フジテレビ火曜9時ドラマ『アタシんちの男子』を楽しみましょう!!
ドラマは感動のうちに幕を閉じましたが、まだまだ『アタ男』熱は冷めません。
終了したドラマなのでネタバレ含みます。ご承知おきください
『アタシんちの男子』をこれから見る方、ストーリー、次回予告、登場人物をお探しの方は、
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アタシんちの男子のその後を考えよう

「その後」の続きです
ちょっと、設定補強と蛇足
中身はちょっと面倒な話かも
読み飛ばしても大丈夫なように、続きは工夫しますので
加筆修正取下の可能性、ありです

お暇な方はどうぞ



ミラクル本社・社長室


内線電話がなる。ワンコールで取る風。秘書室の時田から
<<社長>>
んー?
<<湊本氏が、社長の日程を取りに、会社へいらしてるんですが、いかがいたしましょうか>>
アポ取りにわざわざ本人が来てるの?電話じゃなくて?
<<そのようですね。どうなさいます?時間は、作れますが>>
ん、いいよ。会いましょー
<<はい。わかりました>>


電話を置くと、程なくノックの音
どーぞー
失礼します
時田が案内して来たのは、スーツ姿の太郎
急な訪問なのに、お時間、作っていただき、ありがとうございます
今更ながらですが、と太郎、名刺を差し出す
にこやかに応接を示す風
一礼して応接に掛ける太郎
先日は長々とお邪魔して、申し訳ありませんでした。
こちらこそ、ご馳走さまでした。千里が上機嫌でケーキをいただいてましたよ
不調法なもので、何を持っていったら皆さんが喜ばれるかわからなかったので、妹さんのお知恵を拝借しました
それであのやり取りがあったのか、と、太郎が大蔵家を訪れたときの千里と太郎のことを思い出す風
先日は、城を見学にいらしたとか
はい、大変興味深かったです
訛のない綺麗な標準語を話す太郎
お仕事のときは、関西弁、でないんですね
ああ、
太郎にこやかに笑い
一度、大失敗しましてね。在京某社の大変厳格な会長に、ふざけてるのかと門前払いされたことがありまして、それ以来気をつけているんです
そうだったんですね。うちにいらしたときと、だいぶ、雰囲気が違うから
風もにこやかに笑う


今日はどういったご用件で
すぐに社長にお目にかかれるとは思っていなかったので、簡単な資料しかなくて申し訳ありませんが
太郎、かばんの中からクリアファイルに入った資料を取り出し、風に渡す
弊社『TICTAC』で考えてきた企画なのですが、できれば他社との合弁事業の形を取りたい。
かなうことならば御社『ミラクル』と協同で事業を起こしたいと考えています
風と時田で回し読み
太郎が要旨を説明する


20世紀末に、レトロフューチャーのちょっとしたブームがありました。
ご記憶にありますでしょうか
今回のターゲットは、そこで目を開いた人々です
懐古趣味だけでなく、洗練されたデザインセンスを楽しんでもらえる層があると思うんです
主に1930年代〜1970年代の先進未来への憧れを造形するデザインセンス
それが、先代の新造社長のモデリングの中にあるんです
メインは、ミラクルのおもちゃの復刻と、新造社長のおもちゃを展開したミュージアム。古いおもちゃやレトロフューチャーの概念を取り入れたインテリアから建築全般をプロデュースする事業展開などを考えています
ミラクルで、眠っている財産の有効活用と、ミラクルのおもちゃの再評価という利点
TICTACでは、クライアントが抱く、ベンチャーに対する嫌悪感を少なく、すでに評価の一定しているミラクルのおもちゃを使用することで、リスクも軽減されるという利点があります


湊本さん
時田が、太郎の話を一度止めて、ミラクルの現状を説明する
ご存知と思いますが、うちは今ゲーム事業に力点を移しています。からくり部門は、アーカイブのようなもので、先進的な展開ができる機能を設けていません。すぐにはお返事できる状態にはないんです
太郎、にこやかにうなずく
承知しています。動いていない部門だからこそ、動かす体制として、弊社がご提案に参ったというわけです
風と時田、視線を交わす
太郎、それ気にづき、
すみません、いきなりまくし立てまして
いえいえ
一度、担当者や重役の方々に、プレゼンテーションできる機会を欲しいのですが、これからの交渉はどこに持ちかけたらいいでしょうか
風、時田に
企画部でいいのか?
はい
名ばかりの社長でお恥ずかしい
大きな会社ですから、当然です
もちろん、わたしで対応できることがありましたら、お気軽に
風が笑う
ありがとうございます
太郎、深くお辞儀をする
では、企画部にご挨拶させていただいて、よろしいでしょうか
時田、ご案内して
はい。
時田、秘書室に電話。企画部への案内を指示
程なく、ノックの音
時田の取次で、企画部の社員と太郎を引き合わせる
「では、まいりましょうか」と、促され、太郎、風に挨拶
それでは、お時間いただきまして、ありがとうございました
太郎さん、またうちのほうにも遊びに来てくださいね
それはもう、よろこんで
きちんとした態度で辞去する太郎を見送る


恐ろしいほどまともな方法で来ましたね
うん、城に来たときとは別人みたいだ


風と時田、かわいいルックスと反比例するような度胸に、ちょっとあっけに取られてしまう




リビング


風、帰宅
ただいまー
といつものように声をかける
おかえりー
といつものように兄弟や千里の返事
おじゃましてまーす
と、プラスワン。ひとり頭数が多いみたいだ


リビングの隅で、全く別人のように屈託なく笑っている太郎
Tシャツにチェックシャツを羽織ってハーフパンツにスニーカーで元気に挨拶。もちろん関西訛
今日は突然たずねてすいません。話し聞いてくれて、ありがとうございました。
いーえ
ニコニコと手に持った新造の発明品をかかげ
お言葉に甘えて、早速、来ちゃいましたー
風、笑顔を返すが、内心ちょっと困惑している
こいつは、何を考えてるんだろーなー


兄弟はおもちゃに夢中の太郎のことなど、すでに気にしてはいない
ほっといて、いつものように過ごしている
優はファッション誌をチェック。
智はバイトに行き始めて遅れがちの課題をやっている
明は株価チェックに余念がない
猛は翔が仕事で留守だから、つまらないので絡む相手を物色中
時折、千里が太郎の相手をするくらい


なー、千里ちゃん
床に直接あぐらをかいて、新造の発明品をひっくり返している太郎が、階段脇のソファに座っている千里に声をかける
新造さんの発明品は、いつもこういう状態なの?
山積みのダンボールを指差す
あー。普段から、そんなに使うもんじゃないし、必要に応じて引っ張り出したりしてるよ
ふーん
でも、みんな大人だから、それほどおもちゃで遊ばないしね
まあ、そーか。俺のほうが特殊やな。でも
ん?
新造さんの遺産なのに、もったいない
うん。でも、あたしたちには大事な遺産を残してもらったし、
大事な遺産?
あたしたちね、家族に問題のある人間ばっかり、集まってるの。
・・・
そんなあたしたちに、家族を作ってくれたのが、新造さん。
千里、にっこり笑って、新造さんの肖像画を見上げる
すごい発明だったと思うよ
少し前の大蔵家の騒動を思い出す千里の耳に、新造の声が聞こえてくるみたい
こういう小さいものも、兄弟のつながりを作るのに、役立ってくれたんだよ
千里、ダンボールの中からお気に入りの発明品を取り出す
これ、『ハイパワーボイス』。録音すると新造さんの声になるボイスチェンジャー
太郎ちゃん
と千里が録音して再生
<<太郎ちゃん>>
わ、ほんとだ。新造さんの声!
千里、今度は「どうだ、千里。大蔵新造、一世一代の発明は」と吹き込む
再生ボタンを押すと、新造さんの声が鳴る。千里、懐かしそうに微笑む
千里の表情を静かに笑って見つめる太郎
どうしたの?
やっぱり千里ちゃんは最高やな
なにそれ
千里ちゃんとおると、俺、間違わずに進んでいけそうな気がする
太郎が小さな声でつぶやくが、千里の耳には届かない

ねー、千里ちゃん、俺の嫁さんにならん?
え!
ええええ!!
兄弟、それぞれ手にしたものをボトボトと取り落とす
太郎、兄弟の様子に爆笑
ななな、なにいってるの?
思わずどもっちゃう千里
冗談冗談
と太郎が笑う
なんだー。冗談か。びっくりしたー
千里、ほっと胸をなでおろす。太郎、笑いがなかなか止まらない
千里さんは、新造さんの娘でしょ
は?
娘の夫って、遺産にちょっとは関われるんとちゃうやろか
太郎さん?
俺ね、絶対新造さんの発明品、活かせると思うんや
風の顔が曇る
結構いい考えだと思うんやけど、考えてみてくれん?
え?冗談、なんじゃ…
千里、目をぱちくり
嫉妬より不安に顔を見合わせる智と優
明と猛も、今日はなんだか笑い飛ばすことが出来ないみたい