フジテレビ火曜9時ドラマ『アタシんちの男子』を楽しみましょう!!
ドラマは感動のうちに幕を閉じましたが、まだまだ『アタ男』熱は冷めません。
終了したドラマなのでネタバレ含みます。ご承知おきください
『アタシんちの男子』をこれから見る方、ストーリー、次回予告、登場人物をお探しの方は、
「はじめに」「まとめ」のカテゴリーからどうぞ
『続きシリーズ』『その後シリーズ』など、お話を読まれる方は、
「目次」のカテゴリーからどうぞ

アタシんちの男子のその後を考えよう

「脱線」の「脱線」です
『続き』を読んでいた方はご存知かと思いますが、『その後』本編が完結したということで、一個、ボーナストラックを上げます
誰へのボーナスかは知りませんが(笑)
まあ、2人の名前で検索してくださる方が多いので…
翔さんナイトの夜の話です

もう恥ずかしくて死にそうです
全然色っぽくないですけど、よろしければ、続きをどうぞ
あ。誤字脱字加筆修正、ありますよ(笑)

 おまけを追加  




真夜中のトリックハート城


ホストクラブで閉店までお客さんに付き合って、久々に真夜中に帰宅する翔
千里の部屋にお休みのノックをしに行ったけど、返事がない
眠っているのかな?
今日は起きてるんじゃないかと思ったんだけど
ちょっとがっかりして千里の部屋の前を離れる翔


帰りのタクシーの中で見た、月齢10日の、ちょっと膨らみかけた月の明かりを思い出して、酔い覚ましにバルコニーに行ってみようと思い立つ


バルコニーには見慣れた人影
しばらく翔が眺めていると、気づいた千里が振り返って翔に手を振る
やっぱりここだったか
ポケットに手を入れながら、バルコニーにいる千里のそばに歩いていく翔


ただいま
おかえり
翔と千里、笑顔で帰宅の挨拶
部屋にいるかと思った
翔が「ちょっと心配したよ」と首を傾げる
部屋にいなければ、こっちにくると思ったし
千里、えへへ、と笑う
翔も、笑顔
待ってた
千里、ちょっと恥ずかしそうに翔の顔を見る
おぉ
ちょっと照れくさそうな、優しい表情でうなずく翔
久しぶりに、夜、話せるから
視線はずして小さい声で呟く千里を、翔が笑って見ている
あ、今日は呑んでるし酔ってる。先に言っとく
翔、小さく右手を上げて自己申告
千里が首をかしげると、
すこーしだけな
と、親指と人差し指でわずかに隙間を作ってウインク
はいはい
千里、いつもおなじみのその仕草に笑ってしまう


今夜は、楽しかった?
すっごーく!
体全体を使って大きく頷く翔
うれしそうだね
うん。みんなが笑ってる顔って、なんだか俺のパワーになるみたい。
翔、「またやってってお願いしてきた」と、楽しそうに笑う
お仕事、戻ればいいのに
千里、不思議そうな顔で翔を見る
今、すごく中途半端だし、まだ全然、目的達成してないし…。ここでミラクルやめると、負けたみたいになるからやだな
翔、めずらしく厳しい表情
そんなに負けず嫌いだっけ?
翔の言葉をきいた千里、「意外」と呟く
ムラがあるんだよな。どーってことないってことと、これは譲れないってことの差が、極端なのかも
翔が頭を掻いて、自分のことを分析
時田さんには?
あんな底意地の悪い奴には、死んでも負けたくねぇ
指をぴっと立てて言い切る翔の様子に、千里、思わず噴き出す
千里に笑われてしまい、翔、苦笑
何で見込まれちゃってるのかは、わからねーけどなー
と首をかしげる
でも、俺、会社の人たちは、結構好きだよ
と、そこは明るい表情
ふうん
千里、めずらしく表情豊かな翔を見て、「お酒のせいかな?それとも、まだ今夜のイベントの余韻を、ちょっと引きずってるのかな?」と頭の中で推理を楽しんでいる
あれでも親父、結構人望あったみたい
「そうなんだ」とうなずきながら、「会社の話をしている翔も、楽しそうだから、大丈夫だね」と千里は思う
…でも、もっと人に会える仕事してーなー
翔、頭の上で腕を組み、背伸びをしながら呟く
今、何してるの?
秘書課の手伝いと資料室監禁。まあ、からくり箱とか、お城の地図とか、たまに拾い物もあるけどな
じっとしてるの、苦手そうなのにね
最悪だよー。ストレスたまりっぱなし
口元ゆがめる翔
それが時田さんの狙いなのかもね
千里腕組み
ん?
翔のやる気を極限まで封じ込めといて、山ほど人に会う職場を翔に与えて、ドカーンと爆発させちゃうとか
なんだよ、その山ほど人に会う職場って
わかんないけど
わかんないのかよ
えへへ
千里、ごまかし笑い
雌伏と雄飛って言いたいんだろうけど
そう。だから、きっと、今、翔は、伏せをして待って、バネをためてる状態なんだよ
千里の言葉に、翔、眉をひそめる
千里の言い方だと、俺が犬みたいに聞こえる
いつも人のこと猫扱いするくせに
千里笑う
翔も笑顔


猫に鈴、付けといてよかった
ん?
オルゴールボールを指差す翔。
今日は千里、チョーカーみたいに着けている
あ、これ
身に着けてるとあんまり鳴らないんだけど、走ったり、体を傾けたりすると、時々、鳴ったりするの。
千里、指でオルゴールボールをはじいて音を立てて見る
あの時、この音が聞こえた気がしたんだ
あの時?
発明の部屋に千里が閉じ込められてたとき、さ
こんな小さい音、聞こえないんじゃない?
そうだよな
千里と翔、不思議そうな顔
あ、でも…。
ん?
暗号を解いているときにね
うん
ちょっと冷静にならなくちゃって、トリックハート城の壁画に寄りかかって、少しの間、オルゴールボールを聞いてたの
千里、首の後ろで蝶々に結んだ皮ひもを外して、オルゴールボールを右手で握り、そのときやっていたように耳元で振ってみせる
じゃあ、そのとき、ちょうど俺がフェイクのドアの前にいたってことか?
すごい偶然だけど
ああ。
翔、腕組みして「壁の向こう側で、千里がそんなことしてるとは知らなかったな」とゆっくり頷いている
あたし、好きだよ、この音。なんか、ほっとするの
翔、千里に手を伸ばして、オルゴールボールを受け取り、鳴らしてみる。
その場で聞いても、微かな音
壁を挟んで話をするのも大変だったのに、何で聞こえたんだろ
さあな…
ふしぎだね。
2人で音に耳を澄ます
眠っている母親が、赤ちゃんの立てる些細な音で、目を覚ましたりするのに似てるのかな
千里、首をかしげる
それこそ、愛の力ってやつなんじゃねーの?
翔、猛のせりふを思い出して、にやり
猛みたい
翔の口調に、千里、くすくす笑う


皮ひも、に二つ結び目を作り、両手でぶら下げると、「返す」と行って、その輪に頭をくぐらせるよう、千里に手振りで示す翔
千里が頭を下げると翔が皮ひもを千里の首にかける
長さ、調節できるんだよ
千里の首筋に手を伸ばして、片方の結び目を動かして見せる翔
すごい!便利!
千里、反対側の結び目も引っ張って見る
つけるの楽だろ
うん
蝶々結びのチョーカーもかわいいくて捨てがたいから、今度、お土産に、リボンを買ってくるよ
翔のニコニコ笑顔に、ちょっと赤くなってしまう千里
…油断した
と額に手を当てる
ん?
翔、今日も酔ってるんだった
やだなー、少しだってばー
ニヤニヤ笑いの翔


久しぶりの夜の会話が楽しい千里、「いい忘れないうちに」と本題を切り出す
今日はね、翔に「ありがとう」って、言おうと思って待ってたの
それは、俺がいい男だからかなー?
翔、茶化す
まあ、それもあるけど
千里、吹き出してしまう
いろんなことだよ。
と千里、笑顔で翔を見る
千里が見た翔は、ちょっと照れてるみたいな、珍しい表情
あまり、他人に見せない顔を見せてくれるのが、なんだかうれしい千里
翔が、夜にお仕事してたとき、一緒に話す時間がないから、よく、夜中に話したでしょ
そうだな
そのときのことを思い出すようにゆっくり頷く翔
翔とさ、こうやって話してたことがね、…ちゃんと、あたしの中に、残ってるんだなーって、わかったの
翔、首を傾げて話の先を促す


この前ね、発明の部屋で、風に話したんだ
あたしたちの両親との、悲しい別れやすれ違いも、大蔵家のみんなに出会うっていう、大きな幸せを得るために必要なことだったんじゃないかって。そう考えれば、少しだけ、悲しい気持ちが軽くなる…
あたし、この考え方、誰に教わったんだろうって考えたの
そしたらね、翔と2人で、渋っいお茶を飲んでた夜にした、「無駄なものなんか何もない」って話から始まってるんだって気づいたの


そんな話、したっけ?と翔、とぼけた表情


太郎さんにした思い出のスイッチの話もそう
あれは、翔が話してくれた「頭を撫でられた子猫が、お母さん猫を思い出してる話」から考えたことだし


翔、腕組みして首をひねる


「みんなをがんばれって、応援していくことが、千里の成長につながるんじゃないか」って言ってくれたから、
あたしは、自分を幸せにしてくれた「食事は家族揃ってリビングで」ってことを、他の人にも紹介したいって、思うようになれた


翔、頬に手を当て考えるしぐさ


義男さんのこともそうだよ
子どもでもないのに、義男さんのこれからのことにまで、お節介やいちゃ、いけないんじゃないかって思ってた。
血のつながりなんか関係ない絆があるってこと、あたしが一番良く知っているはずなのにね


千里、翔の腕をポンポンと叩いて
宿題の答えはこれでしょ
と翔の顔を真っ直ぐ見る
「お節介の先生には、お節介で恩返しをする」…当たり?
翔、千里の真剣な顔に、ぷっと噴き出す
答えなんかないよ
え?
千里、びっくり目
千里が、たまには自分のことを、一生懸命、考えてくれたらいいなと思って、宿題出したんだ。
だから、千里が着地したところが、今回の宿題の答え
翔、しらばっくれてそっぽ向く
えー!?すごく一生懸命考えたんだよー
だろー?それが目的ー
千里、すね顔


怒った?
背の高い翔が、体をかがめて千里の顔を覗きこむ
怒ってはないけど
千里、翔に見られて、恥ずかしそうに笑う
つまりはさ、
目を合わせていられない千里、バルコニーの手すりに両手をついて、体を乗せるようにもたれかかる
翔と話した夜にしてくれた、いろんな話。―――最初は、よくわかんなかったり、自分とは関係のない話みたいに感じてるんだけど、何度も何度も、思い出したり、考えたりしているうちに、あたしをすごく助けてくれる考え方になってるの
だから、ありがとうって、言いたかったの。…翔に。
千里、そこに何かがあるみたいに、自分の頭の上をちょっと見上げる


翔、千里の隣に来て手すりに頬杖をつくと
そういうこと、まとめて言うなよ。まるでどっかに行っちまうみたいだろ?
と、視線を少し落として、呟くように言う
え?
聞き損ねた千里が翔の顔を見ると
大人になりすぎるのも、さみしーってこと
翔、頬杖をといて千里を見ると静かに笑う
千里、翔の言っていることの意味を掴みかねて、目をパチパチ


あたしも何か、翔にして上げられること、ないのかなー
体を反転し、バルコニーの手すりに背を預けて夜空を見上げる千里
十分、いろいろ助けられてるよ
翔が優しく笑う
大根の味噌汁、作ってくれたり
家族を、明るく、賑やかにしてくれたり
口ばっかで意外と大人しいうちの兄弟の、尻を叩いて動かしてくれたり
あいつらにザブザブおせっかいぶっかけてくれたり
千里、翔のたとえに眉根を寄せる
それ、褒めてないよ
褒めてるよ
翔、千里の頭を撫でる
ほんとかなー?
千里、首をかしげる
翔、そんな千里の顔を少し眺めている


千里から視線をはずし、バルコニーの手すりに手を置いて、翔、うつむいてちょっと恥ずかしそうに笑う
もし、俺のお願い、聞いてくれるなら
うん
翔の言葉の穏やかな調子に、耳を傾ける千里


どこにも行かないで、ずーっと隣にいてくれよ
俺には、今まで、そんな存在がなかったから
翔、千里を見ないで、正面向いたまま、まるで独り言のように言葉をこぼす


千里が今までに聞いたことのない、心の芯に不安を隠しているような翔の口調。
千里が今までに見たことがない、ちょっと頼りない、子供のような翔の表情。


うん
そんな翔を見て、千里、うなずく


翔、驚いて千里を見る


簡単にうなずいてるけど、意味わかってんの?
わかってるよ
まじめに答える千里
ほんとかな
半信半疑で首をかしげる翔
ほんとだよ
千里、「うん」と、もう一度うなずく
…まあ、小鹿な千里が言うことだからな
翔、ため息。やれやれと肩をすくめる


じゃあ、千里は、何か、俺に、お願いないの?
いつもの調子に戻った翔が千里に質問


千里、ちょっと考える


二、三歩後ずさって翔の後ろに回ると、
翔の背中にこつんと額をつける


あたしも、一緒かな
千里、翔の体に腕を回す
予想外の千里の行動に、いつもと真逆、翔が、固まっている


本当に、意味、わかってる?
背中の千里に問いかける
わかってるよ
千里が小さい声で呟く
本気にしちゃうよ
翔、自分のおなかのあたりに回されている千里の手に、自分の手を重ねる
うん、いーよ
千里、翔の背中に、猫みたいなしぐさで頭を擦り付ける
翔、千里がどんな表情で、自分と話しているのか想像がつかない


そっち向きたい
翔が背中の千里に声をかける
絶対だめ
実は千里、さっき「どこにも行かないで」って言った、淋しそうな翔の様子に、「ずっと一緒にいるよ」って、応えてあげたい気持ちがこみ上げ、思い切って行動してみたものの…、その後、どうしていいかまったくわからなくなっちゃってた
今更ながら、自分の行動を振り返って、顔を真っ赤にして、混乱している
自分でくっついてきたのに、なんだよ
なんとなく、背中の千里の気配が読めてきた翔。いつもの軽口が戻ってくる
それでもだめ
千里、翔を振り向かせないように、腕に力を入れる
そんなばか力で絞められると、肋骨が折れる
翔がくすくす笑いながら、ふざけて苦しそうな声を出す
ひどい
千里、体を離して翔の背中をばしばし叩く
いって!
背中を後ろ手でさすりながら翔が振り向く
にっこり笑うと、千里の手を上手に避けて、きゅっと千里を抱きしめる
千里、翔を叩こうと手を上げてたところを抱きしめられてから、手を下ろせないまま固まっている
そのまま千里の体を持ち上げる翔
わ!
足が地面から離れて、バランス取れなくなった千里、浮いてた手を翔の首に回してしがみつく
翔、そのままゆっくり千里を地面に降ろす
ほっとした千里の腕から力がぬける
ずるい
顔を上げられないまま、千里がつぶやく
小鹿な千里をおとなしくするには、これが一番
翔が千里を抱きなおし、自分の胸に引き寄せる


前から気になっていたんだけど、
ん?
小鹿って、何?
小さい声で、千里が翔に問いかける
…ほっとけないくらい、かわいい生き物ってこと
千里の頭に頬擦りし、静かに答える翔
やっぱりわかんない
自分の胸で首を傾げる千里がいとしくて、思わず抱きつぶしてしまいそうになる翔
苦しいよー。
千里の苦情に気づいた翔、腕を緩める
千里、息継ぎ
今度はあたしの骨が折れちゃう
翔、千里のたとえ話に笑ってしまう
大丈夫だよ
あたしは頑丈だから折れないって?
いーや
折れたら俺が、責任持って看病してあげるから、まかせといて


くすくす笑いながら、もう一度、千里を抱きつぶしにかかる翔


いつもだったら絶対やらない、翔のはしゃいだ行動に、愛されてるのかな?って、なんとなく実感できてきた千里だけど、
愛情表現ってこんな風にするものなのかな?
恋愛って、もっとロマンチックなもんじゃなかったのかな?
と、小鹿な千里はやっぱり首をかしげる
でも、こういうのが、あたしらしいのかもしれないね
と、安心したように翔の背中に腕を回す



翔が、大切な千里のために、歩調を合わせてゆっくりゆっくり歩いていることを、
千里がびっくりしてしまわないように、千里の気持ちが満ちるまで、いくらでも待つ覚悟があることを、
千里が知るのは、もう少し先のお話


翔に、抱きつぶされるみたいにぎゅっとされてると、
千里の頭の中は、一瞬、真空状態みたいになって、何も考えられなくなってしまう
呼吸ができないのからなのかな。
でも、ちょっと違うみたい
腕が緩むと、安堵の息が漏れる
呼吸ができてうれしいっていうのもあるけど
ぎゅってされたときに、体の真ん中に注ぎ込まれた翔の思いが、腕が緩んで、千里の緊張が解けるとともに、体の隅々にまで、広まっていくみたいに感じる
繰り返されるごとに、その感覚は強くなっていく


千里が何度目かの安堵の息をついたとき、
好きだよって、言ってなかった
と、翔が千里にささやいた
こくん、と頷く千里
千里…
これまで何度も呼ばれている名前なのに、千里、なんだかどきどきしてしまう
…好き
ほとんど呼吸音みたいな声で翔がささやき、腕の中の千里に、そっと、キスをする


翔が唇を離すと、千里、大きく長い息をつく
どうしたの?
翔が心配したように千里の顔を見る
息継ぎの仕方が、わからなかった
え!?
深呼吸みたいにして息を整えている千里を見て、翔、決まりが悪そうな顔
二人、顔を見合わせると、気恥ずかしさも手伝って、思わず笑い出してしまう


しょーがねーなー、まったく


翔、今度はほんとにそっと、包み込むように千里を抱きしめる