アタシんちの男子のその後を考えよう
ちょこっと続き
例により書きっぱなしです
加筆修正あると思います
翌朝
なんだか気まずくて、朝食に行かなかった智
リビングに行くと、1人分の朝食が、トレイに支度してあった
傘みたいな虫除けネットを開いたり閉じたり
こんなの、うちにあったんだな。ばーちゃんちみてー
ご丁寧に「レンジでチンして食べてね」とメモまで載っている。
面倒だなー
ぶつぶつ言いながらも電子レンジを使いにキッチンに行く
食卓に戻ってくると、明がリビングでパソコンを開いてる
おはよう
おう
それだけ挨拶すると、もくもくとパソコン。もくもくと朝ごはん。
明ー
なに？
今日のおかず、何でこんなににんじん多いんだ？
智、きんぴらごぼうの小鉢と筑前煮の小鉢を明に見せる。どちらも通常の配分の倍付けでにんじんが目立つ
にんじん嫌いだって、自分が残したのをそこに入れてた
猛か〜
料理はバランスだよね
知ってたら止めろよ
千里は今日も義男の畑へ
今日はナスの収穫
同じ畝に入り背中合わせに収穫作業。間に据えたコンテナにとったナスを丁寧に置く
昨日貰ったにんじん使って、きんぴらゴボウと筑前煮を作ったんだよ。新鮮だったから、香りが良かった
そうか、良かったよ。おろぬきのニンジンも結構おいしいだろ？
おろぬき？
あ、そうか。うーん。間引くってことかな
へー
うちの奥さんの田舎の方言がうつっちゃってな
義男さんの奥さんは、夏休みはないの？
保育園だから、ないみたいだぞ
保育士さんかー
どうした？
今、仕事を探してるんだけど、あたしはなんに向いているのかなあって
やりたいことは、何かあるのか？
良くわからないんだよね。親父の借金で逃げ回るのに必死で、そういうこと考えたことがなかったんだよ。
一回、就職したんだろ？
そのときは、親戚の家をでることばかり考えてたし
仕事の捉え方だな
ん？
やりたいことを仕事にするか、やりたいことのために仕事をするか
ふーん。そうかー。
深刻そうな千里を見て微笑む義男
大変なことも多いけど、手をかければかけるだけ野菜は応えてくれるから、農家は楽しいぞ。千里が良ければ、うちも候補に入れといてくれよ
ありがとう、義男さん
うちの奥さんも、子どもが大好きでしかたなくて仕事にしちゃったんだよ。千里は何が好きなんだい？
あたしの好きなこと・・・
考え込んで、仕事の手が止まる千里
まあ、いいさ。
義男、腰を伸ばして、手ぬぐいで首を拭う
千里、世の中にいらない仕事は何にもないぞ。どんな仕事も人のためになるんだ。千里なら、きっと大丈夫だよ
千里、振り返って義男の顔を見上げる
急ぐことはないよ。
義男、頷く。
千里も、小さく頷く
よし。そうしたら、うちの収穫は少し急いでくれるかな？午後は夕立があるって言ってたから、早いうちに上げてしまいたいんだ
わかった
千里、気合を入れるように、軍手の指を組み合わせ、気分をリセット
義男と二人、収穫に励む
食事が済んだ智。
リビングのテーブルに残っていた、さっきのメモを見つける
椅子に座って肘を付き、両手でメモを持って見る
これ、千里さんの字、だよな。
達筆、というわけではないけど、丁寧に書くのが習慣になっているらしいく、漢字の一角ずつの継ぎ目がぴったりくっついている。かっこつけた止め跳ねをしていないけど、萎縮していない元気のいい文字。
「レンジでチンして食べてね」という、色気もなんもないメモを、愛しげに、じっと見つめる智を、明が呆れ顔で見ている。
智、図書館に行ったとき、隣で履歴書を書いていた、千里の手元を思い出す
図書館・・・
吉田先生に送った予定表では、今日は図書館に行く日だよな
どうしようかな
ノックの音
はい
失礼します
今日もスーツを綺麗に着こなしている時田が入ってくる
迎える社長のデスクでは、風がだれ気味に書類で顔を扇いでいる
時田ー
はい
社長服、夏服ないの〜
公式な場に出るとき以外、着てなくてもいいですよ
ってことは何、夏服ないの？
作りましょうか？
親父も酔狂なこと始めたもんだよな
子どもに夢を与えるおもちゃメーカーの社長が、スーツじゃ夢がないとおっしゃっていました
俺は勤めをしたことがないから、真夏のスーツと聞いただけで恐ろしいよ。時田、ずっとそれだろ？冬は冬で寒いだろうに
それは日本全国のサラリーマンのことですよ
そりゃそーだ
あきらめて上着だけ脱ぐ風
その上着を預る時田。風の空いた手に持ってきた書類を載せる
なに？
湊本氏の調査資料です
ふーん
時田、風の上着をすぐ着られるように近くのコートハンガーにかける。
なかなか面白い人物ですね。廃盤おもちゃの専門店を、下北沢に持ってます
ちょっとおしゃれでマニアックって感じか？
風，資料を繰る
なー時田ー。この資料古くないの？
そんなはずは、ないんですが
この写真、高校生じゃないの？
ああ・・・
な、どう見ても
それ、わたしも確認しました。間違いありません。その顔で、25歳です
えー！翔と同じ歳か？
そのようですね。
智と同じか、行っても千里くらいだと思ってたよ
へー、としげしげと写真を見る
最初に聞いた話よりも、かわいらしいというか、人の良さそうな印象を受けるね
わたしも、「えげつないほど買い漁る」という噂から、もっとアクの強い外見を想像していました。
もう、千里には会ってるんだよな
そのようですね。
いっただっきまーす
義男の家での畑仕事は賄い付き
義男は料理が上手なので、てきぱきとその辺のカフェも顔負けのランチプレートを仕上げてくれる
でも、義男が食べるのは愛妻弁当。
サラリーマン辞めた頃。畑を継いだ俺がいつも家にいるようになって、忙しい奥さんを手伝うつもりで食事の仕度をするようになったんだよ。もともと料理は嫌いじゃないし、手伝うつもりが一日三食３６５日作るようになっちまったんだ。
奥さん喜んだでしょ
最初のうちはな
え？
そのうち奥さん、一日一食くらい作らないと、料理が下手になる！って、宣言して自分と俺の弁当を作るようになったんだ
へえー
義男の弁当箱をのぞく千里
彩りよく、几帳面に詰められているお弁当
おいしそう
義男の家の庭先に軽トラックが入ってくる
義男さん！
降りてきたのは太郎
お、千里ちゃん。こんちわ
こんにちは
義男さん、ありがとー。助かったわ。車、貸してもらえて
あいてるときなら、構わないさ
集荷の手配、すぐ整えるから、少しの間、荷物、置かせてもらってえーかな？
納屋のほうならいいよ
助かります。いろいろすんません。
太郎、、納屋の前に車を移動、バックで荷台を納屋の扉に近づける。
荷物？
千里が義男に問う
ああ、太郎ちゃんの仕事のものだって。
太郎さんのお仕事って？
うーん、俺には良くわからないんだけど・・・。おーい、太郎ちゃん！お前の仕事は何かってさー
ん〜？
ダンボール運んでいる太郎、そのまま持って千里のそばまで来る
見てみ
千里、ダンボールを開けると、箱に入ったままのおもちゃや、ちょっと壊れたおもちゃがぎっしり入っている
これ全部、おもちゃ？
せや
でも、ちょっと、箱とか日に焼けてる？・・・ていうか、え？
へへへへ
これ、あたしの子供の頃にあったおもちゃだよ！
そー
これが僕の仕事なんや
井上さーん
智、井上さんを探してリビングに入る。
おい明、井上さんは？
あそこ
指差したサウナのドア「井上さんトレーニング中」の札
まだやってんのかよ
そ
俺、出かけるからお昼いらないっていいに来たのに
いっておくよ
わりー
それより僕のお昼はどうなるんだろう
いつから入ってるんだ？
さあ
出てきてもフラフラで使いもんにならねーかもな
かもね
まだ打倒千里なのかね
そーみたい
職場放棄してんなよって話だよな
ますます強くなって、セキュリティには役立ってるんじゃない？
そーいう意味ではねー
明、萬菜庵の食券やろうか
うん
智はどこ行くの？
図書館、行ってみる
