フジテレビ火曜9時ドラマ『アタシんちの男子』を楽しみましょう!!
ドラマは感動のうちに幕を閉じましたが、まだまだ『アタ男』熱は冷めません。
終了したドラマなのでネタバレ含みます。ご承知おきください
『アタシんちの男子』をこれから見る方、ストーリー、次回予告、登場人物をお探しの方は、
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アタシんちの男子のその後を考えよう

おばあちゃんの贈り物・その2です
昨日、前の話と一緒にメール投稿しようと思ったら、携帯の容量超えてて送れなかったので、帰宅してパソコンから(笑)
書きたかったお話なのに、うまくいかないのが悲しいけど、仕方ないさ。実力不足なんだから_φ(- -*)
誤字脱字訂正入ります
いつも中途半端なの上げてすみません




トランクを開けた優の目が、一番最初に捉えたのは写真。
パパとママとおにぃとわたし
七海が笑う
優、退色し、少し淡い色調になった家族写真を手にとって見る
優の後ろにいた千里と智、写真を覗きこむ
やさしそうなお母さん
千里が写真を見てつぶやく
お父さん、優に似てるな
智が微笑む
どれ?
風と翔もそばに寄ってきたので、優、写真を渡す。明や猛も写真を回し見


優、トランクの中をもう一度見る
優が万年筆を見つけて手に取ると、
パパの大事にしていたモンブランのマイスターシュテュック
七海がそばに来て解説
コンパクトを手に取ると、
ママが使っていたおしろい。いいにおいがするの
優、匂いをかいでみると、甘く懐かしい、昔の化粧品のにおいがする
白とオレンジのブロックチェックの小さなTシャツ
おにぃが小さい頃、すごく気に入ってたんだって。洗濯が乾くのも待てずに着てたって、おばあちゃんが言ってた
優、Tシャツを広げてみる。今も優が好きなオレンジ色。
かわいい絵柄のハードカバーの絵本
ママが、寝る前にわたしたちに読み聞かせてくれた、大好きだった冒険のお話
優ぱらぱらとページをまくると、挿絵にかすかな記憶が動く
未開封の缶ビール
パパは、お仕事が終わると、おにぃとわたしを膝に入れて、ビールを飲むのが好きだったんだって
懐かしい色合いのラベルの缶をながめる優
優の周りの卓上には、トランクから出てきたいろんなものが広げられていく。
「それからこれはね…」と、七海はさまざまなものを取り出して、優に説明をする
兄弟も、優の後ろで興味深げに覗き込んでいる
ねえ、七海。この中に入っているのは…?
優が我慢できずに七海の説明をさえぎる
七海、優に穏やかに笑いかける
これは、わたしたちの思い出の宝箱
思い出?
火事で思い出の品が、なにもかもなくなっちゃったわたしたちのために、おばあちゃんが一生懸命、記憶をたどって、手元にあった物をまとめたり、同じものを買い求めてくれたりしたの
七海、お母さんのコンパクトを手に取り、
わたしに会いに来てくれる度に、おばあちゃんはこういう宝物を置いていってくれた。優とおそろいだよって、優しく笑いながら
七海、トランクに手を添えて、
だから、これと同じ宝箱を、わたしも持ってるの


トランクに、いつ渡せるかわらない相手を思って、贈り物を詰めるなんて、親父がやりそうなことだよな
千里の耳が、翔の独り言を捉える
反射的に声のするほうを見た千里と目が会ってしまった翔、自分の独り言を聞かれたことに気づき、口元ゆがめ、照れを隠して苦笑い
新造さんが力に用意した、誕生日プレゼントのトランクを思い出すね
千里が翔に優しい笑顔を向ける
翔、他の兄弟にばれるのが恥ずかしいので、声には出さずに、口パクで、「俺も同じことを考えてた」と千里に伝える


おばあちゃんがお兄ちゃんを引き取って、5年目、おばあちゃんの体に癌が見つかったの。
うん。悲しかった
わたしは10歳だったから、そのことは後で聞いたんだけど。再発だったから、おばあちゃんは覚悟してたんだって
僕も、病気の細かいことは、後で新造さんに教えてもらった
わたしたち、小さかったからね
うん
ある日ね、いつものようにおばあちゃんが訪ねて来てくれたの。おばあちゃん、ちょっと痩せてたけど、いつもみたいにたくさん笑って、たくさん話をしてくれた。
一度言葉を切って、唇を結ぶ七海を見て、優も、おばあちゃんが亡くなったときを思い出し、ちょっとつらくなる。
…でもそのときは、いつもと違うことをあたしに言ったの


おばあちゃんはお兄ちゃんのことをすごく心配していた。お兄ちゃんが、いつかすべてのことを思い出して、お父さんとお母さんが死んだのは自分のせいだって、自分自身を責めやしないかって。
七海、淋しそうに首を傾げると「あたしの前で、そういう話をしたの、その時が初めてだった」と呟く
優、トランクの中に、少し汚れた白くまのぬいぐるみを見つける
さっきの家族写真で、小さい優が抱いていたものと同じ
優の脳裏に、火事の記憶がフラッシュバックする。燃え盛る炎の中、白くまのぬいぐるみを抱いて「パパー!ママー!」と叫ぶ男の子。男の子は7歳の優
優の顔が曇る
七海、優の変化に気づいたが、そのまま話を続ける。おばあちゃんの口調を思い出しながら


もしも、もしもだよ七海
優が、お父さんとお母さんのことを知る時がきたら、話してあげてくれないか?
おばあちゃん、頑張って長生きするけど、もしも死んじゃったら、あとは七海に頼みたいんだ


わたしは、「うん いいよ」って、軽い気持ちでうなずいた。そんな日が来るなんて想像もしてなかったから。
うつむく七海。長い髪がさらさらと肩から落ちる
おばあちゃんが亡くなって、お兄ちゃんは大蔵家に引き取られていった。
七海、落ちて来た髪を耳にかける
わたしは、「優が自分で火事のことを思い出すまでは、会わないでおこうね」って、子どもの頃、おばあちゃんとした約束をそのまま守ってた
うつむいていた目を上げて、七海は優の顔を見る
大蔵家のお父さんが、お兄ちゃんをわたしのところに連れてきてくれたんだから、もう、おばあちゃんの伝言を伝えてもいいよね。―――ずっと昔に聞いたことだから、うまく言えるか、わかんないけど
と七海は前置きして、ゆっくりとおばあちゃんの言葉を再現し始めた。


お前たちのお父さんは、わたしの自慢の子どもだよ
お前たちのお母さんも、すごくやさしい人だった
お前たちも、胸張って、自慢していい両親だよ
七海は、小さくて二人のことをよく憶えていないだろうから、わたしの話すことを、よーく憶えておくんだよ
そしていつか、優に話してあげておくれ
両親が救ってくれた優の命は、2人にとって、自分たちの命を引換にしてもいいと思えるくらい、大事な大事なものだったんだよ
お前たちの両親は、命を粗末にするような人間じゃない
優を助け出して、またみんなで暮していきたいと思ったからこそ、迷わず火の中に飛び込めたんだ
それがかなわなかったことは不運だったけど、お父さんもお母さんも、優の犠牲になるつもりで命を捨てたわけじゃないんだよ
大事な優を守るために、大事な優の命をつなげるためにって、自分達の命をかけて、お前を救い出したんだ。
優、お前は、そうやってつなげてくれた命を、お父さんとお母さんの分まで、大事にしなくちゃいけないよ
七海、小さいのに両親の死を体験してしまったお前も、本当にかわいそうだった。
でも、両親が命がけで教えてくれた「家族を大事にする」ってことを、お前も忘れてはいけないよ
そういう両親を持つことが出来たお前たちは、普通の子よりも、寂しい思いもしたけど、それだけ強く、優しく、生きていけるはずだから


懐かしいおばあちゃんの顔が浮かんで、優の瞳が揺れる
やっぱり。おばあちゃんみたいにうまくいえないな
七海は長い髪をくしゃくしゃとかいて顔をしかめる。


おばあちゃんが言ってたことを、わたし風に言うとね
七海、唇をちょっとかんで、優を正面から見つめる
優、七海の真剣さに押されて、自分でも意識せずに椅子から立ち上がっていた。


「おにぃ」と七海が独特の呼びかけをする
おばあちゃんが高校の先生だったことは知ってるよね
うん。新造さんの先生だったって聞いてる
わたしたちの、お父さんもお母さんも、先生だったんだよ
…それは、知らなかった



学校の先生は、勉強を教えてくれるだけじゃなくて、人としてよりよく生きるためのアドバイスもしてくれる。―――それが先生の仕事だから。
倫理的に良しとされてることや、建前をそのまま言っている先生だって、なかにはいる。
でも、実際に、先生自身が、人間として選択を迫られたとき、そのとおりに出来る人って、どのくらいいるんだろうなって、わたしは思うの。
おにぃ。わたしたちの親は口先ばっかりのきれい事じゃなく、本当に、子どものために命を投げだせる人だったんだよ。
それってすごいことだって思わない?
お兄ちゃんは、自分を責める必要はない
お兄ちゃんの命は、それだけ二人にとってかけがえのないものだったんだよ
お兄ちゃんの命は、それだけ価値があるものだって、自信を持って欲しい
お兄ちゃんには、二人に恥じない、すばらしい人生を送って欲しい
おばあちゃんは、おにぃに、そういいたかったんだと思うの


七海、優の目を見つめて、うんと強くうなずく


わたしも、そんな二人の子どもだって、大いばりでいえるようになるから
七海、一度下を向いて、もう一度優の顔を見つめなおす。強い決意の表情で
おにぃ、わたし、先生になるの。おばあちゃんや、パパや、ママみたいな先生になりたいの


七海、宣言しながらちょっと涙ぐんでしまい鼻をすする
子どもの頃みたいに、パパ、ママと呼んでる自分に照れちゃって、少し明るい調子で話を続ける七海


そのトランクの中に、一個だけ、あたしが入れたものがあるの
え?
おばあちゃんの日記。おにぃに宛てた言葉がいっぱい書いてある
優の手がトランクの中の皮表紙のノートに触れる
わたしは、おばあちゃんみたいに、上手に話せないから、それを読んでほしいの。…おにぃとおばあちゃんが暮らした5年分。全部、大事にとっておいたから。…おにぃに、いつでも、見せて上げられるように


わたし、これから何度も何度も、おにぃに会いに来るよ
そして、思い出せる限りのことを、おにぃに話してあげる。―――おばあちゃんが、あたしにしてくれたみたいに
七海…
優、今日はオネエキャラじゃなくて、真っ直ぐ両腕を下ろし、拳を握って、涙をこらえている
涙がこぼれそうになると、その拳でぐいぐいと強くまぶたをこする
まるで小さな子どもみたいな泣き方
おにぃは昔っから、男のくせに、あたしよりずっと泣き虫なんだから
七海、涙をごまかすように、自分の鼻先にちょっと触れ、優を見てニコニコ笑う
そんなこと言わないでよー
と涙で揺れる声で文句を言いながら、優もいつしか泣き笑い




七海ちゃんのおばあちゃんは、新造さんみたいな人だったんだね
カウンターに寄りかかって、七海と優を見ていた千里がつぶやく
違うな
と風が隣にやってくる
風の顔を見上げる千里
風は、千里と並んでカウンターに寄りかかり、優と七海を見て言う



親父が、恩師だった優と七海ちゃんのおばあさんに、教えてもらったんだと思うよ。―――家族を思う気持ちの、すばらしさを
そして、自分が伝えたかったことを、きちんと教えることが出来たと思ったから、先生である優のおばあさんは、生徒であるうちの親父に、大事な孫の優を託したんだ



優しい目をした風が、ゆっくりと穏やかに、千里や兄弟にとって、とても大切なことを話してくれている。
千里は、その声や表情に、風の中に新造さんがいるみたい、と思う
風の言葉は、そばにいた兄弟たちにもにも届いていた



新造さんは、あたしたちに、この城を、遺してくれたんだね。あの、トランクみたいに
千里の言葉に顔を見合わせる兄弟たち
なんとなく照れくさくて、お互いに視線を外して、それぞれの思いに微笑む


千里、「トリックハート城に詰め込まれた宝物って、なんだろう」って考える


当たり前のものを当たり前に思わないようにとちりばめられた仕掛けの数々
兄弟で一緒に謎解きして現れる隠し部屋
みんなで実現していく母親10か条
その先にあるのは、新造さんの残してくれたミラクルストーリー
そして、いつも、家族が集まるリビング


千里、兄弟のいるリビングを見る。
そこには、それぞれの思いで、優を見守っている兄弟たちがいる




トリックハート城に詰め込まれた宝物って、
誰か一人かけても、物足りなく感じてしまう、大事な大事な、あたしの家族なんだろうね