フジテレビ火曜9時ドラマ『アタシんちの男子』を楽しみましょう!!
ドラマは感動のうちに幕を閉じましたが、まだまだ『アタ男』熱は冷めません。
終了したドラマなのでネタバレ含みます。ご承知おきください
『アタシんちの男子』をこれから見る方、ストーリー、次回予告、登場人物をお探しの方は、
「はじめに」「まとめ」のカテゴリーからどうぞ
『続きシリーズ』『その後シリーズ』など、お話を読まれる方は、
「目次」のカテゴリーからどうぞ

アタシんちの男子の針を進めたら…

もう、前の話を忘れちゃいそうですが(笑)
風の話の続きです
時田と話した日の夕方
出来た分だけ上げるので、まだ続くと思います
今回は、無計画な更新で申し訳ありません


■響子の車



赤いロードスターで帰ってくる響子
事務所が入っているオフィスビルの地下駐車場に車を乗り入れる
なんだかエントランス前が賑やかそうだけど、と首をひねるがそのまま入庫




事務所に戻った響子に「おつかれさまでした」と声がかかる
遅くなって悪かったね。今日はもういいよ
響子、パラリーガルの女性二人に微笑む
はい。
年上の女性・杉下さんが留守中の響子への伝言、書類を確認
ん、了解
うなずく響子
そこへ、もう1人の若い女性・野中さん、給湯室で緑茶を入れて邪魔にならないように置く
「悪かったね、帰り際に」と視線を上げて感謝


小学生の子どもがいる杉下さんが先に身支度を始めながら
先生、ご覧になりました?
と今日の内輪ニュースを報告し始める
なに?
野中さん、バッグにマイボトルを入れながら「そーそー!」と相槌
杉下さんの話を奪い取る
今日、うちのビルの前に、すっごいイケメンの似顔絵描きがいたんですよ
絵描き?
響子、先ほどの人だかりを思い出し
そういえば、なんか賑やかそうだった
でしょ?
しかしまた、何でうちのビルの前に。
響子、あまり興味なさそうに首を傾げる
ですよね。公園か駅前にでも行けばいいのに
野中さんの帰り支度が整ったのを確認した杉下さん、さっきからちらちらと野中さんに目配せしてるが、おしゃべりな彼女は話に夢中で気づかない
帰りを急ぎたい杉下さんに気づいた響子
じゃ、おつかれさまでした
と2人に笑いかける
ほっとした表情の杉下さん、もうちょっと話したかった野中さんを促して「おつかれさまでしたー」と事務所を出て行く
気をつけて
響子、二人が出て行くのをデスクから見送る




仕事が終わって事務所の鍵を閉める響子
エレベーターに乗り、駐車場のある「B1」ボタンを押そうとした響子、
イケメン画家…?
と呟いてすぐ上にある「G」ボタンを押す


オフィスビルのエントランスを出たすぐ脇にある植栽のそば
3人の若い女の子が、一人の男を囲んでいる
男はスケッチブックに真ん中の女の子を描いている


建物の中から男の顔を確認しようとエントランスホールを回り込み、男の背中が半分確認できたところで、響子の眉間にぴっと皺が寄る


そーっとカーキ色のジャケットの背後に忍び寄り
警察の道路使用許可なく店を広げないでください
と声をかける
金、取ってないよ
び!とスケッチブックを破って、
はい
と、にこやかに女の子に超美化した似顔絵を渡すのはもちろん


風くん…


響子、眉をひそめる
女の子達、明らかに邪魔者を見る目で響子を見る
この人が俺の待ち人
風、「付き合ってくれて、ありがと」と、女の子に手を振る
女の子達、残念そう
いつも、どこで描いてるの?
わかんないけど、また見かけたら、声かけて
「じゃーね」と名残惜しそうな女の子達に手を振る風
あー、やっぱ俺、こっちのほうが社長よりあってるかも
スケッチブックを閉じながらゴキゲンの風
響子、呆れ顔
何してるんです?
何って、響子さんを待ってたんだよ
スケッチブック持って
いつ帰ってくるかわからないし
連絡くださればいいのに
「仕事中だといけないから。」と風、立ち上がって服の汚れを払う
ま、あなたの場合、ここのほうが家よりも捕まえられる確率高いからね
何か、ご用だったんですか?
響子、風のジャケットについた葉っぱを払う
響子さんの顔が見たくて
至近距離で、風がきれいに微笑みかけるもんだから、響子撃沈
ぱっと、乙女のように赤くなった頬を両手で包む
その拍子にどさどさと手にしていたバッグや鍵を取り落としてしまう
あ、
響子、足元のバッグに慌てて手を伸ばす
恋愛百戦錬磨で男を夢中にさせて来たかのように見える容姿なのに、この反応
風、楽しそうに微笑みながら、拾ったバッグを響子に手渡す
すみません
いーえ
屈んだまま、遠くに滑って行ってしまったキーケースに手を伸ばす風
拾ったキーケースを渡しながら、ふっと風が笑う
どうかしました?
何かおかしいところでもあるのかと、響子、不思議そうな表情で手の中のキーケースを観察
女は、なぜ、車に付く前にキーを出すのか、それがどうしても理解できない
え?
って、この前、響子さんと一緒に見たDVDで、奥さんに先立たれた主人公の爺さんがそう言ってたの思い出した*1
「あれの実写版だね」と風
ありましたっけ、そんなセリフ?。
と首を傾げる響子
ま、あなた、序盤から爆睡してたからね
風、からかうように笑う
…今度、ちゃんと見直しときます
まじめだなー。響子さん
面白がってる風の口調に、不覚を取ったと響子、眉をひそめる
俺の母親もそうだったの、思い出した
おかあさまが?
そ、スーパーでレジが済んだら、財布しまって、忙しそうに車のキイを持つんだよね。駐車場ははるか遠くなのに
腕組みして思い出している風の表情を見つめる響子
視線に気づいた風、苦笑い
女性は、みんなそうなんではないですか?
「バッグの構造の問題かと思います」と、響子、眉をしかめてまじめにお返事
これが響子独特の冗談なんだと一度理解できると、彼女の優しい面がどんどん見えるようになってくるんだよな、と、風、微笑む


親父が、俺の存在を初めて知ったときから、ずっと、俺と暮すことを望んでいたということがわかり、
母親も、ギリギリまで俺との暮らしを考えていたのだと知り、
俺はトリックハート城に帰る決心がついて、兄弟と千里と暮らし始めた。
二親に疎まれていたのではないとわかり、母親についても、以前ほど大きなわだかまりはなくなってきた。
どんな奴でも俺の親だし、あいつがいなければ、俺はいなかった
今の自分を、千里が言うみたいに「悪くないよ」って思えたとき、母親への怒りは消えた
怒りは消えたけど、少年期に感じていた言いようのない寂しさまで、すべて消えてしまったわけではない。
それはあの城にいる奴らがみんな抱えていること。
だから、ひそかにお互いを思いやり、いたわりながら、賑やかに笑い飛ばして暮している

納得しているつもりでも、今でも複雑な思いが時折よぎる母親のことを、こぼせるのは響子の前だけ
そんな風の思いを理解してくれてるから、響子は真剣に俺を笑わせようと試みる
不器用な響子にそんなことが上手くできるわけもなく、大概は的外れなフォローに終わる
彼女が伝えてくることは、俺の母親が特別な存在ではないということ。
普通の女が、普通に恋をして、普通に母親になり、やむ終えない事情で俺を手放さなければならなかったんだってことを、下手な冗談の中にこっそり忍ばせる
何でこの人は下手くそな冗談ばかり言うんだろうと、最初はわからななかったけど
今では、そんな響子がまじめに考えてる眉間の皺を見ると、その優しさにいつも自然と肩の力が抜ける


帰るんでしょ?運転するよ
風、右手を差し出す
風の掌に、キーケースを載せる響子
いいんですか?
もちろん
キーケースをジャケットのポケットに入れ、響子の背中を押して歩き出す風




社長になってから、車に乗せられるばっかりだった風、久しぶりの運転に上機嫌
今日は時田に昔の響子さんの話しをたくさん聞いたよ
助手席の響子に今日の報告
え?
いやな予感に、響子の頬が少しだけこわばる
司法試験に学部在籍中に合格した伝説の人だとか、親父に飴玉もらってたとか
響子の眉間にいつもより深いしわが刻まれる
っとに、あの子は…!
散々、時田に「あの方」の話を聞いた後なので、響子の呟いた言葉に、風、ちょっと驚く
新人類って言い方もだいぶ古いですけど、新造氏はあの子にはほんとに手を焼きました
昼間の時田の話の真逆を行くような響子の証言に、目を丸くする風
頭は確かにいいんですけど、子どものまま大きくなってしまったようなところがあるので、まず人に対する接し方であるとか、喋り方であるとか…
響子、頭痛がするとでもいうように両手でこめかみを揉む
あの子の一番の欠点は、余計なおしゃべりが止まらないところです
風、笑をこらえきれずについに吹き出してしまう
時田は、あの子なの?
は?
いや、なんでも
風、ごまかし笑い
響子、ため息をつく
それにしても、いまだにそのおしゃべり癖が抜けないとなると、時田さんを面白く思っていない、岩本副社長に足元すくわれかねないかと心配になります
響子、完全に保護者目線
大丈夫だよ。時田はよくやってくれてる。今日は、俺が、昔の響子さんの話を聞きたがったんだよ
言ってくだされば、私が自分でお話します
響子、ふくれてる
ごめんごめん。今度はそうする
是非!
響子の念押しに、風、苦笑い
「なんだか他にも、俺に聞かせたくない話がまだまだあるらしいな」と、ため息と一緒に吐き出す。車のエンジン音にかき消されて聞こえない程度のボリュームで


岩本副社長といえば、お見合いが、あるそうですね
響子、思い出したように話題を変える
知ってるの?
今日、お見合い話を聞いたばかりの風、驚く
ええ、あなたの戸籍の法的解釈について教えて欲しいと岩本副社長から相談がありました
風、変に手回しのよい岩本にちょっとイラつく
しないよ。お見合い
なさってもよいのでは?
響子が風を見る
どういうことさ
風、運転中なので、横目で響子をちらりと見る
良さそうな方ですよ?
知ってるの?
詳しくは存じ上げませんが、あなたの事情を知っていても、お見合い写真を預けてきたということから推測して、ご家族も含めて理解がある方だとおもいますよ
ふーん
いつもなら、盛大にやきもち妬くはずの、響子の穏やかな口調が少し引っかかる風
「あなたは?」と響子に問いかける
私には、あなたにして差し上げられないことが、たくさんありますから
ふっと響子が微笑んだ気配が感じられる
なにそれ
たとえば、家事も掃除も家庭的なことは平均点以下ですし、お子さんを望まれた場合、私の歳になると確約は出来ませんしね、他にも…
明るく指折り数え始める響子に、呆気にとられる風


風、しばし沈黙。


頭の中に響子のこれまでの腑に落ちない行動が次々とよみがえる
眉間に皺を寄せ小さく頭を振る風
…それで?

俺のスキャンダルになりそうな根は、断っとこうって思ってるわけ?
なんのことでしょう
平日デートのとき、会社帰りに会社の近くで、スーツ着て弁護士バッジつけて食事するとか、
おなかペコペコで早く食事がとりたいだけですぅ
響子さんの部屋にに行こうとすると、さりげなく話題そらしたりとか
わたくし、片付けられない女なので、急の訪問は恥ずかしいのでぇ〜
詰問口調の風に、ぶりっ子で応対する響子
うそばっかり
風、響子のぶりっ子演技&いいわけにふき出す
響子も、一緒に笑う


笑いが収まった風、ひとつ息をついて、響子に尋ねる
運転してるから、やっぱり正面を向いたまま
だから、同棲は絶対だめって言ったの?

響子、ジャケットの襟を直す振りして胸元に視線を落す
風、ちらりと響子を見る
俺と一緒にいるときの響子さんには二つの顔があるよね
風、ため息をつく
そうでしょうか
響子、首を傾げる
ひとつはさ、まるで俺が初恋の人みたいに、些細なことで一喜一憂してくれるとこ
それはもちろん、風くんは、私の初恋の人だからです
響子、大真面目な顔で冗談を言う
風、「そう、そういうとこ」と思わず笑ってしまう
たとえばさ、おいしい食事に連れてってあげれば大喜びしてくれたり、俺の話をいつまでも本当に楽しそうに聞いてくれたりする
信号待ちで停まった隙に、響子の手をとる風
…手を繋いだら真っ赤になって下を向いてしまったりね
響子、風の解説に違わず、恥ずかしそうにうつむいている
信号が変わり、風、片手は繋いだまま、ハンドル持ってる手をちょっとだけ離し、器用にシフトレバーを操作して車を発進させる
響子、うつむいていた目を上げ
そういう技術を身に付けるほど、たくさんの女性とドライブしたと思うと、ちょっと気に入らないですね
と険のある言い方で風を睨む
ふふふ
風、悪びれずに笑う
他の女の子のことには、盛大にやきもちを妬いてくれるし
原因はあなたにあるんですから仕方ありません
響子、ふくれてそっぽ向く
風、そんな響子を横目で見てにやりと笑い、繋いでる手を自分のほうに引っ張って響子の手にキスをする

不意打ちにびっくりした響子、首まで真っ赤になっている
そういうごまかし方はやめてください!
語気強く言って、風の手を振り解く
風、大笑い
普段、あまり表情を表に出さないあなたの、そんなとこを見るのは、すごくうれしい
風、優しい目で進行方向を見つめながら言う
もう!たとえ話のためにからかうのはやめてください
響子、気持ちを落ち着かせるみたいに、暴れて乱れた髪を直す
…そういう響子さんは、まるで、先のない恋を思いっきり楽しもうとしてるみたいに見える
風、響子の手がぴくりと震えるのを感じる
それがあなたのもうひとつの顔
響子、珍しく押し黙ってしまう


身を引くとか、いうつもり?
風、ため息つくみたいに言葉を吐き出す
図星指された響子、ふーと長いため息をついてシートに身をうずめる