フジテレビ火曜9時ドラマ『アタシんちの男子』を楽しみましょう!!
ドラマは感動のうちに幕を閉じましたが、まだまだ『アタ男』熱は冷めません。
終了したドラマなのでネタバレ含みます。ご承知おきください
『アタシんちの男子』をこれから見る方、ストーリー、次回予告、登場人物をお探しの方は、
「はじめに」「まとめ」のカテゴリーからどうぞ
『続きシリーズ』『その後シリーズ』など、お話を読まれる方は、
「目次」のカテゴリーからどうぞ

アタシんちの男子のその後を考えよう

続きです


まとまらないけど、まあ、ご容赦ください
あと1〜2話で終われるかな?

誤字脱字、加筆訂正あります
いつもすみません


リビングに戻る風と千里


兄弟、デスクの周りに集まって卓上を覗き込んでいる
何してんのかな?と首をかしげる千里
あれ、響子さん
いつからいたのか、デスクの脇に響子が立っていた
お邪魔しております
響子、微笑んで会釈。今日もきれいなスーツ姿
いらっしゃい
おぉ、ちびっ子、あいつはどうした?
太郎さんは、みんなと記念写真撮りたいって、車にカメラを持ちに行った
んだよ、立ち直り早えーなー
猛、片眉上げて、大げさに唇をひん曲げる
おい、風、あと、お前だけだぞ
翔が、風を呼ぶ
おお
風、片手を上げて返事をし、デスクに向かう

千里、風の背中を不思議そうに見る。あれ?あたしと一緒に「発明の部屋」にいたのに、風は、みんなが何をやってるのか、知っているのかな?


風、響子のそばで立ち止まる
響子さん、ありがとう。
いえ
お礼するから、今度のデート、期待しててねー
風が響子に耳打ち
まぁ
うつむいて、頬染める響子さん
いちゃつくんなら、よそでやりやがれ!
猛、苦々しい顔
相手もいない奴に言われたくないねー
風、猛の嫌味なんかどこ吹く風
んだと、こらあ!
風に詰め寄る猛
事実じゃん
猛に冷静なツッコミを入れるその声は…?


明!起きてたの
千里、びっくり
起こされたんだよ
迷惑そうな声の明
大丈夫ー?あ、起きたんなら、歯磨きしようね
わかってるよ




カメラを首から提げて、階段を一段越しで駆け上ってくる太郎
足取り軽やかにあっという間にリビングの廊下に到着


あれ?
太郎、廊下の隅に転がっているあるものに気づく
足を止めてた太郎が拾い上げたものは、ハイパワー探知機
もちろん真っ先につまみを確認する太郎
これを使われたら、勝ち目ないわー
太郎、苦笑い
はー
天を仰いで大きなため息
バチが当たったかなー
片目を瞑って、顔半分をくしゃっと歪める
俺の自分勝手で、発明品賭けたり、千里ちゃん閉じ込めたり、みんなを振り回しちゃったから
壁に寄りかかり、難しい顔してハイパワー探知機のをしげしげと眺める
発明品と千里ちゃんに仕返しされちゃったってことかな
太郎、自嘲気味に笑う


あ、
太郎、再び上を向く
視線の先は、天井の、そのまた上の、まだまだ上。空も超えて、宇宙も超えた、たぶん新造さんがいる天国の辺り
新造さん、もしかして見とった?
みんなが千里ちゃんを早く見つけられるようにして、俺に話す時間を作ってくれたんかな
みんなとケンカしたまま別れないように。
ちゃんと仲直りして、帰るようにって
太郎、耳を澄ますように目を閉じるけど、新造の声は聞こえない
それでも新造の気配に触れたような気がして、太郎の表情は、嬉しそうな笑顔に変わる


やっぱ最後は、笑顔でないとあかんな


太郎、バトンみたいに探知機振って、肩に担いでリビングへ




では、わたくしは、そろそろ失礼します
え、響子さん、もう帰っちゃうの?
千里が残念そうな声
夜更かしは、美容の大敵ですから
響子本人は冗談を言っているつもりなのに、眉間に皺を寄せてそんなこと言われても、傍から見たら、いたってまじめに答えてるようにしか聞こえない
兄弟、千里、苦笑いでうなずくしかない
そういうところが、不器用でかわいいところなんだよねー
と微笑む風の隣で、「気が知れねーな」とつぶやく猛


首からカメラをぶら下げ、肩に探知機を担いだ太郎がリビングの階段を下りてくる
あ、弁護士さん
太郎がリビングに帰ってくる
こんばんは。大阪に帰られるとか
はい、今週
そうでしたか。お気をつけて
あ、コレクションのファイルに、一部、差し替えが出たので、後でお送りします
かしこまりました。…差し替えですか?
響子、風を振り返る
風と千里、顔を見合わせニコニコ
響子、首をかしげる
ま、書類が着いたら、わかることですからね
「それでは」と響子
兄弟と千里にはビシッと、
太郎には艶然と、
風にははにかみの、
三種類の微笑を使い分けて会釈をし、リビングを後にする
おやすみなさーい
と手を振る千里
おもろいなー、あの美人弁護士
響子の去った方角をニコニコ見送る太郎


太郎さん、何持ってんの?
明が太郎の肩を指差す
うん、廊下で拾ったん
だから何だって聞いてんだよ?
智、勿体つけてる太郎にイライラ
みんなが余裕勝ちだったから、おかしーと思ったんや

千里と兄弟、太郎に注目
これを使われたら、勝たれへんわー
背中に背負った日本刀を抜くみたいな動きで、太郎が振りかざしたのはハイパワー探知機
新造さんと、愛の力に負けたってことやな
太郎、残念そうな気配はなく、むしろ楽しそう
お〜!いけいけ、関西弁!!
太郎を見てわくわくしている猛
翔を見て、ニコニコ笑う太郎
翔、2人の表情にいやーな予感
太郎、翔に探知機を投げる
ナイスコントロールで翔の胸元へ
翔、真正面に飛んできたので避けきれず、うっかりキャッチしてしまうと、やっぱりリビングに響き渡る警報音
あ、この音?
聞き覚えのある音に首をかしげる優と智
風、千里発見時に響いていた警報音の正体を理解し、大量に苦虫噛み潰したような表情で、じろりと翔を見る
探知機のスペックを知っている千里、びっくり眼で固まっている
どうしたの?大丈夫?
明、千里のパーカーのすそを引いて意識の有無を確かめている
こ、こんなうるせーもん、持ってくるんじゃねーよ
翔、あわててバーカウンターに走り、カウンターの向こう側、一番奥に探知機を放り込む
ぴたりとやむ音
千里、探知機の反応に、またも固まる


冷静に、冷静に
千里、今の一連の流れを頭の中で検証
ハイパワー探知機を千里探しに使ったということを太郎は言っているらしい
実際、発明の部屋で千里も今の警報音を聞いた
ハイパワー探知機の目盛りは、人、サル、鍵、ネコ、リモコン、水、携帯電話、犬、財布、食べ物、それから…
探知機の赤いつまみの文字を、右回りに頭の中で追うんだけど、どうしても同じところで思考停止してしまう
頭の中にその文字が浮かぶたびに、千里の鼓動が跳ね上がる
もう〜
赤くなる顔を隠すように頬に両手を当て、俯く千里


隣で千里のひとり百面相を眺めていた明
だいたいわかったよ
納得したようにうなずく
え?なに?
明の言葉に、驚く千里
明、笑顔
小鹿な千里の戸惑いは、中1の明にもわかっちゃうみたい



やっぱり首をかしげてる智
翔、何投げたんだ?
解けない疑問に唇尖らせている優
見に行こ
うん
二人でカウンターを覗きに行く
ちょーっと待ったー
翔、あわてて2人の間に入り、両手で肩を抱いて
「今、大事な問題は、こっちだろー?」と、笑顔でデスクに引っ張っていく
離せ、バカ。お前、ぜってー、なんか隠してるだろ
その笑顔、怪しすぎるんだけど
もがく智と優
風、お前もさっさと書けよ
仏頂面で翔をにらみつけている風に、手がふさがってるので、顎で指示する翔
はいはい
やる気ない仕草で応じる風
風さん、筆はここにあるよ
明がデスクに駆けて行く


んだよ、もりあがんねーなー
修羅場を楽しみにしていた猛、つまらななそう
ほんまになー
猛の隣に太郎が来る
おめーと意見が合うとはな
猛、太郎を見てニヤニヤ
あの様子から見て、ハイパワー探知機ひらめいたの、翔じゃないね
当然!
猛、ビシッと親指で自分のことを指してキメ顔
えー!!
なんだよ、その驚き
猛、むっとして、唇ひん曲げる
ごめんごめん。発明品に興味なさそうやったから
この手は、温泉掘削でつるはし振るった俺にしかひらめかねーんだよ
温泉掘削?
おう、ちびっこがな、ホームレスのために一山当てようと、温泉掘削したんだよ
そりゃまた、突飛な。しかも人のためって
どーしよーもねーだろー、あのおせっかいは、病気だ!
巻き込まれてる猛さんも、相当、お人好しやて
うるせーよ!!一番の被害者は俺だぞ!?ちびっこが、温泉も水だからって、水のツマミで探知機使ったもんだから、水道管破って、俺だけ水浸しになったんだからな
あはははは
あははじゃねーよ!
猛、太郎の頭を張る
いったー!暴力反対!!
太郎、猛を睨んで頭をさする
監禁野郎がなに行ってやがる
監禁やなくて、幽閉やってば


猛と太郎、兄弟が集まっているデスクから、ちょっと離れている千里を見る
千里、兄弟に背を向けて、上気した顔を冷ますように扇いでいる


かわいーよなー
太郎、思わず呟く
ちびっこも、無自覚ってわけじゃねーんだ
猛も思わす笑顔。もちろん、かわいいとは口が裂けても言わないけれど
どっちかってーと、あいつがもたもたしてるほうが、問題だな。
猛、忌々しそうに翔を見て、
俺様のスーパーアシスト、無駄にしやがって
とブツブツ言いながら腕組み。
さっさと息の根止めてくれれば、みんな楽になるのに
と太郎も猛のまねして腕組みをする
でなきゃ俺ら、いつまでも、千里ちゃんのことあきらめられないじゃん?
バーカ!俺の楽しみを、奪うんじゃねーよ
猛、太郎の肩を叩く
猛さん、どっちの味方?
俺は、色恋沙汰より、派手な兄弟喧嘩が見てーんだよ
猛、楽しそうに、にやりと笑う


何とか落ち着いた千里、兄弟の集まっているデスクを覗き込む
何、書いてるの?
ん?
風、手にしていた筆を置くと
これか?
と、紙を押さえていた文鎮を外す

千里、首を傾げる
はい、みんな集合ー!
風、離れて話していた猛と太郎も手招きで呼ぶ
兄弟、急いで風の横に並んで、風の顔を見てうなずく
全員がデスクの前に集まったのを確認し、風、手元の紙を両手で持ち上げる
あ、巻物!
風が広げたのはただの紙でなく、きちんと表装が施されていることに驚く千里
風、コホンと咳払い


『誓約書。大蔵新造の遺産に関するすべてのことは、遺族と家長との協議の上、判断するものとする』


風、本文を読み上げて、にっこり笑う
千里、太郎、驚いて顔を見合わせる
兄弟、二人の様子を見て笑顔


長男 大蔵風
次男 大蔵猛
三男 大蔵翔
四男 大蔵優
五男 大蔵智
六男 大蔵明 


それぞれの名前は本人が読み上げて宣誓
「以上」と風が最後の締めをする
読み上げた紙をひっくり返して、文面を披露
そばに寄って見る千里と太郎
そこには、毛筆で今読み上げた文面と、兄弟が自書した署名が並んでいた


ということで!
風、くるくると巻物を巻いて紐でとめる
風、目を丸くして立っている太郎の胸を、ポンと巻物でたたく
今後は、そういうことで、よろしく
巻物を受け取った太郎、あっけにとられている
なに、これ?
千里が風に問う
風、にっこり笑って太郎を見る
さっき、太郎の話を聞くまではさ、こいつが俺たちに喧嘩売ってきた時の言い草に腹が立って、響子さんに巻物作っといてって頼んどいたんだ
風、肩をすくめる
あ、響子さんに、電話してたね!
千里にうなずく風
でも、誤解が解けた今となっては、これからも、よろしくお付き合いくださいっていう友好条約みたいなもんだ
手元の巻物を見つめる太郎。
ねえ、家長って誰?
と兄弟を見る
風、猛、翔、優、智、明、それぞれいたずらっぽい笑みを浮かべて
家長はこいつ
と、千里を指差す
千里ちゃん?
指差された千里、「まあ、話の流れで、暫定的に…」と苦笑い
そうか…
太郎、深くうなずく


あらためて兄弟に向き直り、巻物を持って、無言で深く一礼する太郎
千里は知らないことだけど、兄弟にけんかを売ったときに、兄弟を怒らせなければならなかった太郎は、方便とはいえ、現在の戸籍どおりにと表現して、遺族に千里を含めなかった
この巻物は、「これからは、遺産について、千里も含めたうえで、万事、話を進める」という、千里を守るための兄弟の宣言。
そのことを、自分がきちんと受け止めたと兄弟に伝えるように、また、目的のためとはいえ、一時的にでも千里に聞かせられないような言葉を使ってしまった謝罪もこめて、太郎はしばらく頭を下げたままでいた
頭を上げない太郎を見て、兄弟は自分たちの意思を太郎がしっかり受け止めてくれたことを知り、満足そうに微笑む


顔を上げた太郎に、風が笑いかける
いつでも親父のコレクションを貸し出すよ。遠慮なく言ってくれ
ありがとう
太郎、うれしそうに笑う


千里、兄弟と太郎の無言のやり取りのをみて、なかみはまったく想像がつかないけれど、兄弟と太郎の間のわだかまりが、ひとつ解けたことが伝わってきて、うれしそうに両者を見つめる


じゃあ、巻物のお返しに、記念写真、撮ります
太郎、肩から提げたカメラをかざす
古!
兄弟驚き
古くはないよ。ほんの1983年のカメラです 
お前より年上だぞ
太郎と同い年の翔が指摘
性能は保証する。並んで並んで


カメラマン太郎、暖炉の前に椅子を置き
千里ちゃんが、真ん中。その後ろに、左から、長男から順に並んでー
兄弟を整列させ、撮影位置まで駆け戻り、画角を決める
絞り、露出、シャッタースピード調節して、左手を上げる
はい、撮りまーす
と兄弟の注目を集め、最後にピントをもうひと絞り調節して、シャッターを切る
機械式のシャッター音
みんな、表情固いよー
一枚撮るのにそんな時間かけられたら、緊張する
風、苦笑い
いまどきマニュアルカメラなんて
優、信じられないという顔
デジカメじゃなくフィルムって
智、ぶつぶつ文句を言う
めんどくさいところがいいんですー
太郎の口答え
理解できない
明も呆れ顔
猛、太郎を呼ぶ
おい、関西弁。記念写真ならお前も入れよ
いいけど、このカメラ、誰か使える?
バーカ!そんな骨董品、誰も使えねーよ
骨董品じゃないよ。今も現役。ニコンFE2。名機なんだよー。大衆機なのにプロユースに耐える…
あーもう、うるさーい!お前の話はクドくて長いんだよ
太郎と猛のやりとりに、兄弟、千里は大爆笑
みんなが笑った拍子に、シャッターを切る太郎
千里、不思議そうに首を傾げる
ねえ、フラッシュいらないの?
いいとこに気づいたね、千里ちゃん。それが明るいレンズのいいところ!!
ダメだ、太郎、カメラのスペックの話に脱線して、写真にならねー
翔、おなか抱えて笑う
明、この状況を解決する方法を提案
携帯でいいじゃん。みんなで撮って、交換しよ
ナイス明!
黙って撮られてるのに飽きてた兄弟、拍手喝采


みんなで太郎の周りにたかって勝手に写真を撮りまくる
2人だったり、3人だったり、7人だったり
にぎやかにシャッター音があちこちで鳴る
あ、俺、お世話になった井上さんとツーショット撮りたい
撮っとけ撮っとけ
あれこそトリックハート城にしか、生息してねーぞ!
じゃあ、呼ぼう。せーの!
井上さーん!!!!!!!!
兄弟、千里、太郎で大合唱


バタンとリビングのドアが開いて、井上さんが仁王立ち
呼びました?
うん。俺とツーショット撮って
え?
太郎、井上さんに駆け寄り、顔を寄せてピース
翔が構える
井上さん、ぎこちない
翔が不思議そうな顔で2人を見ている
な、俺も井上さんと撮る
なんで!?
井上さん、眉間に疑問のしわ
OK
太郎、翔の携帯を預かる
井上さんの隣でポーズつけながら、翔
井上さん、太郎のこと、好きでしょー
とささやく
驚きすぎて開いた口がふさがらない井上さん
シャッター切る太郎
うわ、井上さんの変顔、すげー!レア
どれどれ?
翔も確認
あー、レアだねー
消してください
井上さん、不覚を取られたという表情
翔、俺のに送っていい?
太郎、聞いちゃいない
さっさと翔の携帯から自分の携帯に送信
さんきゅ。
井上さん、自分の変顔がやり取りされてちょっとショック
太郎から翔の携帯電話を奪い、今の写真を消去
携帯を太郎に投げ返し、ご立腹でリビングを出て行く


ねぇ、この写真も貰っていい?
あ?
翔の写真データを勝手に開いている太郎
ばか!
携帯電話を奪い返す翔
ちえーお宝映像だったのに、千里ちゃんの寝顔
翔、無言で太郎を張り倒す
いってー


太郎、自分の携帯チェックして、受信した写真を開く
うわあ!
太郎が大きな声を上げてあわてだす
時間時間!
あ?
3時間たっちゃう!10時になっちゃう!!
んだよ。あの設定時刻は、賭けのためだったんだろ?
「もちろんそうだけど…」と言いよどむ太郎
でも、もしかして、万が一、賭けに勝っちゃったときは、みんなの気が変わらないうちに、発明品を大阪に送っちゃおうと、運送会社の社長に無理言って、トラックの出発、遅らせてもらってるんだよ
は?
兄弟と千里、耳を疑う
あんだって?
あー、そういえば、こいつ、発明品リスト作りながら、全部プチプチで梱包してたよな
してたしてた
あれはそー言う意味だったのかー
要領がいいというか、抜け目ないというか
やっぱり太郎さんは商売人だね
口々に太郎に文句言う兄弟
いや、万が一って、あるじゃん?保険くらいはかけとかないと
太郎、ニコニコ
勝つ気満々じゃねーか
兄弟、総ツッコミ
ばれたか
悪びれずに頭をかく太郎を見て、千里、思わず笑ってしまう


じゃあ、こんなばたばたで申し訳ないけど、発送の確認もあるんで、いきます
太郎、カメラを斜めがけにかけなおし、兄弟に右手を上げる
いろいろお世話になりました
ほんとにばたばただけど、太郎らしくていいんじゃないか?
しんみりすることじゃないしね
お好み焼き、おいしかった
レシピ送るよ
またこいよ
もちろん
きをつけて
うん、それじゃ


にっこりとかわいい笑顔を残して、慌しく駆けて行く太郎の足音が遠ざかる


兄弟、大爆笑
リビングから顔を出し廊下を見るがすでに太郎はいない
外でニ気筒エンジンの音がする


行っちゃったねー
千里、遠ざかるエンジン音に耳を澄ます


いっそがしー奴だな
頭いーんだか、抜けてるんだか
台風一過って感じだね
あー言うのを、浮世離れって、言うのかもしれないな
たしかに
でも、僕、楽しかったよ
明の言葉に、一同うなずく
みんな、笑顔で喋りながら、リビングに戻っていく



猛の足が止まったことに気づいた千里が振り返る
どうしたの?
リビングのフェイクのドアを凝視している猛

立ち止まった千里に気づき、一度、リビングに入った翔も戻ってきた
どした?
うん、猛が、なんか変
千里、猛を指差す
翔も猛を見て、首を傾げる
何やってんだ?
猛の顔を覗き込む翔
なー、翔よ…
ん?
眉間に皺を寄せ、下唇つき出して、思案中の猛
…俺が奇跡を起こしたときに、すでにお前、ここにいたよな
あ?
なんでだ?
いきなりの疑問に戸惑う翔。千里に上げたオルゴールボールが聞こえた気がしたとは、いえなくて
え、まー、そのー、
と、めずらしくしどろもどろになってしまう
猛の疑問に、千里も不思議そうにつぶやく
翔、なんで、ここがわかったの?
千里には説明できるんだけど、猛には死んでも聞かせたくないジレンマに、翔、渋い顔
空気は読めないが、人が嫌がることにはすぐに気づいちゃう猛
あー!それこそ、愛の力って奴ですかー?
猛、からかう気満々の声
ばーか。寝ぼけたこといってんじゃねーぞ
翔、猛の肩を突き飛ばす
いってーなー。何しやがんだよー
おめーが悪いんだろーが!
いがみ合いながらリビングに戻って行く猛と翔
いつもの展開に千里、呆れ顔


入れ違いのように風と明が出てきて
千里、ちょっとその辺ぐるっと散歩しようか
と千里を誘う
は?
千里、意味がわからないと言った顔で風と明を見る
今からリビング、荒れそうだからね


なんだよこれー!
どういうことー!
納得いくように、説明しろよー!!


リビングから、優と智の叫び声がこだまする


なに!?
千里、驚く
男同士の話があるらしいよ
風、ニヤニヤ
なに、それ?
ハイパワー探知機の目盛りを見たんだよ
明の補足説明に千里も固まってしまう


リビングの中はドタバタとやかましい
言い訳しながら逃げる翔を、優と智が追いかけまわしているらしい
猛が、「おー!やれやれー!!」とけしかけている声が聞こえる


千里がいないほうが、思いっきりやれるからさ
風と明、顔を見合わせてにやりと笑い、固まっている千里の両脇から腕を組んで、楽しそうに散歩に繰り出す
明、夜更かしして、明日大丈夫か?
いつまでも、子ども扱いしないでよ
ほんとかなー?


心配そうな顔で振り返る千里をを引っ張って、夜の散歩に出かける三人