フジテレビ火曜9時ドラマ『アタシんちの男子』を楽しみましょう!!
ドラマは感動のうちに幕を閉じましたが、まだまだ『アタ男』熱は冷めません。
終了したドラマなのでネタバレ含みます。ご承知おきください
『アタシんちの男子』をこれから見る方、ストーリー、次回予告、登場人物をお探しの方は、
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『続きシリーズ』『その後シリーズ』など、お話を読まれる方は、
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アタシんちの男子の針を進めたら…

多分みなさんが読みたい話とは違いますよね(笑)
好きに書いてます<(_ _)>



響子の噂


時田、中指でメガネのブリッジを上げる
でも、意外です
ん?
社長が、私にこういう質問をすること自体、今までありませんでしたよね
まあ、気にはなっていたけど、追求してどうって話でもないし。
風、顎に手を当て、「今日はたまたま、見合いの話でタイミングが合ったってことかな」と、笑う
社長は、何をお知りになりたいんです?
んー、昔の響子さんのこととか
私の知っている範囲って、会社関係だけですよ
うん。あの人に華麗なプライベートがあるとはとても思えないから
風、ニヤニヤ笑い
たしかに、そうですね
時田も複雑な微笑みで頷かざるをえない
眼鏡に手を当て、ちょっと俯き、記憶をさかのぼる時田


風、時田が考えてる間に、内線で秘書室にコーヒーを頼む
風が受話器を置いたとき、タイミングを合わせたみたいに、記憶を巻き戻し終わった時田、ぱっと顔を上げる
一番最初は、今から10年前。
時田がゆっくりと記憶の糸を手繰る
私が大学4年になる春に、『ミラクル』の内定を貰ったんですが、そのときすでにあの方はミラクルに関わっていらっしゃったようです。
私が21〜22歳ですから、あの方はプラス10歳ということですね
風、自分の歳を頭の中で逆算
ちょうど、俺が大蔵家を出て行った頃ってことか
時田、意外な符合に驚く
千里のことを、親父が知ったのも、この頃のはずだ
猛さん、翔さん、優さんも養子に入る頃ってことですよね。なんだか不思議ですね。
ホントだな
風もうなずく
新造氏個人の戸籍のことやミラクルの継嗣問題で、弁護士の仕事も忙しかったでしょうね
この学生時代の時田と、「ミラクル」や親父との結びつきが、結局は、俺たち兄弟や千里がお互いを理解していく上で、外せない役割を負うことになるなんて、このときはまだ親父だって気がついてなかったんだろうな
新造さんの面影や、城の強制撤去騒動のことが風の頭をよぎる


当時、あの方は、『ミラクル』の顧問弁護士をお任せしていた、法律事務所にお勤めでした。
あの方、私と同窓で、学部内では伝説の人物でしたから、お見掛けしてすぐわかりましたよ
同窓って?時田どこ大卒?
東京大学法学部です
風、二人の派手な学歴に、半ば呆れ顔
時田も、優秀だったんだね
「わたしはガリ勉してやっと入ったタイプですから」と、時田、恥ずかしそうに首を横に振る
ですから、正直、こちらの内定が決まったときは、うれしかったですね。
へえ、就職、売り手市場の頃じゃなかったの?
もう、そういう時代ではありませんでした。大手に優秀な学生たちがしのぎを削るっていう状態でしたね
へえ、
感心して見るものの、就職活動したことがない風には、いまいちピンときていないみたい
そのかわり、新造社長は、私にMIT経営学修士課程修了したら採用という条件を出されましたが
当時を思い出し、時田、ため息
それ、内定じゃなくて、難癖つけて採用断られたんじゃないの?
風の呆れ顔、さらにレベルアップ
そうでしょうか?入社の条件だと考えていましたが
常軌を逸した採用条件に、いまさら首をひねる時田を見て、風、笑ってしまう
条件出す親父も親父だけど、やってのける時田も時田だな
風の口調は呆れたみたいな色だけど、その言葉を聞いた時田、なんだかうれしそう


ドアがノックされ、コーヒーが運ばれてくる
来客じゃないので各々のカップ
時田がドアまで行ってトレイごと受け取る
立ち話をしていた風と時田、社長デスクに戻ることにする
風、椅子を一脚、デスクのそばに置き、時田に勧める
時田、一口コーヒーを飲んで、話を再開


やっと入社がかなって、経営企画室に配属、一年半で社長秘書になりました
エリートコース驀進中だね
当時私が27歳、あの方は37歳、新造氏は53歳でした。その頃には、あの方はもう独立されていて、新造氏個人の財産管理を任されていました。そこではじめて仕事のかかわりが出てきましたね
響子さん、やり手だったんだね
もちろんですよ。ただ、社長は良くお分かりと思いますが…
時田が言葉を濁したので、風が首を傾げる
なんかほかに理由があるの?
時田、ちょっと声を潜める
あの方、ちょっと世間のペースと合わないところがありますから、独立することで、そういうストレスを避けたって面も大きいんじゃないですかね?
どういうこと?
あの方が所属していた法律事務所は、信頼、実績、報奨どれをとっても業界随一でしたから、それを蹴って独立するとしたら、激務か人間関係くらいしか思い当たりませんよね
響子さんが激務に音を上げるとは思えないな
でしょう?あの方、いささか朴念仁で
朴念仁って、女の人に使うの、初めて聞いたよ
風、珍しく吹き出してしまう
時田、「すみません」と、件の朴念仁の彼氏にお詫びの会釈
風、笑顔で先を促す
あの方、冷静沈着なのはいいですが、融通が利かなかったり、誤解を受けるんですよね
時田、一応、言い直す
風、にやにや笑い
それにですね、この話、たぶん、ご自分でなさらないと思いますけど、あの方、1990年次の司法試験最年少合格者だったんですよ。
え!
風、普段の余裕の笑顔が吹っ飛んでしまう
当時21歳。在学中に合格したんです。東大とはいえ、大変な快挙でしたから、うちの学部内では、伝説の人の一人でした
ま、それで、かなり後輩の私でさえ、顔と名前がわかったんですよ
へ〜〜〜
風、桁外れの経歴を聞かされ、開いた口がふさがらない
それで、取材は受けるわ、たくさんの法律事務所にスカウトされるわ、当時は大騒ぎだったようです。
そりゃそうだろう
しかも、本人はいまひとつ自覚がないんですが、大変、美しい方ですからね。法律事務所で働きはじめてからも、各方面が放っておかなかったということですよ。
「まともな依頼から、ファン、ストーカー、ひがみ、やっかみまで」時田、まじめな顔で指折り数える
風、さっきの響子の独立話に思い当たり、
それで、独立か…。めんどくさくなっちゃったんだな、響子さん
必要以上に、肝が据わってしまったとも言えますがね
地は、かなりドジでおっちょこいなのに、仕事場では普段、鉄面皮通しているのもそのせいか
たぶん、その推測、大きく外れてはないと思いますよ
あんだけ美人で色っぽいと、また別の問題も起きるかもな
ご自分の彼女、「美人で色っぽい」とは、おっしゃいますねー、社長
世間の声だよ。俺、響子さんはかわいくて仕方ないと思ってるから
それも相当なのろけですよ
あの人さ、自分の決めた型に、かっちり入ろうとするんだよ
弁護士という職業として説得力を感じさせる態度とか、大人の女性として備えておくべき嗜みとか。そこさえクリアしとけばOKって思ってて、案外そのほかのことは無頓着って言うかさ
俺から言わせると、着込んだつもりの化けの皮の背中のチャックが開いている状態だね
「本人は頑張って切れ者に見せようとしてるんだけどな」と、風、腕組みして深く頷く
ああ、わかります。あの方のアンバランスな感じ
時田、風の解説に納得
隙を見せまいとしているうちに、なんかそんな風になっちゃったんだろうな
風、響子の顔を思い浮かべるように、ちょっと宙を見上げる


社長にかかると、あの方がかわいらしく思えてきますね
俺、女の人のいいとこみつけるの、得意なんだよ
自慢げな表情でコーヒーを啜る風
時田もコーヒーに手を伸ばす
さすが、中央線の各駅に、女性がいると噂されたお方ですね
噂じゃないよ
え゛
びっくりしてコーヒー吹いちゃう時田
風、時田を見てにっこりと笑う
表情がこわばる時田
社長、なんか会社が傾くようなスキャンダルの火種など、隠してらっしゃらないでしょうね
大丈夫だよ。俺、女の人に恨まれないのが取り柄だからさ
固まっている時田の肩をポンポンと叩く風
ハンカチで口元を拭いながら、時田、不安そうな表情
この人、過度にハマりそうだなー思ったら、思いっきりダメ男になって、俺のことあきれさせちゃうし
女の人はさ、自分が冷めれば、相手の男に未練はないから、トラブルもなし
恋愛オンチの時田、風の手腕に驚きの表情
社長、そんなこと考えて女性と接してるんですか?
いや、なんか、肌でわかるっていうの?。この人にはだめんずになって予防線引いとこ、とかさ
「まあ、、もともと俺が、だめな奴ってこともあるけど」と風、くすくす笑う
だめな人、好きな女性もいるんじゃないですか?
心配そうな時田の表情を受けて
「まれにね」と苦笑いで首を傾げる風


『大蔵風謝罪会見』は、千里がぶっ飛ばされるわ、投げ飛ばされるわ、絞め落とされるわで、すさまじかったと噂に聞いたことのある時田


「まれにね」といってあの人数だったら…


いったいこの人はどれだけモテたんだろうと、露天商時代を想像してため息