フジテレビ火曜9時ドラマ『アタシんちの男子』を楽しみましょう!!
ドラマは感動のうちに幕を閉じましたが、まだまだ『アタ男』熱は冷めません。
終了したドラマなのでネタバレ含みます。ご承知おきください
『アタシんちの男子』をこれから見る方、ストーリー、次回予告、登場人物をお探しの方は、
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『続きシリーズ』『その後シリーズ』など、お話を読まれる方は、
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アタシんちの男子の針を進めたら…

猛って、いつも食べ物食べてるイメージがある
道草買い食いって、子供みたい
出来た分だけ上げますね




■ジャングルジムの2人


猛、スーパーの袋を提げて公園をぶらぶら
いつもの藤棚の下には、片時も離れたくない空気をまとった、ラブラブ高校生が寄り添っている
隣に座ってもいいが、このままいると、も少し甘い展開になりそうなので、猛、今日は場所を譲ることに


ったく、近頃のガキはよー


座れるところを物色していると、公園の遊具スペースまで来てしまった。
お?
ジャングルジムの天辺で、空を見上げている見覚えのある小学生
おー少年!!
猛が、右手を上げて、景気よく声をかける
びっくりした航、ジャングルジムの上から辺りを見回す
相変わらず辛気くせー面、してんなー
航の返事を待たずに、猛、ジャングルジムに登り始める
ど、どうも・・・
気おされたように、ぺこり、と頭を下げる航
おお。おめーがいるかと思ってよ、今日はちゃーんと買ってきたぞ
白いレジ袋をがさがさ探り
メンチカツと、肉じゃがコロッケ、野菜コロッケ…、どれにする
ほれ、遠慮するなと航の前で袋を広げる
…メンチカツ
それ俺の
じゃあ、肉じゃがコロッケ
それも俺が食う
…じゃあ、…野菜コロッケ
よし!野菜は体にいいぞー
何のための三択だったの
ま、イベントだな。
…おじさん、変わってんね
んだと、このガキ
猛、男の子の頭を片手でつかんで荒っぽく左右に振る。
あ、あぶな!おじさん!
てめ、この、俺はおじさんじゃねーぞ
危ないってば!
航、猛の手をはずそうともがく
た、ば、っぶね!!
ジャングルジムの丸いパイプが滑って、後ろにひっくり返りそうなった猛、慌てて体制を立て直す
っぶねーじゃねーか
猛、航のあたまを一発張る
コロッケ一個で殴られてちゃたまんないよ
うるせー、とっとと食え
猛、男の子にコロッケ袋を一個渡す
ありがと
猛も自分の分を出し、口にくわえると、白いレジ袋の持ち手をジャングルジムに縛り付ける
大きな口で一口かじる猛
猛が食べたのを見て、航も食べ始める

??
メンチじゃねぇ
僕、メンチ
俺、野菜
見ると、航が持ってるコロッケ袋には、マジックで大きくカタカナの「メ」と書いてある
寄こせ
もうかじっちゃったよ
気にすんな
野菜は体にいいんでしょ?
それは子供の話だ
大人こそ、野菜を食べたほうがいいんじゃないの?
んだと、口のへらねーガキだな
おじさんこそ
おじさんじゃねーつってんだろ
だから、ジャングルジムの上で暴れたら、危ないってば
素直にメンチカツ、寄こしやがれ
自分で間違えたくせに
猛、ジャイアンよろしく、航のメンチカツを奪い取り、自分の食べかけの野菜コロッケを航に押し付ける
航、あまりの猛のわがままに、頭にきて、ぶら下がってる袋から肉じゃがコロッケを出して食べ始める
あ、てめー!
航、ジャングルジムを移動し、猛の手の届かないところで食べる
ったくよー
猛、下唇突き出して不満顔を航に向け、メンチカツをもぐもぐ
お。うまいな
その店、高級スーパーだから、惣菜もレベル高いんだ
さっき、レジ袋で店名を確認してた航、猛に教えてあげる
ほー。お前のもうまいんか?
うん
ひとくちくれねー?
航、呆れ顔
いいけど、おじさんが買ってきたんだし
航、猛の隣に来て半分食べた肉じゃがコロッケを渡す
猛、一口かじり、
んまいな
でしょ?
小学生のくせに、ずいぶん食いもんに、くわしいじゃねーか
親が、食べもの屋やってるから
ほお
さっきまで威勢がよかった航の表情が、ちょっと曇る
猛、その表情の変化を見て、片眉上げる
おめーよー
ん?
今日は、なんもされんかったんか
…うん。みんな塾の日だから…
おめーよー
ん?
今、話した感じだと、おめー、いじめられて黙ってるようなタマじゃねーよな

航、無言でコロッケを食べている
ま、俺には関係ねーけどよー
いじめられては、いないよ
そーか
うん
航の言葉を追求はしないものの、猛、目を細めて航の表情を探るように見ている


おい、それも食っちまえよ
猛、食べかけの野菜コロッケを航に示す
航、袋からかじり痕がある野菜コロッケを取り出す
おじさん、食べないの?
んだよ。おじさんおじさんって。名刺渡したろが
難しい字で読めないんだもん。
「大」しか読めなかったと、ちょっとすねる航
小学生には難しかったか
多分ね
航、唇尖らせる
おい、少年
ん?
一口寄こせ
はい
猛、大きい口をあけて航の指をくわえ込みそうなほど、コロッケを頬張る
あ〜!!ちょっと、おじさん!
読めなかったら、聞けばいいだろ?
あーあ
航の手に残ったコロッケは、三分の一ほど
いつもいつも、おじさんのくれるものほど、当てにならないものはないよ
おじさんじゃねーよ、たけるだよ

おおくら、たける。俺の名前だ。今度おじさんつったら、承知しねーぞ
たけるさんっていうんだ
そうよ、走り出したら止まらねえ。猛スピードとか、猛ダッシュの「猛」の字だ。バイクに乗るために生まれてきたような名前だろーが
猛、大げさに身振り手振りを交えて話す
止まらない、ってとこはあってるかもね
航、苦笑い
どーいういみだよ
イメージだってば
けっこー、口のへらねーガキだよな
猛、不満そうにへの字口。ペットボトルのふたを開け、お茶を一口飲む
僕も、ガキでも少年でもないよ、航ってなまえがあるから
おお、わかった。航だな。口がへらねーってとこは、訂正しねーぞ
猛、変顔で返事をする
その顔を見た航、思わず笑っちゃう
猛、お茶のペットボトルをもう一本とり出して、航に手渡す。
航、ペコ、と頭を下げてお茶を飲む
航よ
ん?
俺にも、いじめられっこの弟がいる
そうなの
2人な
猛、Vサインみたいにビシッと二本指を航に示す
ふたりも?
目を丸くする航
おう
ふーん
何でそんな話をするのかわからない航、不思議そうな表情でうなずく
ふっと、口の端で笑って腕組みをする猛


1人は、自分はいっこも悪くねーのに、親のしでかしたことのせいで、大勢の大人にいじめられて、うちへ引きもこっちまった
もう1人は、すっげー生意気が原因で目をつけられたのに、ぶっ飛ばされても、突き倒されても、「あいつら自分にひがんでるからだ」って、上から目線を崩さずに、人とつるむのをやめちまった
あいつらは、自分を守るために、いったん安全なとこへ避難したってこったな
猛、ちょっと笑って視線を上げる。
世間的に褒められたことじゃねぇけど、あれはあいつらの生存本能つーか、自己防衛本能っつーかが、働いたんだってって俺は思った
いったん引いて、力が貯まるのを待ってるって
そういうと、猛、後ろの格子に手を伸ばす
まあ、あいつらはあいつらで、自分の問題を、なんとか1人で解決しようとしてたってこった。
一回言葉を切って航を見る猛
航、話を聞いているってことを示すみたいに「うん」とうなずく
そのしぐさを見て、猛はまた話を続ける


最近、うちに、とんでもねえお節介がやってきて、あいつらにちょっかいかけ始めた
俺は、「あいつらの傷口、開くような真似したら、ただじゃおかねえ」と、そいつを追い出そうとしたら、ちびっこのくせに、すっげえ、根性のある奴だった
疲れ知らずのお節介に、最初は反抗してたあいつらも、自分にかけられてる言葉が、厳しいけど、辛い過去の傷口を開こうとしてるわけじゃなく、応援してくれてるんだってことがわかってきて、生意気にも、ちょっとずつ、強くなってきやがった
まだまだ、全部の問題が解決したわけじゃないが、前に進むきっかけがつかめたらしーな
猛、ちょっと笑って、首を傾げる


ふーん
航、猛の突然の話を、ちょっと飲み込みかねながらも、小さく相槌を打つ


おめーは、ダチだっつって、そいつらから逃げてないから、見込みがあるともいえるし、心配でもあるな

おめーに、お節介を焼いてくれる、人間がいるのか?
お母さんが、お節介だけど、お母さんにはいえない
なんで?
俺んち、お父さんがいないから、俺がお母さんを守らないと
そか、偉えぞ、少年
猛、航のあたまをぐいぐいと撫でる
じゃあ、しょうがねー、俺がめんどーみてやるか
いいよー
航、強く頭を撫でられ、思わず目をつぶる
遠慮すんな
してないってば
なんでだよ
今でもかなり面倒なのに、この上、ジャイアンみたいな人まで増えたら、僕の身が持たないよ
誰がジャイアンだってー?
猛、航の頭を小突こうと拳骨振りかぶる
航、慌てて頭をガードし、
そーゆーとこだよ
と指摘
「生意気なガキだな」と、苦虫噛み潰す猛
お互い背を向け、クールダウンするみたいに、同じタイミングでキャップを開けて、一口お茶を飲む猛と航
自分たちの鏡のような動きに気がつき、顔を見合わせる2人


おぉ、そういえば、もう1つうちのガキどもを変えた、でっかいスイッチがあったな
思いついた猛がニヤニヤと航を見る

恋をしろ、少年
は?
自分のいいとこを見せたいような相手に会えば、一番、手っ取り早く、かっこわりい自分から抜け出せるぜ
猛、決めポーズ
僕、小学生だよ
かまわねーだろ、そんなんは
ふーん、じゃあ、猛さんは、恋、してるの?
俺は完璧だから、その必要はねーな!
!?
航、呆れ顔
なんだ、なんだ、その顔は!?
猛、航の左右のほおを片手でつかんで、睨みつける
い、いたいよ〜


ボコ!!
と、そのとき、猛の背中に何かがぶつかった
い゛で!
痛む背中に手をやると、次々と何かが投げつけられる
飛んでくるものの正体を掴みかねた猛、キョロキョロを辺りを見回し、ジャングルジムの下に転がる物体を発見
じゃ、じゃがいも?


うちの子になにするの!


ジャングルジムの下、ナイスコントロールでジャガイモ投げてくる買い物かご提げた女に気づく猛
お母さん!
え、お前の母親?
驚いた猛が航を見た瞬間、目の前にカボチャが迫り、大慌てで身をかわす猛


のわ!
バランス崩して後ろにひっくり返る猛
危ない!!
慌てて猛の特攻服の袖を掴む航
幸い、猛は大人だから、体をぶつけただけで、ジャングルジムの格子から落ちはしなかった


お母さん、この人は違うんだよ!
あわてて母親を止めにジャングルジムを降りる航
航の母親、駆け寄るわが子の肩をしっかり抱いて、
あんた、うちの子になんかしたら、承知しないよ!
と、威勢のいい啖呵を切って、猛の手を引いて公園を出て行く


あまりのことにあっけに取られる猛
心配そうに猛を振り返りながら、母親に連れ帰られる航


猛、びっくり眼で航とその母親を見送る
ふと、目を細めて、ため息1つ
自分の特攻服の刺繍を見つめる


と、その時
山川豊の「霧のシアトル」の大音量
猛、ポケットから携帯を取り出し、アラーム音を止める
さて、高級かつらをお届けに、行くとしますか
気を取り直したように、明るく言うと、特攻服をバサリと羽織りなおし、空になったゴミをひとまとめにしてゴミ箱へシュート
あ゛!
今日もターゲットから大ハズレ
舌打しながら、ゴミの入った白いレジ袋を拾いなおし、再びゴミ箱へ投げ込む猛


航の母親の剣幕を思い出し
ごみはゴミ箱に捨てたし、背筋もちゃーんと伸びてるのに、俺って、そんなに信用なりませんかねー
とつまらなそうに項をさする
まあ、他人だから、見た目で判断するのも、仕方ねーけどよ


さー、お仕事お仕事
気を取り直したように、両腕を天に突っ張って伸びをする猛
バイクにまたがり、エンジンをかける