フジテレビ火曜9時ドラマ『アタシんちの男子』を楽しみましょう!!
ドラマは感動のうちに幕を閉じましたが、まだまだ『アタ男』熱は冷めません。
終了したドラマなのでネタバレ含みます。ご承知おきください
『アタシんちの男子』をこれから見る方、ストーリー、次回予告、登場人物をお探しの方は、
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『続きシリーズ』『その後シリーズ』など、お話を読まれる方は、
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アタシんちの男子の針を進めたら…

ちょっとふざけたお話ですが、まあ、書いちゃったから上げますね
話進まないのに、それるって、どういうことなんでしょう(笑)



■ロールケーキ争奪戦



おー、今帰ったぞー
リビングに入ってくる猛を見た千里、智、明、びっくり
3人が自分に注目しているのに気づいた猛
んだよ、挨拶なしかよ
とへの字口
気がついたように「ああ、おかえり」という千里の様子に、猛、片眉上げる
どした
あれがないから、
千里、リビングのドアを指差す
うんうん頷く智と明
あ?
猛、怪訝な表情
これ!
千里、自分のワークブーツで空中を蹴る仕草をしてみせる
おー
猛、納得。
いつもみたいにドアを蹴り開けなかったことを思い出す
じゃ、ご要望にお答えして、帰宅するとこからやり直すか
猛、踵を返し、リビングを出て行こうとする
千里、慌てて猛の腕を取り、
いいよ、わざわざー
リクエストじゃなかったのか
するわけないよ
明、呆れ顔
ま、たまにはいいんじゃねーの?静かで
智、くしゃくしゃと髪をかく
んだよ。それじゃまるで、いつも俺がやかましー見てーじゃねーか
やかましーつってんだよ
なんだこのやろー!
あ゛〜ん!?
智、猛、いがみ合い
と、大きな音で猛のおなかが鳴る

智、思わず吹き出してしまう
猛、自分の腹をさすり
おい、めしだ、めし。腹減った
自分の席にどかっと腰掛ける猛
あ、今、したくするね
千里、うなずいてキッチンへ
おい、あいつらは?
階段上りかける千里に猛が質問。空いている席を指差す
千里、振り返り、ちょっと目線を上げて思い出す
えーと、風は、おもちゃ業界の会合だって言ってた
明、手元のノートを片付けながら、
翔さんは、残業
智、うーんと背伸びをしながら
優は、最近仕事が忙しかったからって、エステに寄って帰ってくるってさ
ふーん。
自分で聞いたくせに、猛、興味なさそうに大あくび
せっかく説明したのに、と智アヒル口.
明も大儀そうに眼鏡を直す
千里も苦笑い
すぐ支度するから、待っててね
おー、よろしく頼むぜー
猛、千里に右手を上げる
明、席を立ち上がり
僕、9時になるからそろそろ休むよ
と千里に申告
うん
智もストレッチしながら
俺も、風呂にはいっちまおーかなー
と独り言
なんだよ、てめーら、話し相手にぐらいなりやがれ
やだよ、めんどくせー
話、合わないしね
んだと、こらあ
椅子から立ち上がって、智と明に挑みかかる猛
智と明、すばやく身をかわし、暖炉脇の階段に向う
じゃあ、お休み、千里さん
おやすみなさい
と階段下にいる千里を追い越しながら手を振る
はーい
千里も手を振って返す
二人を捕まえそこねた猛、舌打ち


猛、智と明を見て、航のことを思い出し、2人が出てった階段をを少しの間眺めている


どうしたの?
千里が猛に声をかける
あん?
話し相手なんて、珍しいこと言うじゃん
そういや、そーだな
1人でご飯食べるの、寂しいんなら、あたしが話し相手に、なったげるよ
うるせーよ、バーカ!
からかうみたいな千里のセリフに、思わず顔をゆがめる猛
早く、飯の支度しろよ
はいはい
猛、ケンカし足りないのかな?と首をかしげながらキッチンに向う千里





お待たせー
お?
したくされてきたのは1人鍋
今日は鍋焼きうどんですー
ほほー
猛、珍しいメニューに興味津々。千里が持ってる角盆を覗き込む
熱いから、気をつけてね
テーブルにお盆ごと置く千里、猛の前の缶ビールに気づく
めずらしいね
おめーも呑むか?
あたしは今からお風呂はいるから、遠慮しとく
そーか
ブルタブを起こし、一口ビールを飲むと「く〜」と幸せそうに猛がうなる
猛、火傷しないように、長袖シャツの袖口引っ張って土鍋の蓋を開けると、湯気といいにおいが広がる
その湯気の中に顔をつっこみ匂いを堪能
なんか、そういう美容器具があったよね
千里、湯気を浴びている猛を見て、スチーム美顔機を思い出し笑ってしまう
鍋焼きは、ひさしぶりに食うなー
猛。ぱちんと手を合わせると、早速箸をとる
今日はね、みんな食事の時間がバラバラだから、1人ずつ食べられるメニューにしたんだー
千里の解説なんかお構い無しに、猛、熱々の鍋焼きうどんをふうふう言いながら食べはじめている
慌てて食べると、やけどするよー
うるせー。熱いもんは、熱いときに食うのがうまいんだよ
と言いながら、七味をたっぷり振るもんだから、辛くて更に汗が出てしまう猛
かっれえ
入れすぎなんだよ
バーカ、男なら、このくらいは当然だろ?
味覚に男も女も関係ないでしょ
おおありだ、バーカ!その上、おめーは子供舌だから、大人の味覚がわかんねーんだよ
子供舌って、何よ
猛の悪態に応酬しながら、千里、「猛の減らず口って、うるさいんだけど、ないとなんだか寂しいんだよね」と思いながら、頬杖ついて猛を見ている
元気ない気がしたのは、思い過ごしだったみたいと千里、なんだか安心する
ニコニコと鍋焼き食べる自分を見ている千里に気づいた猛、
何、ニヤニヤしてんだよ、きもちわりーな
と、箸で千里を指す
気持ち悪いって、何よー
千里、猛を叩く
いて!何しやがる、このちびっこが!飯、食い終わったら、憶えとけよ
食い気が勝る猛、ケンカよりも食事優先


熱い熱いと言いながら、あっという間に完食する猛
残りのビールを一気に飲み干すと、特攻服を脱ぎ、シャツの袖口で額の汗を拭う
タオル持ってないの?
お、そーか
猛、帰ってきてそのまんまにしていた道具袋からタオルを引っ張り出しぐいぐい顔をこする


話し相手いらないじゃーん
喋る暇もないくらいの勢いで鍋焼きうどんを平らげた猛を、千里がからかう
うるせー、気分の問題なんだよ
猛、汗を抑えるように、額にタオルを巻きつける


食いもんつーのは、偉大だな
土鍋の蓋を戻しながら猛が呟く

意味がわかんない千里、首を傾げて猛を見る
ちーとばかし気分が腐ってても、満腹になれば、そんなこともどこかに行っちまう
猛、爪楊枝くわえて満腹のおなかをさする
やっぱりなんかあったんじゃん
千里、猛の腕に手を置き、心配そうに顔を見る
やっぱりってなんだよ。なにもねーよ
面倒くさそうに腕を上げて、千里の手を外すと、猛、うなじの後で指を組んで椅子の背にもたれかかる
ほんとに?
上目遣いで探るように、猛の表情を確認している千里
おお
猛、口の端で微笑んで軽く頷く
ならいーけど…
千里、釈然としないながらも、引き下がる
千里も猛の真似して、項の後ろで指を組んで椅子の背にもたれかかる
まねすんなよ
猛、千里のしぐさを見て、片眉上げる


ただよー、
んー?
猛、ちょっと言いよどみ、さっき暑くて脱いだ特攻服を手に取ると
人っつーのは、どうしても身形(なり)で判断されちまうもんだなーって、思ってよー
世間話のように明るい口調でいうと、しわにならないようにきれいに整えて、特攻服を隣の椅子にかける
そして、照れ隠しのように、下唇突き出して、変な顔をする
その顔に、千里吹き出す
そうだね。でも、まあ、あたしは、そのおかげで借金取りから逃げられて、ずいぶん助かったって部分も、かなりあるけどね


千里の脳裏に、ダンボールハウスで聞いた、猛の言葉が浮かぶ

残念な世の中だよなー。
こうさ、外見が悪いと誰も何も信じてくんねえ
それでも強がって生きてくしかねえのかな
頑張りましょう!
ちいとは変わってくれる明日に期待して!
ね!


中に誰がいるかも知らないのに、ダンボールハウスを壊そうとした子供たちから、窮地を救ってくれた猛のやさしさ
上手くいかない自分について、本当は悩んでいる心情の吐露
あれが猛の本音だって、わかっているだけに、あの時、ダンボールハウスの中には、自分がいたんだとは絶対言えないと千里は考えていた
大蔵家では見せない姿が、特異点みたいに千里の記憶にとどまっている


同じように、猛も、「師匠」のダンボールハウスを思い出していた
温泉掘削騒動で、「師匠」の正体が千里と知ってからも、その話を千里にも兄弟にも話していなかった
猛は、たぶん千里は、ダンボールハウスの外で喋っていた男が、猛だったとは気がついていないはずだと考えていた
誰にも言わなかった本音をうっかり吐いてしまったことを、改めて確認するなんてことは、恥ずかしすぎてできやしねえ、と猛は思っていた


あのー
井上さんが、暖炉の上の階段からリビングに顔を出す
2人とも、それぞれの思いに、しばしはまり込んでいたが、井上さんの声にわれに返る
明日で賞味期限切れちゃうロールケーキが残ってるんですけどー


はい!!
食べもののことには黙っていられない猛、甘いものには目がない千里、2人揃っていっせいに挙手
トレンチ持った井上さんが階段を下りてくる
トレンチの上には、二つのケーキ皿
お、ちょうどいいじゃねーか
うん
頷く2人に反論する井上さん
いえ、ちょうどよくはありません。
え?
私も、食べたいので、じゃんけんで勝負をお願いします
握った拳を二人に示す
まじか!おめーはうちのメイドだろーが
猛、腕組みして井上さんを見る
理不尽な扱いすると、労働基準監督署に訴えますよ
ローテンションで、井上さんが猛に抗議
俺は、おめーの雇用主じゃねーから、痛くも痒くもねーぞ
まあまあ、ケーキ1つで、男ががたがた言わないで、ここは快くレディ・ファーストって言うことで
千里が猛の肩を、ポンポンと叩く
この家の、どこにレディーがいるってんだ。見たことねーぞ
猛、わざとらしくきょろきょろ辺りを見回す
何言ってんのよ、ここにいるでしょうが、ここに
千里、自分と井上さんを指差す
うんうん頷く井上さん
猛、ごしごし目をこすり、もう一度リビングを見回し、
ぜんっぜん見えねぇ
千里と井上さん、猛の視線の先に、わざわざ移動し、にっこり微笑む
猛がしらばっくれて視線をそらすと、その視線の先に移動して、またもや微笑む女子2人
猛、またしても視線をそらし、
「やっぱ、見あたらねーな」とせせら笑う
井上さん、猛を後ろから羽交い絞め
千里、猛の襟首締め上げ
これでも見えないって?
と、千里、態度とは裏腹に、ものすごくかわいく微笑む
こんな腕力頼みの2人組、レディーとは呼ばねーだろ
猛、往生際悪く視線をそらす
っとにむかつく
千里、舌打ち
猛はさ、男らしい男だから、こーんな女子供の食べ物には、興味ないと思うんだよねー
千里、猛とケーキを順番に指差す
バーカ、そういう差別も、セクハラってんだぞ、憶えとけ!
猛、千里の鼻先に人差し指を突きつける
埒が明きませんね、やっぱりここは一発勝負!
井上さんが掛け声とともに、空手家のように構える
その気合に、猛もカンフーマスターのように腰を落として身構え、千里も握りこぶしで「よーし」と気合を入れる


最初はグー!!!じゃんけんぽい!!!


やったー!!
勝者は女子2人
猛、がっくり膝を落とす


早速、各々お皿を持って席につき、「いっただきまーす」と合掌&合唱する井上さんと千里
へ!そんな女子供の食いもんなんか
とそっぽ向いて強がりを言う猛
うまーい!
おししーい!
と、美味にとろけそうな二人の声に、猛、辛抱たまらず振り返り
な、一口
と情けない顔でおねだりをする
やだよ、一切れしかないのに
つめてーな
井上さん、フォークで指したケーキを丸ごと一口で食べてしまう
あ、ずっりー!
ふぉ、ふぉ、ふぉ
と口の中がいっぱいなので、バルタン星人のようなくぐもった声で笑う井上さん
千里に狙いを定め、まとわり着く猛
おいー、ちびっこー、なー、一口分けてくれよー、なーなー、なーなー
千里が右へ向けば右へ、左に向けば左に回りこむ
あー、もう、うるさい!わかったよ、一口だけねー
千里、根負け
お、ありがてー。フォーク寄越せ
猛、ニヤニヤと右手を伸ばす
ダメ、井上さんみたいに一口で全部食べる気でしょ
千里、不審の目で猛を見る
ま、ま、ま、まさか、んなわけねーだろ、俺を信用しろよー、ちびっこー
図星を指されて、あからさまにきょどる猛。
信用できない!
千里、猛に背を向けて、ケーキを半分にフォークでわけ、さらに半分に
その四分の一切れをフォークに刺して
はい、あーん
と猛にかざす
バカ、そんな恥ずかしい真似、できっか!!
だーめ。食べたかったら、ゆーことききましょーねー
井上さん、口元押さえて笑ってる。
いやなら、あげないよー
千里、楽しそうに笑って猛を見る
憶えとけよ、ちびっ子
猛、低い声で呟く
いらないのー?
からかうように言う千里
いるよ!
猛、やけくそ気味に大声で返事
はい、お口開けてくださいー
小さい子に話しかけるような千里の口調
猛、椅子に座ると、覚悟を決めて、「あー」とひな鳥みたいに口を開けて待つ
井上さん、めずらしい光景に、笑いが止まらない。が、まだケーキ飲み込めてないので、ちょっと咽てしまう。
み、水…
口元押さえてキッチンにかけていく井上さん
はい、よく味わってくださいねー
千里が笑いをこらえながら、ケーキを猛の口に入れた、そのとき


バタン


リビングのドアが開き、翔が帰ってきた
「んま〜い!」と身もだえし、とろけそうな声を上げる猛
翔、千里が猛と2人きりでケーキ食べさせているという光景に、びっくり


なに、してんの?
え?
翔の声に、千里、リビングのドアをふりむく
あ、おかえりー
翔を見つけて屈託なく微笑む千里が手を振る。手にはフォークを持ったまま
おいしいすぎるロールケーキに感動している猛も、ちょっと遅れてリビングのドアのところに立つ翔に気づき、
よ、お疲れー
と、右手を上げる
「見たまんまで判断するとー」と翔、リビングを指差し
邪魔した?
と、苦笑いで首を傾げる
バーカ、なに、寝ぼけたこといってんだよ!
猛、呆れ顔で翔を見る
しかし、翔が面白く思っていないことをなんとなくさとり、やましいところは何にもないのに、ついつい挙動不審になってしまう猛


邪魔って、何?
不思議そうな顔で首を傾げ、翔に尋ねる千里


お、俺でもわかることなのに、こいつときたら
開いた口がふさがらない猛
ま、そうくると思ったけどねー
そんな千里には慣れっこの翔だけど、千里にわかんないように、やっぱり、こっそり、ため息ついてしまう


猛、そんな2人をかわりばんこに見比べて
女なんか選び放題のはずなのに、何の因果でこの弟は、度を越した激にぶのちびっこに、はまっちまったのかねー
にしても、この組み合わせの妙は、考えようによっちゃあ、運命的と言えねーこともねーな
と、まともな恋愛経験がろくにないくせに、猛、余計なお世話の心配をして、思案顔で腕組みをする


猛は、自分がケーキ食べたがったことが原因で招いた状況だってことはすっかり忘れているみたいだけどね