審
まあ、のろける価値があると思うよ、沙織ちゃんなら
きれいな笑顔で更にだめを押すSな風
あ、わた、わた、わた、わたくし秘書課で確認しなければならないことを思い出しましたぁ
慌しく頭を下げ、デスクや応接ソファに激突しながら社長室を出て行こうとする時田
時田ー。逃げなくてもいいじゃん
慌てた時田、みらくるんにつま先ぶつけてしまう
あ゛だ！
激痛に片足飛びしている時田に風が追いつき
ねー、さっきのカンの根拠、教えてよ
え？
響子さんが、親父のことが好きだったとか、そういう話?
風、剥製の前の手すりに腰掛けて時田に質問
社長！ここ、会社ですよ！何がっつり恋話する態勢に入ってるんですか
だって、そもそも見合い話持ってきたのだって、会社の重役だし、かまわないでしょ
それとこれとは違います！
時田、ずり落ちた眼鏡を上げて風にお小言
風、時田をちょっと見て、「じゃあ、訂正する」と宣誓するように右手をあげる
先代社長と顧問弁護士の感情的経緯について、当時の社長秘書・時田修司さんに質問します
固く言っても、意味はおなじです
時田、頭痛がするとでも言いたげな表情でこめかみを押さえる
じゃあ、3時のお茶休憩ということで、15分だけ、お話します
お茶休憩に恋話ってOLみたいだな。給湯室で話そうか
社長、ふざけ過ぎです
