フジテレビ火曜9時ドラマ『アタシんちの男子』を楽しみましょう!!
ドラマは感動のうちに幕を閉じましたが、まだまだ『アタ男』熱は冷めません。
終了したドラマなのでネタバレ含みます。ご承知おきください
『アタシんちの男子』をこれから見る方、ストーリー、次回予告、登場人物をお探しの方は、
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『続きシリーズ』『その後シリーズ』など、お話を読まれる方は、
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アタシんちの男子のその後を考えよう

昨日の続きです
これもちょこちょこ手を入れそう
いつも半端な物をあげてすみません




みんなのところにいかねーの?


千里の背後で軽い口調の優しい声
振り返らなくたって、誰が来たかわかる
ベンチに座っている千里、背もたれに体を預け、仰向いて星を見ている
芝を踏む足音が近づいてきて、背後から、優しい笑顔の翔が、上を向いてる千里の顔を見下ろす
翔と目が合って、千里、思わず笑顔
仰向いているので、いつもは前髪で見えない千里の額が見る
翔、千里の額を、ぺち、と叩く
痛い〜
千里両手で額を押さえる
探したよ?いつものところにいないから
ごめん
千里、前髪を直しながら、体を起こす
座りなおした千里の隣に翔が来る
みんな、何してるの?
今日、俺が会社から、トリックハート城の見取り図、コピーしてきたんだ
お城の見取り図?
そう。でもそれ、完成前の図面だから、いま、みんなで足りないところを書き足して、完全版を作成中
翔、ペンを持っているように右手を握り、空間にサラサラと何か書き付ける仕草
完全版になるかなあ
千里が首を傾げる
井上さんにも参加してもらわねーとな
うん。井上さんの協力は絶対いるね
明るく頷く千里
翔、千里の表情を眺めて、ちょっと首を傾げる
なんかあった?
え?
翔、腕組みをして、視線を中空に上げ、思い出すような目
「いつものところにいないときは要注意。どこか具合が悪いサインです」ってさ
その表情に、見覚えがある千里、ちょっと唇尖らせて、
もしかしてそれも…?
そ、猫の飼い方の本に書いてあった
半分腕組みを解いて、人差し指を立て、にっと笑う翔
だから、あたしは、猫じゃないってばー
あれ、違うの?
優しい笑顔を千里に向ける翔


千里、観念して翔に考え事の中身を話すことにする


なんかあったって程じゃ、ないんだけど


千里、自分の膝に頬杖ついて、今日のネカフェでの智の事件の話をする
翔、長い足を投げ出して足首で組み合わせ、ポケットに手を入れて千里の話を聞いている
時々、うなずきながら、顛末を聞き、「そんなことがあったのか」とつぶやく翔


智、がんばったな
うん
千里、頬杖をやめて膝頭に手を置き、自分の指先見ながら話を続ける


最初の葵ちゃんの事件がおきた時、あたしすごく後悔した。
お節介で、智を連れ出して、余計に傷つくような目にあわせちゃったんじゃないかって
でも、そのとき、翔も、風も、優も、智を信じて見守ってあげようって言った
そしたら、智、ほんとに強くなってた
以前は逃げ出しちゃってた智が、逃げなかった
一度、言葉を区切って、千里、ひとつ、ため息をつく
智と一緒にスタートしたあたしは、義男さんの手伝いをするようになったし、
すごく野菜作りも楽しくなってきたけど、
智みたいに成長できてるのかなあって考えちゃって


翔、前かがみで喋っている、千里の後姿を見ている


七海ちゃんと出合ったことも…。
千里、翔を振り向いて、小さく笑う
翔、話を促すようにうなずく


七海ちゃんはあたしと同じ二十歳で、
お父さんとお母さんも早くに亡くしてて、たった一人の肉親の優とも、離れ離れで暮してたのに、
小さい頃聞いたおばあちゃんの伝言を、優に伝えるっていう、1つの役目をちゃんと果たして、
今度はおばあちゃんみたいな先生になるって、きちんとした目標を建てて、強い自分を持っていて…
千里、もうひとつため息をつく
あたしはそんな風に、突進できる目標がまだみつかていない


太郎さんは、自分の基準に迷うことなく、毎日、エネルギッシュに仕入れと言う名のお買物を続け、暇さえあれば新造さんの発明品をを見つめ続けている
翔だって、新造さんをきちんと見てみたいってミラクルに自分から入っていったよね
千里、三つ目のため息
あたしは、なんか真っ直ぐに進むことができないでいるの


本当にめずらしく弱音を吐いてしまった千里、ベンチの座面に足を引き上げて膝を抱える
膝頭に顎を乗せ、視線を下げて浮かない顔


翔はポケットに入れていた右手を出して、千里の頭をポンポンとたたく。
いつもみたいに、千里は恥ずかしそうに瞬きをする
千里の耳に、自分の言葉を、きちんともらさず伝えたいとでもいうように、自分の肩に千里の頭を引き寄せて、ゆっくり、そっと、翔が話し始める


千里は、たぶん、みんなと一緒に歩いていく、みんなを元気にしてあげる応援団長なんだよ
翔、少し言葉に間をおく
頭を捕らえられているので、翔に寄りかかっているような姿勢になって、ちょっと緊張気味の千里。
うなずく事で、翔の言葉が自分に届いていることを伝える
千里にちゃんと伝わっていることを確認して、翔、言葉を続ける


千里が、扉を叩いて、一緒に出かけてあげたから、智が強くなったんだし、
七海ちゃんが家に泊ればいいのにって、優に勧めてあげたから、おばあちゃんの伝言が伝えられたんだよ
太郎だって、千里と田辺家で会わなけりゃ、じっくり発明品や城に取り組むこともできなかったし
俺だって、千里が太郎と親父の話をしているのを聞いたから、親父の発明品に興味を持ったし、ミラクルに修業に行く決心がついたんだ
千里は、そんな俺たちを見て、うれしかったり、自分も頑張ろうと思ったり、しているんだろ?
翔に寄りかかってはいるものの、緊張で身を硬くしている千里、ぎこちなく、うん、とうなずく
それで、自分も、みんなみたいに頑張らなくちゃと千里が思うんだったら、千里には、そういうふうに成長していくんとだ思うよ


翔の言葉に、千里、顔を起こして、翔の眼を見る
翔、千里の視線を受けて、微笑む


真っ直ぐ進む必要なんかないんじゃないかな
自分にあった進み方でいいんだよ
みんなをがんばれって、応援していくことが、千里の成長につながるんじゃないかと、俺は思うよ


千里、翔の言葉に、まだ少し未消化だけど、ゆっくりとうなずく。


翔に寄りかかったままで、千里、自分の顎に手を当て考える
あたしのお節介が、あたしのためにもなるってこと?
そうだな。そうなれば、一番、千里らしいのかもしれない
自分の腕にくっついてる千里の肩を、ちょっと押し返して返事をする翔
それなら、お節介を仕事にすることができたら、最高なんだけどな
千里も翔の腕を肩で押してお返事
お節介を、仕事に?
翔、面白そうに千里を見る
うん、義男さんと、この前そんな話をしたの
義男さんか…
翔、くすくすと笑い始める
なに?
千里は、義男さんになればいいのかもしれないな
ん?
千里、首をかしげる
俺たちに、親父がいるように、七海ちゃんに、おばあちゃんがいるように、千里には、義男さんがいるのかもしれないな
どういうこと?


翔、さっきまでの心配しているのとはちょっと違う、楽しそうな表情で千里を見る
俺、千里の行ったらいい方向がなんとなく読めてきた。
え、どんな?
んー、あとは自分で考えてみたら?
えー
千里、身を起こして翔に抗議
えーじゃないよ、自分のことだろ?
そうだけどー
そのうち、答えあわせ、しよーぜ
何を
千里が見つけた、自分の進みたい方向と、俺の頭にひらめいた、千里が行ったらいいなと思っている方向
千里、わけがわからなくて怪訝な表情
なんか、さっきは、翔に話してもらって、ちょっとすっきりしてきた頭の中が、またごちゃごちゃになってきたよ
そのほうがいいな。
翔、うなずく
千里は何でも信じちゃうから、俺の話したことの影響、全部かぶっちゃうと、俺、責任感じる
翔ニヤニヤ笑い
千里、さっきまでの雰囲気はなんだったんだろうと、ちょっとすね気味


たまには一人で悩むのも、いいかもしれないけど、あんまりやりすぎると、あいつらが心配するから、程ほどにな
うん
猫の話のついでで言うと、
猫は、自分でじっとして、自分の傷が治ったら、また人の膝に普通の顔して入り込むもんだって
元気が出たら、またあいつらのに、発破かけてやってくれよな
翔、千里の頭を撫でる
うん
俺も、千里が元気ないと、調子でねーし
恥ずかしそうに首をすくめてる千里、
ねえ
ん?
ホントにあるの、その本?猫の、飼い方?
あるよ。『ネコのひみつ』っていう子供向けの本だけど*1
ふーん
初めて、猫、飼うときに、読んだ
そか
ま、一部、俺の創作を含んでるけどね
翔、そっぽ向いて笑う
え?
千里、翔の言葉を聞き損ね、首を傾げている


さて、じゃ、俺、戻るわ
と翔、立ち上がって城に戻ろうとする。
千里もあわてて立ち上がる
え、一緒に戻ろうよ
やだよ
えー
こんなに話し込んでから、千里と一緒に戻ったら、俺、優と智に半殺しにされちまう
翔、小声でつぶやいて、わざとらしく苦笑いの表情を作る
言ってる意味はよくわかってないけど、翔の表情がおかしくて笑い出す千里


2人のいるベンチの後方、一段高いところにあるお城の玄関の車寄せで、車のドアが閉まる音がする
2人で音のするほうを振り返り、見上げると、風が立っている
おかえりー
明るく手を上げる千里
翔、天を仰いで額に手を当てる
城に入ろうとしていた風、千里の声のするほうを見る
外灯がスッポトみたいに当たっているベンチの脇に千里と翔がいる
!!
兄バカ風、2人の様子を見て、瞳孔開いちゃってる

千里、風の表情に首をかしげる
ショックから回復し、少し感情機能が戻ってきた風、不機嫌そうに翔を睨む


翔、そんな風を見るのが、恐ろしいような、楽しいような

*1:実在の本です。でも、翔が話している内容はいろんな猫飼育本の合体