フジテレビ火曜9時ドラマ『アタシんちの男子』を楽しみましょう!!
ドラマは感動のうちに幕を閉じましたが、まだまだ『アタ男』熱は冷めません。
終了したドラマなのでネタバレ含みます。ご承知おきください
『アタシんちの男子』をこれから見る方、ストーリー、次回予告、登場人物をお探しの方は、
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『続きシリーズ』『その後シリーズ』など、お話を読まれる方は、
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アタシんちの男子のその後を考えよう

家族揃って・その3


地味ですが、これで最後です
最後の最後も往生際悪く、誤字脱字加筆修正ありますのご案内(笑)
よろしかったら続きをどうぞ




食事が終わった兄弟


あいつの荷物、開けてみたのか?
あ、そうだね
千里がカッターで太郎の荷物を開封

段ボール箱の中には、
まずファイルが1冊
千里が取り出して風に渡す
風、ファイルを開いて、一ページ目のミラクル翻訳機を確認して微笑む


箱の中の緩衝材に包まれたおもちゃに気づく翔
これが、新造さんの発明品・第1号
千里、取り出して翔に渡す
翔、緩衝材を外して出てきたおもちゃを智に渡す
智の両脇から、猛と明が顔を出す
レンガくらいの大きさ
白いボディに、マイク、スピーカー、ランプ、赤いツマミと青いスイッチ、シルバーの縁取り
あ、新造さんらしいデザイン
優、笑顔
どうやって使うんだ?
翔が風を見る
俺たちも話を聞いただけで、実際に動かしてはいないんだけど


あれ、もう一包みある
千里が緩衝材に包まれた包みを取り出す
受け取った翔があけると、中から出てきたのは


ハイパワーボイス!


あいついつの間にくすねてやがったんだ?
まったく、油断も隙もねー
あ、でもさー。これがあるってことは、たぶん、こういうことだろ
翔、ハイパワーボイスの再生ボタンをON


聞こえてきたのは新造の声

ミラクル翻訳機


これはね、このマイクで拾った音を、たちまち気持ちに翻訳してくれるんだ。
すごいだろ?
翻訳できるのは、動物、虫、鳥、機械、人…、いろんなものの音を言葉に翻訳できる
たとえば、君は、赤ちゃんのお兄ちゃんだ
夕方、ママがご飯の仕度で忙しくて、パパもまだ会社か帰ってこない
赤ちゃんがわんわん泣いている
お兄ちゃんは、赤ちゃんが何で泣いているのか、わからない
そこでこの、ミラクル翻訳機の出番だ
こっちのツマミで、「赤ちゃん」をえらぶ
そしてこのマイクで赤ちゃんの声を拾う
赤ちゃんはなんていったかな?
お兄ちゃんは、赤ちゃんの気持ちがわかって、たちまち問題解決だ!


でも、お兄ちゃんは、そのうち、赤ちゃんの泣き声が、機械の答えと違うみたいって思えてくる
自分のほうが、うちの赤ちゃんに詳しいなって思えてくる
そうしたら、このノートの登場だ。今度は、お兄ちゃんが、自分で赤ちゃんの泣き方を研究する


おなかが減ってるのかな?
もしかして、オムツが気持ち悪いのかな?
ママがいなくて、淋しいのかな?
頬擦りするパパのお髭が、痛いのかな?
おにいちゃんが遊んでくれて、うれしいのかな?


きっと、お兄ちゃんが研究した、赤ちゃんの言葉で、ノートはいっぱいになる
そんな風に、お兄ちゃん専用の「赤ちゃん語翻訳辞典」を作ってって欲しいんだ…


懐かしい新造の声が、リビングに響く
誰も何も言わないけれど、そのお兄ちゃんと赤ちゃんは、風と千里のことなんだろうなと、兄弟には自然に思えた
風と千里も、黙って聞いている
太郎が『発明の部屋で』話してくれたことと同じ内容だけど、新造さんの声で聞くと、その想いが一段と心にしみるみたいと千里は思う
新造さんがそばにいないことを辛く思う気持ちよりも、ただ姿が見えなくなっただけで、今も、大きな愛情で、あたしたちを包んでいてくれてるんだと、温かい気持ちが満ちてきた。


新造さんは、自分の発明品が、こんな風に使われることを、想像していたんだろうか
こんな素敵な発明品を作った新造さんは、やっぱりあたしたち家族にとって、魔法使いみたいな人なんだね
新造がかけた幸せな魔法で満ちているようなリビングを、千里はゆっくりと見回す


翔が箱の中の封筒に気づく
中には、手紙と数枚の写真
翔が手紙を読み上げる

大蔵家の皆さんに何か御礼をしたいと思い、記憶をひっくり返して名演技をして見ました。どうでしたか?

太郎の明るい笑顔が見えるみたい、と千里は思う


しゃらくせーこと、しやがるな、あの関西弁
猛が、いつものごとく、悪態をつく
使ってみようか
どうする?
智と優が顔を見合わせる
とっておかない?
明の声に、兄弟、首を傾げる
僕たちの誰かに、子どもができたら、使ってみようよ。
ナイス明!
智が明の頭をくしゃくしゃと撫でる
きっと僕たち、夢中で面倒見ちゃうだろうね
優、明の肩を抱く
それまで、大事にしまっておくか
翔、明にハイタッチするように右手を差し出す
うん
明、頷いて、翔の右手をパチンと叩く
おめーも、ガキのクセに、しゃらくせーこと、考えやがってよ!
猛、わざと不機嫌な顔を作って、明の鼻を摘む

同封した写真は、この間お邪魔したときの、記念写真です
加工が出来ないフィルム写真は、きっといい思い出になると思います
会社が落ち着いたら、また、遊びに行きます
そのときはよろしく

太郎

翔、封筒の中から写真を取り出す
太郎が古いカメラで撮った写真が何枚かある
記念写真、か
ぱらぱらと見た翔、その写真を封筒と重ねてデスクに置く


俺、そろそろ、行って来るわ
翔、ミラクル翻訳機を見ている兄弟に声をかける
うん、気をつけてね
千里が片手を上げる
明日は休みだから、羽根を伸ばしてきていいぞ
風、笑顔で翔を指差す
サンキュー
翔、敬礼でお返事
そいじゃ
リビングのみんなに手を振り、足早にリビングを出て行く翔
よっぽど楽しみなんだねー
と後姿を見送る千里
なんか慌ててない?
明が首をかしげる


あー!ずるい、ずるいー!!
どさくさにまぎれて、何やってんだよー!!
記念写真を見て、優と智が声を上げる


何?
なんだなんだ?
猛と明が、二人の脇から写真を覗きこむ
記念写真を見た猛と明、楽しげに目を見開く


その表情を見て、風もめずらしく野次馬。
背が高いから優と智の頭越しに、手元の写真を覗き込む
記念写真を見た風、「ほぉー」と、目を細めて小さくうなずく


どうしたの?
首を傾げる千里


あいつ、逃げたな?
猛ニヤニヤ
だね
明も笑ってる
抜け駆けはだめって、この前、きつーく言ったばっかりなのに
優、すね顔
あいつ、まだ懲りてないらしいな
智、不機嫌そうに唇をゆがめる
まだ遠くにはいってないな
風、腕組み
追いますか〜!
おー!!!!!


え!?
びっくりする千里を置いて、鬨の声上げてリビングをかけだす兄弟たち


兄弟が駆け出した後に、数枚のキャビネ版の写真が落ちている
千里が拾うと、それは、太郎が撮った、記念写真
新造の肖像画の前で、椅子に座った千里の後ろに兄弟が並んでいる
左から、風、猛、翔、優、智、明
少しずつ、表情やポーズが違ってる


さりげなく立って、ポケットに手を入れてるだけなのに、きまってる風
特攻服を際立たせるように上着を捌いて、ニッカのポケットに手を入れてる猛
片手を腰に当て、長い足を遊ばせれてる翔
ジャケットさばきも美しく、さすがの立ち姿なのは、職業・モデルの優
智、カラフルパーカーのポケットに左手を入れて、右手は明の肩越しにピース
明は、いつもの平板口調と同じみたいに、あっさりとたっている
あ!これか〜
千里、一枚写真を手にとって、ピン、と指で弾く
写真の中央に座っている千里の椅子の背に、翔が手を置いている写真
見ようによっては、意味があるようにも見えるけど、翔なら普通にしそうな行動
小鹿な千里もそんなにドキドキしないレベル


ってことは、
結局みんなで騒ぎたいだけなんだよね
兄弟がドタバタと駆け出してったリビングで、ひとりでくすくす笑い出す千里


と、地鳴りのような足音が近づいてくる
兄弟の追っかけっこの舞台は再びリビングへ
最初に翔が駆け込んできて、続いて兄弟が一団となりとなだれ込んでくる


千里、デスクに陣取って、兄弟のおっかけっこをニコニコ観戦
何、へらへら笑ってんだよ
猛が千里の表情に気づく
なんだよ
なんか、やっぱ家族っていいなあって、思って
…ちいせぇ感動だな
猛、片眉上げてにやりと笑う
千里、照れ笑い


猛、捕まえて!
よしきた!
猛も再び追っかけっこに参戦する


翔、早く行かないと、遅刻するよー
千里が翔に声をかける
この状況でいうなよ!行けるもんならとっくに行ってる
翔、もう一度リビング脱出にチャレンジ
追っかけっこは、またまたリビングの外へ展開


リビングから喧騒は去ったけれども、そこには今しがたの楽しい気配が充満している
太郎さんに思い出のスイッチに話をしたとき、ちょっと大袈裟かなと思ったけれど、ドタバタけんかするみんなの声が、今にも聞こえてきそうなリビングを見ていると、
やっぱり、自分の中の思い出をつむぎだす糸口、思い出のスイッチはいろんなところにあるんだって思えてくる


でも、太郎さんが言っていたみたいに、色濃い思い出を残している品物も確かにある
太郎さんにとっての新造さんの発明品
七海ちゃんのおばあちゃんのトランク
あたしたちにとってのトリックハート城


千里、デスクの上の上のミラクル翻訳機を手に取る
これを手に取れば、あたしはきっと新造さんとお母さんと、2人の話をしてくれた太郎さんを思い出す
思い出の少ないあたしたちに、新造さんの思いを伝えてくれたメッセンジャー
もう増えないと思っていた新造さんの思い出が、また1つ増えた
このお城は、ひみつがいっぱいだから、いつかまた、こんなうれしい驚きもあるかもしれないと、千里は微笑む


リビングでミラクル翻訳機を使ったら、どうなるかな
千里、リビングの空間に向けて、スイッチを押すが、無音の空間なので翻訳はできない
そりゃそうだよね〜
と千里、笑う
さっきみたいな兄弟喧嘩にミラクル翻訳機を使ったら、楽しいだろうな
みんな、気に入らない、大っ嫌いって騒ぎながら、ドタバタ立ててる足音を
翻訳機はきっと、「楽しい」「うれしい」って翻訳するに決まってる
それを聞いたみんなはきっと、全力で否定するだろうけど
千里、その光景を想像してみて、思わず笑顔


でもこれは、いつか大蔵家にやってくる赤ちゃんのためにとって置くんだよね
千里、ミラクル翻訳機を、ハイパワーボイスと並べてデスクの引き出しに大事にしまう


静かになったリビングで、千里は再び記念写真を手にする


これは、初めての家族写真だからね
千里、デスクのアルバムを開き、続きのページに、太郎が写した記念写真を、一枚一枚、丁寧に貼りつける


もっともっと、家族の写真が増えるといいな


そう願いながら、千里は笑顔でアルバムを閉じる


リビングを見渡せば、笑顔の記憶があちこちにある


新造さんは、本当に魔法の粉を発明したのかもしれないね