フジテレビ火曜9時ドラマ『アタシんちの男子』を楽しみましょう!!
ドラマは感動のうちに幕を閉じましたが、まだまだ『アタ男』熱は冷めません。
終了したドラマなのでネタバレ含みます。ご承知おきください
『アタシんちの男子』をこれから見る方、ストーリー、次回予告、登場人物をお探しの方は、
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『続きシリーズ』『その後シリーズ』など、お話を読まれる方は、
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アタシんちの男子のその後を考えよう

太郎の告白・その1です
変な時間に上げてるってことは、そう、メール投稿です
話が分かれちゃって申し訳ありません

あとでまた続きを上げます
誤字脱字加筆修正ありますので、ご承知おきください
たまには完成品を上げてみなさいよ!とセルフツッコミを今日も入れつつ…
よろしければ続きをどうぞ




「やっぱり、ちゃんと話さないとね、俺の今回の馬鹿な賭けについて」


太郎の言葉を聞いて、リビングにちょっと緊張が走る
みんなが固唾を呑む中、うつむく太郎の口は重く、なかなか開かない


ほんとに話さなきゃ、あかん?
太郎、上目遣いでみんなを見上げる
言わねーのかよ!!!!!!!
兄弟、総ツッコミ
お・ま・え・はー!!
猛、イライラと太郎に詰め寄る
ごめんごめん。笑いも落ちもない、ほんとつまんない話だからさ。しかも長くて暗いし
太郎、苦笑い。
つまんないかどうかは、あたしたちが決めるから
太郎、髪をくしゃくしゃとしばらく掻いていたが、観念したように、兄弟を見て笑う


どっちから、話そうか。賭けの動機と、探し物
そりゃ、動機だろ
椅子の背を抱くようにして座っている猛が、片眉上げる



俺、今度の株主総会で、承認されたら、「株式会社ドリーム」の取締役に就任する予定なん
「どりーむ?」
太郎のお父さんが社長をしている、おもちゃメーカーだよ。
知育玩具や、木製玩具でいいものが多いんだ
翔と風が、会社の事情を知らない猛、優、智に解説
そこの、社長さんになるの?
千里がたずねる
ううん、専務
すごいね
すごくないって。町工場みたいなもんやし。ここんちの風くんだって、社長さんやんか


太郎、ダイニングの椅子を引いて座る
…今年の春、親父が倒れたんだ。軽い脳梗塞
「飲みすぎなんだよねー、基本的に」と明るい口調で首を傾げる
入院、してるのか?
翔が心配そうに尋ねる
うん。たいしたことなかった。後遺症もほとんどなくて、経過も順調。もう会社にも出てる。
よかったね、太郎さん
千里、ホッと胸をなでおろす
今起きたことのように反応する千里に、太郎、ちょっと照れて「ありがと」という。
しかし、その表情は、すぐにすねたように変わり
でも、倒れて弱気になった親父が、後継問題を持ち出してきた
うちは、おもちゃメーカーや言うても、「ミラクル」みたいな大手とちがうし、世襲ってのは覚悟しとったけど、あんまりにも突然で・・・
太郎、ため息をつく
風、顎に手を当て、太郎を見る
「TICTAC」はどうするんだ?
今の会社は、凄く小さいけど、いいスタッフにも恵まれてる。たくさん買って、たくさん売って、思うようにやってきた。だから「TICTAC」をたたむつもりはないよ。
そうか。よかった。JVはかなわなかったけど、「TICTAC」の仕事の目の付け所は、面白いと思ったから
ありがとう。風さん。
太郎、うれしそう。
今のスタッフ達に後を任せるってことに不安はないけど、自分で買い付けに飛び回るんは、これが最後になるやろなって思って、今回、全国を買い付けに歩くことにしたんや
太郎、風を見て、ちょっと恥ずかしそうに笑う
風さんは、今回のJVの話があったから、当然、俺のこと、調査していると思うけど、多分、風さんが知っている俺のほうが、ほんとの俺の姿
風、黙って太郎を見つめる
どこまでも行って、どこまでも買いあさる、稀代のバカ息子
太郎、リビングの兄弟に向って、自分を指差してみせる


今回も、いつもの通り、おもちゃ問屋のガレージを空っぽにし、コレクターの家にしつこいくらい通い、時には何も知らないご遺族を丸め込んでコレクションを手に入れたりもした。―――酷い仕事ぶりだと我ながら思うよ。
組んだ腕をテーブルに載せ、少し前かがみに俯く太郎
今日、みんなの前で見せた、あれが普段の俺に近いと思う
兄弟、顔を見合わせる


今回、俺は、通常の買い付け以外に、二つの特別な目的を持っていた
一つは、ミラクルへのJVの打診
もう一つは、弁護士さん立合いのもと、大蔵家に保存されている大蔵新造コレクションを査定し、ご遺族に買取交渉をかけるということ
いつも通りに、この仕事を進めてくはずやったんや
太郎、千里を見る
田辺家で千里ちゃんに会ったのは、偶然やった。
義男さんちの庭で、太郎さん、冷蔵庫を見てたんだよね
「うん」と太郎が頷く
智を初めて国土くんのネットカフェに連れて行った日だよ
千里、智に囁く
あ、あの日
智、「あの日か〜」と記憶をたどり小さく何度もうなずいている

太郎、不思議そうな顔
智にネットカフェでのバイトを紹介した足で、田辺家に行ったの。だから、智が外出練習しなかったら、太郎さんとも仲良くならなかったんだなあって思って
千里、「不思議だねー」と、中空に視線を上げる
不思議。元気に走ってきた女の子が、新造さんのお嬢さんと知った時は、ほんとに驚いた
千里を見て優しく笑う太郎
義男さんと千里ちゃんと一緒に、新造さんの昔話をしていると、新造さんと一緒にいた頃のことがだんだんよみがえってきた
太郎、「懐かしかったー」と言うと、体を起こし、椅子の背もたれに寄りかかると、打って変わったように明るい表情で新造の思い出を話す


それは、兄弟も、千里も知らない、若い頃の新造の姿


新造さんは、背が高くて、足が長くて、かっこよくて、あこがれのおじさんやった
その上、たくさん遊んでくれて、たくさん話を聞いてくれる、大好きなおじさん
すっごく話がわかる、子供みたいなおじさんで、一緒になって、父さんや義男さんにいたずらを仕掛けたりもした…
新造さんと一緒にいて、一番大好きだった時間は、構想中のおもちゃの話をしてくれたり、試作品で遊ばせてくれたりしてるとき。
僕が話したことを、新造さんが「太郎ちゃんのアイディア、今度のおもちゃのヒントにしてみるよ」って言ってくれた時は、うれしかったなあ。
自分の言ったことがおもちゃになるなんて!って、ドキドキして眠れなかった
ほんと、子供心に、この人は魔法使いかスーパーマンに違いないって思っとった。


太郎の表情が、ふっと、淋しく曇る


けど、俺も大阪に越してしまい、時々、やり取りしていた手紙も、大人になって、だんだん途絶えがちになり、時折、親父からミラクルの大躍進の噂を聞いたり、僕が会社を始めてからは、上京の際に挨拶に寄ったりする程度の交流しか持てなくなってしまった


淋しい表情をごまかすように、太郎、明るい調子で話を続ける


初めてトリックハート城に来た日、新造さんの声が聞こえてくるような、独特のおもちゃを見て、俺はタイムスリップしたみたいに、あっという間に子どもに戻ってしまった
「いい大人があんな状態で、みんな驚いたやろ」と太郎、いたずらっ子のような笑顔
驚いたよ、何時間もおもちゃで遊んでるんだから
優が思い出して頷く
この人、ちょっと。キてんじゃねーかと、正直思った
智、苦笑い
「やっぱり」と太郎、恥ずかしそうに鼻先を掻く
俺は、すっかりお城と新造さんの発明品にのめりこんでしまった
友達の家に行くみたいに、何度もここに通っとるうちに、仕事やなんや、わからんよーになってきた
おぉ、まー入り浸ってたわなー。毎日帰ると、おめーが迎えてくれる状態が7割だったんじゃねーか?
猛、下唇出して、変な顔をしてみせる
そんなに、おったかなー?
太郎、猛の変顔にふきだす
いたよね
猛の表情に笑っいながら、千里も認める


太郎、恥ずかしそうに頭をかく
もともと、大蔵新造コレクションの買い付けを、上京目的にしてたんやから、その価値は十分わかってるつもりやった
でも、実際に手にしてみて、あらためてわかったことがたくさんあった
新造さんが工夫を凝らした発明品
新造さんが知恵を絞ったトリックハート城
知れば知るほど夢中になった
すごく楽しかった
新造さんの発明品、ダンボールに入れっぱなしでほったらかしなら、今すぐ持って帰りたいって、ほんとに毎日思ってた
腕組みし、下を向いてくすくすと笑う太郎


太郎、顔を上げ、翔を見る
目が合った翔、「ん?」と首を傾げる
翔と話ができたことも、楽しかったな
翔に解説しながら、新造さんのおもちゃの魅力を再確認してるみたいだった
翔、「俺もだよ」と微笑む


太郎、今度は千里を見る
目が合った千里、頷いて、太郎を見る
千里ちゃんと話せたのも、すごくよかった
千里ちゃんは、新造さんのおもちゃに対する思いを教えてくれた
千里、「あたしも楽しかった」と微笑む


太郎、リビングの兄弟の顔を、ゆっくりと見て、
大蔵家のみんなに会えて、俺、ますます新造さんのおもちゃが大好きになった
と嬉しそうに笑う


でもね、俺、気づいてしまったん
幸せそうな表情で微笑んでいた太郎の表情が、淋しそうに変わる


新造さんの発明品は、君たち兄弟を思いながら、作ったんだよね
いくら俺が、「おれのほうがこのおもちゃの価値をわかっている」って騒いだところで、何の意味もないんだよ
俺が大好きな新造さんの発明品
それは、君たちがいたから出来上がった発明品なんだね
ここにあってこその発明品だったんだ
君たちがこれからも大切にしていく発明品なんだよ
太郎の言葉に、表情が改まる兄弟


太郎の目元が曇る


そのことがわかったとき、俺は今までの自分の仕事を振り返って、ちょっと青ざめた
懐かしい思い出を再現する縁(よすが)として、古いおもちゃの販売をしてきたはずなのに
俺が今までしていたことは、おもちゃと思い出を切り離している作業だったんじゃないかって