フジテレビ火曜9時ドラマ『アタシんちの男子』を楽しみましょう!!
ドラマは感動のうちに幕を閉じましたが、まだまだ『アタ男』熱は冷めません。
終了したドラマなのでネタバレ含みます。ご承知おきください
『アタシんちの男子』をこれから見る方、ストーリー、次回予告、登場人物をお探しの方は、
「はじめに」「まとめ」のカテゴリーからどうぞ
『続きシリーズ』『その後シリーズ』など、お話を読まれる方は、
「目次」のカテゴリーからどうぞ

アタシんちの男子の針を進めたら…

そのまた続きです
針進は、考察とお話の中間みたいなことになっているので、事件はないけど、語りまくり(笑)
思いつきで、それほど深くは考えてません
気軽に読んでいただければと思います



■小鹿の解釈



上機嫌でリビングに優が帰ってくる。
自分の頬を押さえては、ぷるぷるの肌の感触に、我ながらうっとり


暖炉の階段から千里が早足で降りて来る
千里さん
声をかけられて千里、優に気づき
お、おかえり優
と、右手を上げると、慌てたようにリビングから出て行く
あ、千里さん?
きれいにお手入れした自分を見てもらいたかった優、あっさりと去ってしまった千里を捕まえそこね、残念そうにストールを握る
あーあ
と、口元に手を寄せる。
指先に触れた肌のみずみずしさに、思わず笑み崩れる優
体が資本という自覚は十分すぎるほどある優、自分でも日々の手入れは怠りない
でも、やっぱプロの手って違うんだよなー
と、感心しきり



おー、優、お帰りー
暖炉の階段から下りてきた翔が手を上げる
ただいま
自分の世界にはまり込んでいた優、はっと気づいて翔にあいさつ


あれ?


優、翔の顔を見て、首を傾げる
翔、エステなんか行ってないよね
はあ?なに言ってんだ?
すごく、きれいになった気が…
男相手に、なに寝ぼけたこと言ってんだよ
・・・ぁ、そうか、翔がエステに行くわけないもんね
あ?
と優腕組みして推理
メトロノームの針のような、わたしの正確な推理によれば…」と指を1本立ててリビングを歩き回り、
内面からお肌を輝かせる何かが翔に起きた。ということは…、
優、はっと気づいて、翔に詰め寄る
千里さんとなんかあった?
両の拳を握り締め、オネエキャラで迫る優をうるさそうに避ける翔
なんにもねーよ
ほんとに?
再度、翔の正面に回りこみ、優、疑いの眼
あ。そういえば、優、『もうひとりの探偵』映画化決定おめでとう!
翔、優の両肩に手をおいて、笑顔炸裂。強引に話題をすりかえる
あ、ありがとう
優、普段自分の仕事にあまり興味を示さない兄弟に祝福され、感動してしまう
両手で口元を覆い、目元を潤ませる
明日、制作発表なの。だからね、今日、エステでお手入れしてきちゃった
自己中の優、自分の話題がうれしくて、嬉々として語り始める
翔、そのおしゃべりを、うんざりした気持ちで聞きながら、話題のすり替えに成功し、ほっと息をつく


こいつは、細かいところに鋭いよな
オネエキャラといえば聞こえは悪いけど、細やかに気遣いができるってとこは、うちの兄弟の中では貴重な存在かもな
長所と短所は紙一重だと翔、優のおしゃべりを聞き流しながら思う


あ、ねえ
優がきれいに整えた眉をひそめる
ん?
さっき、千里さん、ちょっとおかしかったんだけど
え?
逸らしたはずの話題が、再び戻ってきて、ぎくりとする翔
なんか、あったのかな
心配そうに口元に握った手をよせる優
さあ?
翔、大げさに首を傾げる
千里さん、ちょっと動揺してるみたいだった
そう?
身に憶えのある翔、内心の動揺を何とか隠す


千里さんに、不安そうにされると、僕、弱いんだよね
は?なんだって?
言ってる優の表情のほうがよっぽど不安そうに見え、翔、思わず聞き返す
優、困った表情でくしゃくしゃと髪をかく
千里さんって、いつもすごく元気じゃない?
まあ、そうだな
うちに来た、最初の頃はさ、うるさい女だなーって思ってたけど、一緒に暮らしてみると、すごくいい人で、今では千里さんのいない生活なんて考えられなくなっちゃった
翔を見て、恥ずかしそうに、にっと笑う優。
翔、頷いて話を先を促す
千里さんが、猛とケンカしたり、明や智と一緒にわいわい遊んでいるときはなんともないんだけど、
いったん言葉を切り、優、両手で自分の胸の辺りを押さえる
千里さんが、普段と違うことすると、僕、ドキドキしたり、なんかこう、きゅーんってなっちゃうんだよ
優、幸せそうにも、途方にくれたようにも見える、長い長いため息をつく
ちょっと、擬音が多すぎてよくわかんねーんだけど
翔、優のあまりに乙女チックな仕草に苦笑い
優、もう一度、「はー」と大げさにため息をつくと、階段脇の赤いソファーに座り、オットマンに足を載せる
「なんだか長い話に巻き込まれそうだな」と、心の中で呟く翔、カウンターのスツールに浅く腰掛け、前脚の貫に左足をかけると、カウンターに肘を付いて、話を聞く構えを作る
そんな翔の動きを目で追う優


一度、翔に聞いてみたいことがあったんだ
なんだよ
小鹿って何?
翔、思わぬ方向からの攻撃に、座ったばかりのスツールから滑り落ちそうになる
は?お前なに言ってんの?ってか、どこでそんなこと聞いてたんだ?
夏にさ、太郎さんがこっちにいた頃、翔、千里さんとネカフェに行ったでしょ
あー、あったかもしれねーけど…
その時に、翔と国土さんがコソコソ話してるのが、ちょっとだけ智に聞こえたんだって
翔、その時の記憶を探る
たしか、国土が、千里を太郎から守ってくれみたいなことをいってたと思うが、
その時、そんなに離れなくてもいいだろうってくらい、フロアの隅っこに連れてかれた覚えがある
ってことは、智のやつ、盗み聞きしにきやがったな、と呟いて舌打ちする翔
智、その時、太郎さんのこと、めちゃくちゃ警戒してたから、「千里さんと、太郎さんの名前と、小鹿がどーとかこーとかって、話してた」って、心配になって僕に相談してきたんだ。
智は、よくわかってないみたいだったけど、僕は、なんか引っかかって
優、心配そうに眉根を寄せる
お前は細かいねー。もっとおおらかにしてねーと、早く老けるよ。
「ほら、眉間に皺が」と翔が自分の眉間を指差して笑う
優。慌てて自分の眉間を隠すと
細かいかもしれないけど、僕は気になったの!
茶化すような口調で交わそうとする翔に、優、胸元で拳を握って強く主張
優の剣幕に、やれやれという表情の翔
普通考えて、子鹿、banvinoって、赤ちゃんのことだよね。もしくは大人になる手前の女の子
優、翔を見る
そういえば、ベイブ・ルースのあだ名も小鹿ちゃんだったらしいぞ
翔、再び話を逸らそうと試みるが、優に思い切り睨まれる
…千里さんのこと、言ってるんでしょ。初心だって意味で
優、眉根を寄せ、真剣な表情でじーっと翔を見つめる
ま、そんなとこだけど。最初に言い出したのは国土だからな。
翔、優の険しい表情に耐え切れず、そっぽを向いて答える
そうなんだ
お前、この話、べらべら言いふらすんじゃねーぞ。特に猛には…!
そんなことしないよ!
優、おしゃべりみたいに言われて、不満顔
大体、うちなんか、家中、小鹿の集まりみてーなもんじゃねーか
翔、めんどくさそうに髪をかきあげる


僕にとっての千里さんは、ちょっと違うんだ
優、すねたようにつぶやく


僕、仕事でいろんな女の人に会うようになったけど、やっぱり、まだまだ女の人は怖いんだよ
なんか、いろんな策を弄して、…迫ってきたりとか
優のいる業界なら、肉食系女子も恋愛体質もいて当然だなと思う翔
すねたり、照れたり、冷たくしたり、やさしくしたり、「あたし、実は、こういう人なんです」って、ギャップを自己演出したり
「僕は、そういうの引いちゃうほうだから、やるだけ無駄なんだけど」と優不快そうに唇を尖らせる、

翔、優のまじめな表情に思わず噴出す。
眉間に皺の寄った優を見て「失礼」と咳払いする翔
でも、反面、優にちょっかいかけるその女の子達をちょっと不憫に思う。
どれだけ、女性が夢中になる容姿をしてようと、優は現在、女性恐怖症のリハビリ中なんだから、彼女達の恋は前途多難だ


でも、おんなじこと、千里さんがすると、僕、全然ドキドキしちゃうんだ
お?千里がそんなことしてるってのか?
ううん、千里さんは普通にしてるだけ、
優、ゆっくりと首を横に振る
僕が、千里さんを見て、勝手に翻弄されてハラハラドキドキしちゃうの


ほら、翔、覚えてる?ハイパワーボイスのこと
千里さんはまったくそんなつもりなかったのに、録音された言葉を聞いて、「そんなあなたが大好きです」っていうのが、千里さんの本心だと思って、僕はすっかりその気になっちゃったし
ああ、そんなこともあったな
あの頃、千里は、親父の発明品を引っ張り出しては、俺たちの問題を解決しようと、おかしな作戦ばっか立ててたっけ、と翔、思い出し笑い
あれなんか、思わせぶりな女の子がしてることと、そう変わらないよ
まあ、そうかもな


翔がアイディア出してくれて、生放送でホームレスの人をトレジャーハンター建設現場で臨時雇用するって言ったときも、千里さん、喜んでくれて、僕に飛びついてハグしてくれたり
…そんなことがあったのか?
温泉掘削の現場にいなくて、千里がそんな行動をしていたとは知らなかった翔、ぱちぱちと瞬きをする
翔と一緒にいても、千里が自分から抱きついてくるなんて事、これまでほとんどなかっただけに、ちょっとびっくり
まあ、千里と一緒にいたら、どうしても自分の手のほうが先に出てしまうのは仕方がないことだけど…
翔、口元に手を当てて思案顔


猛が、お父さんと暮らすために、城を出て行くことを知ったときだって、ほんとにめずらしく、千里さん、弱音を吐いたりして…。
優、そのときの千里を思い出す

猛がお父さんと仲直りしてくれたらいいなって、思ってたの。
けど、一緒に暮らすなんて考えてなかったな。
百回跳べなきゃ、猛、ずっといてくれるのかな。
なあんて、勝手すぎるよね。
ごめん、気にしないで

あんな千里さん、初めてだった
とうつむく優
……
千里と優の間に、そんな会話があったことはもちろん知らない翔、ちょっと絶句する

10年だよ
養子として大蔵家に着て10年。あいつとはずっと喧嘩してきた。
・・・俺がここを出てったとき、あいつもこんな風に思ったのかなあ

猛が出て行く前の晩
バルコニーで、自分の思いを黙って聞いてくれたいた千里に、翔は感謝している
過ぎてしまったことを、後悔しても仕方ないけど、優の話を聞いて、千里の思いに早く気づけたら、千里がしてくれたみたいに、気のすむまで話を聞いてあげられたのにと、猛を追った淋しげな小さい背中を思い出す翔
あの千里を見て、俺は強くならなくちゃと、思ったんだよな


すっごいタフだと思ってたら、びっくりする位もろかったり、僕より全然男前だと思ったてら、急にびっくりするほど女の子になっちゃったり、
千里さんは、自分を飾らないから、そういうところまで、僕なんかにも見せちゃうんだ。
今だって、千里さん、落ち着かない目をしてるから、なんか心配になっちゃった


僕、千里さんのこと、優しいから好きになったんだけど、ほっとけない、守りたいって思えた、はじめての女の子なんだ
翔や、猛や風は、大人だから、そんなことでドキドキしたりしないと思うけど、僕にとって、千里さんは…
優、ちょっと考えて
いうなれば、小悪魔。しかも作為なしの天然。
口元に手を当ててつぶやくと、確信を持ったように、うん、とうなずく優
天然で、鈍感で、純粋なだけに始末が悪い
しかも、お節介だから、人を追いかけてきてまで親切にするでしょ?
それこそ、「惚れてまうやろー!」って感じ
優、芸人のまねをする


お前、今まで、すごくいい話してたのに
翔、ガクッと脱力
え?嘘
優、口元を手で覆う
僕、最後まで、ちゃんと決めたつもりだったのに
バーカ、まだまだ修行が足りねーよ
翔、からかうようにウインクをする
えー
八の字眉毛で残念そうな表情をする優を見て、翔、笑い出してしまう
優も、照れたように笑う


お前、結構本気だったんだな。千里のこと。
翔、優を見て、ちょっと複雑な笑みを浮かべる
そりゃそうだよ。千里さんは僕を変えてくれた女性なんだから
優、翔を真剣な顔でに見つめる
そしてね、女性恐怖症回復してから、千里さんしか好きになっていない僕にとって、もしかしたら、生涯唯一の女性になるかもしれないんだ
だからね、千里さんの幸せを思って、身を引くことはあっても、ライバルにはかなわないからって理由で、千里さんをあきらめるつもりはないよ
だから翔も、油断しないでね
これは僕の、宣戦布告だから
優、くしゃりと独特の笑顔で、翔に向かって右手を伸ばすと、ぐっと、親指を立てる
僕、もっともっとがんばって千里さんに認めてもらえるような、男になる


翔、ライバル宣言されてるんだけど、優の言葉に内心感動していた
猛や翔と、同じ頃、大蔵家の養子になった優
両親別れた記憶を思い出せないままに、祖母と暮らし、その祖母とも死別し、大蔵家にやってきた。
頼りなく、何かあるといつもうつむいて目元を曇らていた。
後継者候補も、俺が家を出て、勘違いした猛も辞退し、唯一残った優が、ミラクルの後継者として教育を受けていくはずだったのに、自信がないからと早々に辞退し、ミラクルからの経済援助から自立するためにモデルの仕事を始めた
その優が、自分から勝負をあきらめないと、きちんと胸を張っている
オネエキャラとか、そういう表面的なことじゃなく、優は、確実に強くなってきている
翔は、うれしくて、今すぐ優のそばにいって、ハグしたいくらいだった
さすがに恥ずかしいからやらねーけどな、と心の中で自分にツッコミを入れる


宣戦布告したから、ってわけじゃないけど
優、翔をビシッと指差す
思いがけない行動に、翔、ちょっとひるむ
僕、最近、お芝居や映画のこと、勉強してるから、わかるんだけど、小鹿って、ただ単に、初心って意味だけじゃないんだよ
小鹿って言葉はね、どうでもいい子には使わないの

ある映画の話なんだけどね、恋愛前夜の美しい女の子が、ある男に恋愛めいたことを仕掛けられるの
そして、月日を経て、女の子と男は、想像もしなかった形で、再会を果たす
大人の女性になった彼女は、男を翻弄し、彼女自身の運命までも狂わせて行くんだ
その女優さんは、小鹿のようって評されてた
「小鹿」って、言葉は、メタモルフォーゼの可能性を秘めた子限定なんだよ
自分にとって、いつかその子が、すっごく危険な女の子に変身するかも知れないって、どっかでわかってるから「小鹿」ってわざわざ使うんだよ
翔も、気をつけてね?
優、普段なら絶対見せないような、大人っぽい表情で笑う
なに言ってんだ、バーカ
受ける翔の笑顔は苦笑い
それも、お芝居の勉強で身に着けた技なのか?
と翔、優をからかうように、立てた一指し指をくるりと回す

そんなこと言ってると、小鹿に足をすくわれるんだから
ぷくーっと頬を膨らませる優。やっぱりまだまだオネエキャラが抜け切らないみたい


優の成長はうれしいけど、やっぱりちょっと面倒だな
こっそりため息をつく翔
さっきの優の話を応用すると、うちの小鹿たち、千里だけじゃなく、優も、智も、明も、変わっていく可能性を持ってるやつら、これからどんどん成長していくやつらってことなんだよな
すごく楽しみだ
でも、俺も負けるわけにはいかねーよな。
兄として


翔、笑顔で腕組みをして、急成長する弟を見つめる


あれ、でも
そういえば、俺、千里に振り回されてるよな
優の小鹿子悪魔成長説が頭をよぎるが、
まさかな、とすぐに打ち消す