フジテレビ火曜9時ドラマ『アタシんちの男子』を楽しみましょう!!
ドラマは感動のうちに幕を閉じましたが、まだまだ『アタ男』熱は冷めません。
終了したドラマなのでネタバレ含みます。ご承知おきください
『アタシんちの男子』をこれから見る方、ストーリー、次回予告、登場人物をお探しの方は、
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アタシんちの男子のその後を考えよう

更に脱線の脱線
話は進みませんが、ちょっと書いてみたら長くなってしまったんで、上げることにしました。
日常で、こんな濃い話しするわけないじゃんってツッコミを自ら入れつつ(笑)

加筆&取り下げの可能性あります
よろしければどうぞ


ダイニングテーブルに並んで座っている翔と千里
翔は自分の席、千里はいつも優が座る隣の席
今日は少し早く仕事から帰ってきた翔とおしゃべり
夜の会話は数珠繋。


また、俺の知らないところで話が進んでる
えへへ
えへへじゃないよー。なんだよ、優の妹だとか、太郎ちゃんだとか


卓上には湯呑と急須。
千里がお茶を注ぐ
千里の前には冷たい麦茶のグラス


暑い時なのに、翔は、時々こういうものを飲みたがるね
暑い時には、熱いものがいいんだよ
オヤジっぽい
うるさいよ
なかなか冷めない緑茶を気をつけながら啜る
夜中のね、疲れたときには、熱くて渋ーいお茶を飲むとリセットされるんだよ
へぇ、眠れなくならないの?
不思議とならない。慣れちゃったのかもな
朝茶を飲むとその日の災害を免れるって言うのは、ホームレス仲間から聞いたことある
それは合ってるよ。朝茶はその日の難逃れ。でも迷信じゃないんだ。お茶のカフェインで筋肉組織を目覚めさせると、ちゃんと体が動いて怪我を防ぐんだよ
なんか、翔って、雑学博士?
なんだよ、それ
ときどき妙なことに詳しかったりするじゃん
ああ、それはね
思い当たるところのある翔、うんうんと小さくうなずく。
最初は力のために始めたんだ
力?
俺、子供が出来たから、高校出て、すぐ家を出たろ
うん
でさ、ろくに仕事にも就けないし、若い父親だったから、あれこれ自信なんてぜんぜんてなかったんだよ。当たり前だけどさ。自分も親父、知らないし、どうやったらいいのかなって。
テーブルに肘をついて話す翔。椅子の背にもたれかかっている千里からは、翔の表情は見えない。でも口調は極めて穏やか。
それで、思ったんだよ。頼りない父親だけど、力がたずねることに、ちゃんと答えてやれるような父ちゃんになろうって。それこそ、目に入るもの、片っ端から憶える様にしたんだよ。
言いながら、背もたれに体を預ける翔。今度は明るい表情が千里にも見える。ちょっと安心した千里。
片っ端から?
そう、新聞雑誌からお菓子のパッケージまで。
そんなものまで、千里が目を丸くする。その表情を翔、楽しそうに見ながら、「すっごい無駄なことしてんじゃねぇかって、思ったこともあったけどね」と付け足す
でも、ただ読んだり聞いたりしても憶えられないから、人に喋ってみるんだよね。記憶テストとして。それこそ、訪問販売先の雑談とか、ホストクラブの客とかに。でもつまんないと誰も聞いてくれないわけじゃん?
うん。
そこで話し方が鍛えられたんだよ。話が弾むと、今度は相手も話してくれるだろ?で、聞いた話をまた覚えて、またどっかで喋って、のくりかえし。
翔の話が上手なのには、そんな理由もあったんだ。
結果、仕事の役にも立ったしな
じゃあ、あたしも、力のおかげで、いろいろ翔に教えてもらえてるんだね。
千里、発見!と指を立てる。その様子を見て、翔、笑う。
無駄なことなんか、何もないんだよなー。もちろん、今も、継続中だよ。
うん。すごいね。
力が二十歳になる頃には、俺は歩く百科事典かWikipediaになってる予定だから
にっと笑う翔がおかしくて、千里、思わず笑い出す。


無駄なことなんか何もないって言えばねー。
うん
うちの親父。峯田のほうね。
千里、確認してから話し出す
あたし、高校を卒業するまで、親戚をたらいまわしにされてたのね。そんなにひどい扱いされたわけじゃなかったけど、居場所のなさはどうしようもなかった。
ひどい話なのに、千里は笑い話のように話す
そんなあたしの前に、借金取りから逃げるために失踪してるはずの親父が、なんでか時々現れたのよ。
千里、そのときの怒りを再現するかのごとく、ダイニングテーブルを、ドン、とたたく。翔、ちょっと驚く。
そうすると、決まってあのクソ親父、いい加減で腹が立つことばっかりいうの。だからあたしは、怒鳴って、殴って、もうめちゃくちゃに当たるのよ
拳を握って殴るゼスチャーをする千里。その手が、ふと止まり、
でもね、最低の親父に、「サイテー!!」って文句言って、悪口とか、不満とか、もう言いたい放題ぶちまけると、不思議とすっきりしちゃって。面倒見てくれている親戚がすっごくいい人に思えてきちゃうの。
千里、座っている椅子に足を乗せ、両膝を抱いて顎を乗せる
あのガス抜きがなかったら、あたし、もっとやばいことになってたんじゃないかなって、最近、思うんだよね。
さっきまでの勢いとは真逆。ぽそりとつぶやく千里
翔、千里の頭をぽんぽんと撫でる
千里、恥ずかしそうに笑う。気を取り直して、元気に宣言
あのバカ親父のおかげで、あたしは、タフになれたんだよ。
バカ親父の存在も、無駄じゃなかった。・・・って、まあ、これはあたしの、甘い解釈なんだけどね。
と照れ隠しの言葉を最後に小さく付け足す千里
まぁ、そのおかげで、俺は散々振り回されているけどなー。
翔がにやにや笑いで千里を見る
千里も笑顔で応戦
それも無駄じゃないんじゃないの?
自分で言うなよ


話が一段落して、二人してお茶に手を伸ばす
千里、行儀が悪いけど、ひざを抱えたままの姿勢
翔、少し冷めたお茶を一口飲んで、湯呑の中の濃い緑を見る


ほんとはね、多分志村さんの癖が、うつったんだと思う
え?
お茶
翔、湯呑を掌で転がす
あの人、あんなことになっちゃったけど、もとはすごくいい人でさ。いっつも施設の資金繰りで悩んでたんだー。俺は15歳まで施設にいたから、結構、長いほうでさ。よくそんなあの人を見てた。
千里の脳裏に、あの日の朝の二人がフラッシュバックする
夜中、眠れなくて起きてみるとさ、あの人、よく一人でお茶を飲んでた。すっごーく渋くて苦いお茶。まねして飲もうとしたら、眠れなくなるからやめろって言われた。そんとき俺を見た優しい顔が、なんか忘れられなくてさ。
自分の手の中の湯呑を揺する翔。中の緑の水面も揺れる
大人になって、子育てに加えて、慰謝料だなんだで昼も夜も働きっぱなしで。いつ終わるかわからない仕事ばっかりの毎日にさ、なんだか疲れて眠れない夜があったんだよね。そんとき、たまたま飲んだんだよ。お茶。そしたら、すごくすっきりして、気分転換が出来たんだ
一口、お茶を飲む
でさ、ちょっとだけ分かったような気がしたんだ。志村さんのこと
志村のことを語る、翔の表情が穏やかなのを見て、千里、安心する
まあ、俺もたいがい甘いよな。
翔、テーブルに肘を付いて湯呑を両手持ち、恥ずかしいような懐かしいような笑顔を隠す
そんな翔の背中を見つめる千里


ねぇ、味見てもいい?
千里が手を伸ばす
いつも翔のお茶、入れてるけど、飲んだことなかったから
えー。眠れなくなったとか、言わない?
平気だと思う
千里の平気は信用できないけどなー
湯呑を受け取り、一口飲む千里の眉間に皺が寄る
しっぶい。
千里の案の定の表情に大笑いする翔
こんなの飲んでるの?と湯呑を返す
うん。
ぁ、でも、苦いのが収まると、ちょっと口の中が甘い後味になるんだね。これがいいのかな?
うーん、と、まじめな顔で考えている千里。
さあな。でも、千里には、必要ないんじゃねーの?

あれこれ言っても、二日酔いに効くから飲んでるだけだしな
ニヤニヤ笑いを浮かべる翔
えー!まじめに聞いてたのにー
千里翔を叩こうと拳を上げる
翔、腕で頭をガードする


ばたん


サウナからリビングに風が出てくる
どう見てもじゃれあってる千里と翔を見て、あからさまにむっとした顔の風
二人はわけがわからない
風、つかつかと歩み寄り、二人の間においてあった湯呑を手に取り、茶を飲み干して去る


後からサウナを出てきた優
大きくため息をつく
ちょっとタイミング悪かったね。今、風、かなり兄モード入ってるから

千里と翔、いまいち理解できないといった表情
妹を持つ、兄の責任と幸せと不幸について、ディープに語り合ってたんだよ。
聞いたところで、ますます意味わからない二人。
そんな二人を見て、優、もう一度、大きなため息
今度のため息は、風への同情よりも、出遅れちゃってる優自身の恋のため息
優、肩を落としてリビングを出て行く


優が去ったリビングのドアを見ていた千里と翔、顔を見合わせ、首をひねる


翔、湯呑をのぞき込み、空っぽになった底を千里に見せる。
全部飲まれちまった
もう一杯、入れようか?
やめとく。今度は眠れなくなりそうだから


少し早く帰ってきても、結局、喋って夜が更ける