フジテレビ火曜9時ドラマ『アタシんちの男子』を楽しみましょう!!
ドラマは感動のうちに幕を閉じましたが、まだまだ『アタ男』熱は冷めません。
終了したドラマなのでネタバレ含みます。ご承知おきください
『アタシんちの男子』をこれから見る方、ストーリー、次回予告、登場人物をお探しの方は、
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『続きシリーズ』『その後シリーズ』など、お話を読まれる方は、
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アタシんちの男子のその後を考えよう

どこに入るかな?まだ未定ですが、優と七海の話




シアトルスタイルのコーヒーチェーン店


カフェミストのカップを持った優、オープンテラスは避けて、奥の落ち着いた照明のエリアを選び、店の入口を背にして座る
キャップをかぶって髪を隠すだけでも、だいぶ印象が変わるらしく、誰も優に気付かない。キャップに合わせて服装もいつもよりカジュアル
妹と会うにしても、用心してよと、マネージャーからセルフレームのメガネを渡された
アイテム盛りすぎたほうが、怪しいんじゃないかな?と思ったけど、まあ、一応言うとおりにしている


おにぃ
背後から声をかけられる。
頭の中にふわふわと靄のようなものがかかる
振り返ると、前髪を少し流した長い髪の女の子が、グラスの載ったトレイを片手に立っている。
彼女が七海。僕の妹。170cmはありそうな長身。スカウトされるだけあってかなりかわいい。
わが妹ながら惚れ惚れしちゃう、と兄の幸せを噛みしめる優
お待たせ。
平気だよ。そんなに待ってないから。
椅子に座ろうと七海が身を傾けると、栗色の髪が揺れる
その髪色、いいね?何色?
優、自分の髪をつまんでから、七海の髪を指差す?
ううん。何もしないでこの色。ねこっ毛だし、やんなる
よく見ると、薄いそばかすのある肌も白いし、瞳の色も明るい
色素が薄いんだね。
隔世遺伝かなー。おばあちゃんがそうだった。おにぃと似てるのは、背が高いとこと、つめの形かな
七海がテーブルの上に手を広げて見せてくれる
マニキュアしていない丸い爪
優も手を広げて比べて見ると、確かにそっくり。
ね?
ほんとだ


すぐそばに並んでいる自分と七海の手を見て、優はしみじみ考える
七海と再会したのは三ヶ月前
なのにこの馴染みっぷりは何なんだろう
女性恐怖症を克服したばかりの僕なのに、なんで七海は平気なのかな?
顔貌の割に男っぽい性格が幸いしているのかな?
おにぃ、それ変装?
七海が優の眼鏡を指差す
おにぃと呼ばれるとなんか漂う懐かしい感じ。これが原因かもしれないな。


おにぃって、小さい頃から呼んでた?
うん。言葉を覚えた頃の癖らしいよ。
じぃじ、ばぁば、ぱぱ、まま、おにぃ。指を折って数えるしぐさをする七海
なんとなく、記憶にあるのかも
そう
七海、微笑んで優を見る


今日は、何やったの?
歩く練習と、写真撮った
ウォーキングと宣材撮影だね
そんなかも
メイクも落として、ほぼすっぴんで、ベースボールシャツにジーンズといういでたちの七海は、とても芸能界に興味があるとは優には思えない
うまく歩けなくてすっごくおこられた
七海、への字口
写真だって、うまく笑えなくて、笑ったら笑ったで記念写真じゃねーんだとか怒鳴られるし
優、自分が新人の頃を思い出し、なんとなくその光景が目に浮かぶ。
「僕もそうだったよ」と優がにっと笑う。
すると、七海の表情が曇る。
ごめん、なんか悪いこと、言ったかな?
慌てる優に、七海、ちがうちがうと手を振って否定
おにぃ
なに?
芸能界って大変なところだね
なんかあったの?
七海の様子に心配になる優
大勢の大人が、あたしみたいな、まだ何者でもない奴に、本気で取り掛かってくれるの。なんか怖いなーって。大勢の人が動いて。お金だってかかってると思うし
七海、自分の髪をいじりながら、ちょっとうつむいて話す
人を育てるって、そういうことなんじゃないのかな?
社長さん直々に、熱心にうちの田舎まで通ってくれたから、申し訳なくて、つい、夏休みの間ならって、返事しちゃったけど、
うん
夏休みの思い出なんてことじゃ、すまされなさそうな雰囲気。
七海、ふーと大きくため息をつく
だからって、好きでもないことをやる必要はないんじゃないかな
うん
七海、こくんとうなずいて、優を見る
とりあえず、おにぃのお父さんの会社のオーディションは、やるしかないみたい
迷惑かけるかもしれないけどごめんね
迷惑なんてあるわけないよ。やるんなら、全力でやりなよ。せっかく上京したんだし、時間をかけて準備したんだから
うん
七海、頷いて優を見る

おにぃ。ごめんね

ちょっと、ちゃらちゃらした仕事だなんて、思ってた
申し訳なさそうに上目遣いで優を見上げる七海
僕たちの仕事は、苦労が見えない方がいいんだよ。
優、にっと笑って、親指を立ててグーサイン
七海、ちょっと照れたように笑う
それから
まだあるの?
七海が何を言うにも負担にならないようにと、おどけて見せる優。
なんか僕って、ちょっと、お兄ちゃんぽくない?と、心中ちょっとご満悦
キモイ
七海の言葉に顔色を失くす優
って、前に言ったのも謝る
七海、うつむいて前髪で表情を隠して、小さな声で言う
15年ぶりにおにぃに会うのがなんだか照れくさくって、酷いこといっちゃった
七海・・・
優、七海の言葉に感動し、口元に手を当ててうるうるしちゃう
七海、そんな優を見て
おにぃがキモイんじゃなくて、その、オネエキャラが、慣れなくて、ちょっとキモイ…
やっぱりキモイんじゃない!
ひどい!と涙目で嘆く優を見て、七海なんだか笑ってしまう


お兄ちゃんが、火事のショックが原因で、お父さんのことも、お母さんのことも、記憶をなくしていたから、「自然に思い出すまではおにぃと会わないでおこうね」と、おばあちゃんと約束をして15年がたった
その間に、おばあちゃんがなくなって、お兄ちゃんは大蔵家に引き取られていった。
それからのお兄ちゃんのことは、時々雑誌で見ていたけど、かっこよくてクールな写真を見ると、ほんとにわたしのお兄ちゃんなのかなあと、不思議に思えた。
15年ぶりに再会した、たった一人のお兄ちゃんが、手の届かないような、完璧すぎるカリスマモデルなんかじゃなくて良かったって、実は七海は思っていた。
だって、お兄ちゃんは昔から、男のくせに、妹のあたしより、ずっと泣き虫だったんだから
久しぶりに会ったお兄ちゃんは、立派に仕事もしてるし、わたしのこともあれこれ心配してくれる「大人」になっていたけど、やっぱりすぐに涙目になっちゃうような、わたしが憶えているお兄ちゃんだった
だからあたしも、昔みたいに、「おにぃ」って呼べるようになったんだ