アタシんちの男子のその後を考えよう
翔の職場って、どんなでしょうね？
というだけです
脱線の脱線みたいなの、最近多いなあ
おつきあいいただける方は、どうぞ
ホストクラブ
五十嵐の女・白川こずえ が翔を指名
懲りないね〜
そりゃそ〜よ。あたしからこれをとったら、何が残るって言うのよ
組長、元気?
元気よ。あの後、署で油を絞られて、すーぐ帰ってきちゃった。
いやいや、その節はお騒がせしました
あんたたち、被害届けださなかったでしょ
銃刀法違反は?
なんか上手くごまかしたらしいよ
そーでしたか
あの後ね、殴るような人とはもう別れるって、ぼろぼろ泣いて見せたら、あいつ、取り乱しちゃってさー。結局、もとの鞘に納まったわよ
それは何より。そして俺はまたこずえさんにご指名いただけた、と。
まーね
ありがとうございまーす
それにね、あんた相手だったら、あたし絶対ハマらない自信、あるの
ハマってくださいよ〜
うふふふ
相変わらず、アフター付き合ってくれなのはつまんないけど。あんたいい人だからさ、女をつぶすような金の使わせ方、させないし。
楽しんで通ってもらうのが一番だからね
それができてりゃ今頃、この店だけじゃなく歌舞伎町のNo.１ホストになれてるかもしれないのに
褒められちゃいましたー
翔の最終目的は何?
ん？
そんなにがむしゃらにお金稼いで、何か事業でも起こす気?
金ね〜。金は確かに必要だったんだけどさ。その必要がなくなっちゃったんだよねー。
じゃあ、ホスト辞めちゃう?
この仕事、好きだからね、しばらくは続けると思うよ
よかったー。あんたがいなくちゃ、誰に愚痴話すんのよ
愚痴はやめてくださいよー
で、本当に辞めるの？
迷ってる
ふーん
この仕事、好きなんだよね、俺。人が喜んでくれるとこ見るの、嬉しいし。けど、問題は時間なんだよねー
時間？
そ、勤務時間。好きな子に、全然、会えなくてさー
小さくため息をつく翔を見て、こずえ、吹き出す
あんた、それ、客に言う〜！？
こずえさんならいいかと思って
翔、にっこりとこずえに笑いかける
うまいなー、その特別扱い！それに女はよわいのよー。で、どんな女？
んー？それは、ひ・み・つー
そんな翔の様子を見て、ひらめくこずえ
あ、あたし当てる
え？
にやりと笑い翔を指差す
五十嵐んとこに乗り込んできた、あのはねっかえりでしょー
！
翔、グラスを倒す
わ
ヘルプの子が、手早くダスターで卓上を拭う
ごめんな、ありがとう
こずえ、腹を抱えてケタケタ笑う
わっかりやすーい！
俺ってそんなにわかりやすい?
かもね
兄弟や元妻にも言われたんだよな。
髪をわしゃわしゃと掻く
こずえ、面白そうに翔を見る
わかりやすいっていうか、くやしいから、カマかけただけんなだけどね。引っかかったー！
こずえさーん…
あたしが翔のプライベートで知ってるの、赤スーツのあんたの兄弟と、あの子だけだもん
翔、苦虫噛み潰す
翔の表情を見て、うふふ、と笑うこずえ
ほんとにホストとは思えないよね
はいはい
ま、実際、あんたはホストらしくないホストってことで、人気があるんだけどね
何ですか、それ？
んー？安心して娘に紹介できるホスト
娘さん、紹介してくれるの？
バカ、あたしはまだ独身よ
こずえ、フロアのボーイに手を上げて、シャンパンを注文
シャンパン１本、入りましたー!
ありがとうございまーす！！
フロアでにぎやかにコールが始まる
はい、かんぱーい
機嫌よくグラスを合わせる
まあ、うまくいくように祈ってあげるよ。ホストやってても、やめたとしても
ってさー、こずえさーん。なんだかホストやめなきゃいけないみたいになってるんですけどー？
酒でターボがかかったこずえ、好きなように話題を急展開させていく
翔がホストかどうかなんて、あたしにはあんまり関係ないけどね、じつは
？
翔はホストが自分の天職だと思ってる？
まあ、合ってると思うよ。楽しいし
ちょっと、違うんだなー
なにが？
あんたの天職は、接客。お水じゃなくても、人相手だったら、何でもうまく行くんじゃない？
違いがよくわかんないんだけど
あんたの客が、何度、店を変えてもついていくように、あんたが定食屋の親父になったら、その定食屋に客が流れるだけだってこと。
もちろん、あたしも含めてね、と、こずえ、微笑んで翔にグラスを掲げる。だいぶ手元が怪しくなってる。
おれ、定食屋の親父ですかー？
翔、大げさに眉を上げる
そーよ、似合うわよー
やですよ、そんな地味なの
まあまあ、もしもの話をしただけよ
ちょっとろれつも怪しくなってきたこずえ
さ、もう一度、乾杯しよー
はーい
翔の前途を祝してー！かんぱーい！！
こずえさん、おれ、ホスト辞めないですってばー
もはや聞いちゃいないこずえ「みんなも楽しんでねー！！」と、立ち上がってフロアに向かってグラスをかざす
シャンパンもう一本入れてー！
ありがとうございまーす！！
フロアでまたまたにぎやかにコールが始まる
上機嫌のこずえを見て、楽しんでくれてるなら、まあいいかと、大騒ぎのフロアのコールに合わせて声をかける翔
