フジテレビ火曜9時ドラマ『アタシんちの男子』を楽しみましょう!!
ドラマは感動のうちに幕を閉じましたが、まだまだ『アタ男』熱は冷めません。
終了したドラマなのでネタバレ含みます。ご承知おきください
『アタシんちの男子』をこれから見る方、ストーリー、次回予告、登場人物をお探しの方は、
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アタシんちの男子の針を進めたら…

諦めましょう
書くだけボリュームが出てしまいます
携帯の編集容量越えちゃったので、12日〜14日の日付に、3つにわけて投稿しています
風の話がこんなに長くなるなんてね
まとまらないから、格納庫行きにしようかな?(;-_-)=3

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■家族へと続くドミノ



それが、俺の幸せなわけ?


間違っていないと思いますが
響子、ゆっくりとうなずく
そうかな
承服しかねるといった表情の風
知らなくてもいい悲しみや、しなくてもいい苦労もあると思います。あなたは、十分悩んだんですから、安らげるような家庭を持っていただきたい。幸せになっていただきたいのです
響子の言葉を聞いた風は、少し怒っているみたいに投げやりに言葉を返す
じゃあ、あなたは俺に、どんなふうになって欲しいの?
一緒に食卓を囲みながら、親も子どもと一緒に成長して行くような、新造氏が夢見て得られなかった家庭を持っていただけたらと思っています。
響子、風の横顔をじっと見つめる
風、響子の言葉を聞いて、ふっと笑う


父親がいて、母親がいて、子どもがいて。子どもの成長に、あわせて親もまた人の親へと成長していく
確かに親父がもてなかった理想の家庭像だよね
たとえば、俺の母親が親父を受け入れて、子どもが大好きだった親父のそばに俺がいて、温かい家庭ってもんがあったなら、親父の長い孤独はなかったんだよな
俺も、もっと素直に育ったかもしれないけどね
でも、いろんな行き違いで実現はしなかった


だけど、1人きりの孤独を知っていたから、親父は翔の孤独に気づいてあげられたし、放ってはおけなかった
将来のある猛を、犯罪者の子どもにしたくないっていう猛の親父の希望や、記憶の戻らない優を傷つけたくはないっていうおばあさんの希望を受け入れられたのも、親父が自分一人の判断で引き受けられたからだよね
もし、親父に家庭があったら、縁もゆかりもない智や明を、ひどいバッシングを受けているからって世間から守ったり、餓死寸前だったから引き取るなんていう、即決即断は無理だったと思う。
例え血縁だからって、千里のために、一億円の私財を投げ打つなんてことだって、できたかどうかもわからない


形どおりに行かなかった俺と親父の「普通じゃない」家庭は、あいつらのピンチを救うことができた
親父は最後の余命ひと月を、会うことさえあきらめていたいとしい娘・千里と過ごすことができたんだ
そして、あのお節介の千里のおかげで、俺は親父の話を聞くためにあなたの元に足を向けるきっかけを得るんだ
こんな不思議なドミノが、誰にも必要とされていないと思い込んでいた俺の背中を押してくれたんだよ
理想の家庭像とか、血の繋がりだけが、幸せの条件じゃないってこと、俺が一番知ってるよ
そこにある思いが大事なんだってこと


そのドミノの列に欠けていた、一番大切な牌を置いてくれたのは、あなたなんだよ
あなたが俺にきっかけをくれたから、俺はいろんなことを知ることができたんだ


響子に話しているような、自分の思いを整理しているような風の言葉
でも、喋っている風の顔からは、さっきまでの険しい表情が消えている


響子は、風の横顔を意外な気持ちで見つめている
普段、気楽に構えている顔しか見せない風が、自分の思いを口にするなんて、新造の話を聞きに来た、ボウリング場以来かもしれない

あの時、風の目に差していた暗い影が、今はすっきりと取り払われたように響子には、思えた

響子の視線に気づいた風、
ちょっと、照れくさそうに笑う


親父が望んでいることは、後悔するなってことだと思う
後悔…
響子、うつむいて風の言葉を噛み砕くように繰り返す
そんな響子に、風が静かに語りかける


響子さん、あなた、わかってないよ
俺に今の家族をくれたのは、あなただ
あなたは、俺が親父の話を聞く気になるまで待っていてくれた
親父のことを誤解しないように、きちんと伝えてくれたから、俺は家に帰れたんだよ
そして、親父のことも許すことができた
あなたが、親父がいなくなってからも、母親10か条や一億円の条件を提示しながら、千里を守ってくれたから、千里は城を飛び出さなかったし、俺はあいつに会うことができた
今は離れている母親のことだって、あらためて考え始めることが出来たんだ
ねえ、そんなあなたを、俺が手放すと思う?


響子、照れるのも忘れて、あっけに取られたように風を見る
めずらしく本音を喋りすぎてしまい、風もなんだか気まずく、次の言葉がうまく出てこない


……
……


響子、回路がやっとつながったかのように、ゆっくり瞬きをすると、唇から、ほっと、小さく息を吐く
その息を閉じ込めるみたいに両手で口元を覆う
…あの、響子さん?
響子が動き出した気配に、うっかり喋りすぎたいいわけをしようと口を開く
すると響子、ぶん、とひとつ頭を振ると、覚醒を促すように自分の頬をこする


実は、響子、ちょっとだけ泣きそうになってしまった自分を、ごまかしていた
ずっと傷ついたままだと思っていた風が、自分の生立ちや、家族を受け入れて、前に進もうと試みている
いや、試みているどころか、響子の想像を超えた大きな視野で、新造や、千里や、兄弟たちを見つめている。
あの、写真の小さな男の子が


運転、お任せしててよかった
涙を引っ込めた響子が微笑む
え?
今のおはなし聞いたら、私、ハンドル操作、誤っちゃいます
響子、これまでのまじめな雰囲気をかき混ぜるみたいに明るい口調
誰もいないんだから、茶化さないでよ
茶化してません
ねぇ、いい加減、俺の保護者を卒業しない?
茶化すなといってる風も、いつもの調子に戻って、響子に軽口
こまりましたね
楽しそうに響子、首を傾げる
いや?
ふふふ
響子含み笑い
なに、その笑いはー
あなたがいると私は何も手が付かなくなってしまうから、お見合いしてお嫁さんをもらってしまえばあきらめがつくと思ったのに
なにそれ
あなたといると、どんどん、ダメな自分が出てきちゃいます


せっかく頑張って、いい弁護士、いい女でいようとしているのに
俺はそういうあなたが好きだけどね
赤くなるようなこと、よく平気で言えますね
暗いからわかんないよ。それに
風、信号待ちで車を止める
前の車のテールランプで、俺の顔も赤いしね

風に言われて、車内がほんのり赤く照らされていることに気づく響子
前の車は車高が高いRV車
ほんとですね
響子、くすくす笑い出す
半身ひねった風がキスをしようと響子に顔を近づける
車内の赤い明かりが去り、前の車が発進したことに気づく響子
信号、変わりましたよ
響子、風の体を押し返す
はーい
と返事をするけれど、きっちり響子にキスをしてから車を発進させる風
響子、ちょっと頭を抱える
何?
40歳過ぎ照るのに、こんな学生みたいなこと、自分がするとは…
何のことさ
しらばっくれる風の肩を、バシッと強く叩いてそっぽ向く響子
響子さんがOKしてくれるまで、俺、まだまだ迫るからね
心臓が持ちません
そんなかわいいこといってると、ますます手放したくなくなる
今日は、ほんとに、おかしいですよ
俺もそう思うよ
風、極上の笑顔を響子に向ける


響子、あきらめたように一つ息をつく
食事でもして帰ります?
今日は、響子さんの手料理が食べたいな
調理師免許持ってる人に、お出しするほどの腕は持ってませんよ
甘やかして欲しいんだよ。あなたに
何でしょうね。ほんとに、今日は
今までの俺に、愛情がたりなかったっいうなら、それに一番最初に気づいた響子さんが、責任もって補填してくれなきゃね




さ、何買って帰ろうか
風、上機嫌
あの、国道沿いのスーパーでいいのかな
おまかせします
響子、「仕方ないですね」と苦笑い
難しいもの、作れませんよ
普通でいいの、普通で


ウインカーを出して駐車場に車を入れる風

響子がスーパーの入り口をさす
何?
響が見ている方向を風が見ると


赤い特攻服が、スーパーの袋を下げて出てきたところだった
肩にがさりと袋をしょって、鼻歌でも歌ってそうな上機嫌でスーパーの敷地を出て行く


こんなところで、何やってんだ?
おうちで料理なさいます?
ぜんぜん。そもそも、ここから家まで相当あるよ
菊池氏のアパートは、・・・このあたりではありませんね
どういうことだ?


思わぬところで思わぬ人物を見て、顔を見合わせる風と響子