フジテレビ火曜9時ドラマ『アタシんちの男子』を楽しみましょう!!
ドラマは感動のうちに幕を閉じましたが、まだまだ『アタ男』熱は冷めません。
終了したドラマなのでネタバレ含みます。ご承知おきください
『アタシんちの男子』をこれから見る方、ストーリー、次回予告、登場人物をお探しの方は、
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『続きシリーズ』『その後シリーズ』など、お話を読まれる方は、
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アタシんちの男子の針を進めたら…

なんと、ロールケーキの続きをまだ書いてたりして(笑)
まあ、ふざけた話なので、それなりに読んでいただければ…



■こいつらにはかなわない



何やってんだ?
リビングの入口でぐずぐずしている翔の後ろから、風が顔を出し、リビングを覗き込む
おかえり、風
なんだ、一緒に帰ってきたのか
千里は右手を上げて、猛は口の端で笑って、翔の向こうの風に挨拶
ただいま
と、風、微笑む。
「今日は会社を出る時間が一緒だったんだよ」と説明
千里の手元のケーキ皿とフォーク、猛の口元についたクリームを見て、大体の状況に察しがついた風
風、翔の肩を抱いて、「めずらしーねー。お前が妬くなんて」と楽しそうに耳打ちをする
…何、勝手なこと言ってんだよ!
翔、風の手を邪険に払い、猛と千里に気づかれないよう、小声で反論
翔の反論など聞こえてないかのように、風、さっさと階段を降りて、からかう気満々の表情で、今度は猛の肩に手を置く
なんだよー。猛、いいことしてもらってんじゃんかー
いーことじゃねーよ。
うるさそうに風の手を外す猛
この、ごーつくばりのちびっこが、俺を信用しねーで、フォークを渡さねーんだよ
それで、養ってもらってたのか?「あーん」て
からかうようにニヤニヤと笑う風
風の言い草が気に入らない猛、舌打ち
この借りは、いつか返す!
猛、千里を指差して宣言
何の借りよ!ケーキ分けてあげたのに!
千里も応戦
翔、バーカウンターに座り、二人のやり取りを見ている
風は千里の皿をのぞき
ねー、千里ー。俺にも一口もらえない?なんか疲れて甘いもの欲しいんだよねー
と微笑む
こいつがこんな笑い方をする時は、なんかたくらんでるんだよな、と顔を見合わせる猛と翔
そうなの?ちょっとしかないけど…
千里、手元のケーキ皿を見る
一口でいいよ。
そう?
風、千里がフォーク持ってる手を取って、小さいほうのかけらに刺す
大きいほう、食べればいいのに
こっちで十分
すんなりケーキを差し出す千里が気にいらない猛
なんだよちびっ子、俺のときと、ずいぶん態度が違うじゃねーか
なんか、猛みたいに出られると、素直に分けてあげたくなくなるって言うか…
千里、首をかしげて試案顔
なにー!
猛が千里にけんか売りそうになったのを見て、風、
猛の相手するより、先に俺に、頂戴?
と自分の口元を指差す
あ、そうか
「はい」と千里が差し出したフォークから、ぱくりとケーキをいただく風
うんうん、と満足そうに微笑む風
おいしい?
うん。千里が食べさせてくれたから、一段とおいしい
やきもち妬いてたのは、自分じゃねーか
と、翔、「あほらしー」と肩をすくめる
ち、デレデレしやがって、この兄バカが
猛もうれしかったら、デレデレしたらいいのに
と兄バカ全開の風
はぁ?ばっかじゃねーのか
猛、風に変顔で応酬
あ、翔も一口、味見する?おいしいよ
千里、カウンターの翔にケーキの乗った皿を掲げてみせる
いいよ、千里の食べる分が、なくなっちまう
翔、カウンターに頬杖ついたまま、首を横に振る
そう?あ、翔は甘党じゃなかったっけ
まーな
千里、翔がかけているスツールの隣に立ち、
なんだか元気ないみたい
と、翔を見て首を傾げる。
「そんなことねーよ」と、翔、千里を見て笑う
バーカウンターの中に入り、ストッカーからビールを選んでいる風
こっちは?
と翔に差し出す
あ、もらう
千里と猛は?
お、さんきゅー
カウンターに寄ってきて、ビールを受け取る猛
あたしはいーや
と千里、両手を広げて横に振る
じゃあ、千里には、残りのケーキ、「あーん」て、してあげようか
と風が笑顔でからかう
いいよ、恥ずかしいから
こういう類のことは、即実行しかねない風から、カウンターに置いた皿を遠ざける千里
その恥ずかしいこと、させたのはどこのどいつだ
グラスに注いだビールの盛り上がった泡を、口でお迎えしながら、猛が文句を言っている
千里、翔の隣のスツールに腰掛け、残りのケーキを堪能
あー、やっぱりおいしい!
お菓子ってすごいよね。ほんのちょっとでも、人を幸せな気持ちにしてくれるの
お菓子好きの千里、甘いもの最強説を唱える
はァ?なに、寝ぼけたこと、言ってんだ?
猛、呆れ顔
猛だって、さっき同じ様なこと言ってたでしょ。「満腹になると些細な問題は気にならなくなるって」
俺とお前じゃ、言葉の深みが違うわな
単細胞のおまえに言われたくないよなー、千里?
風が援護射撃
んだと、このやろー
風、猛の話なんかきいちゃいない。
「そんなに喜ぶなら、今度お土産、買ってくるよ」と、千里ににっこり微笑みかける
ありがとー
猫にマタタビ、ちびっ子には甘いもんかよ。
幸せそうに笑み崩れる千里を見て、喧嘩上等とばかりに風に食ってかかろうとした猛も鼻白んでしまう
おめーは、とことん、ちびっこに甘いな
と猛、片眉上げて風にいやみを言うが、風にはどこ吹く風
俺は、おにーちゃんですからねー
場違いなほど極上の微笑を千里に向ける風
兄二人の真ん中で、楽しそうに笑っている千里を、翔、ちょっと複雑な気持ちで見ている


兄弟の中では、自分が一番千里といろんな話をして、一緒の時間を過ごしている
千里のことを理解しているつもりでいるし、頼られているとも感じている
でも、そういう自信なんか、軽々と超えて行ってしまうようなところが、この兄達にはあるんだよなと、こっそりとため息をつく翔


そして、もうひとつやっかいなことに、
人に対してきちんと向き合ったり、受け入れたり、一生懸命になるところが、千里のいいところだし、大好きなところでもある
でも、そういう千里を見ていると、自分だけが特別なんだって言う自信が、時々、ちょっとぐらついてしまう


さっき、猛と千里を見て、嫉妬の針が振れたのには本当に驚いた
兄弟でこれでは、それ以外の男だったら、どうなってしまうのかと心配になる
小鹿な千里が相手なんだからと、ゆったり構えているつもりでも、なんでかしらないけど、いつの間にか俺のほうが振り回されてるんだよな
あくどいことをして人を騙したりした憶えはないものの、多少は恋愛感情を操るような仕事を長くしてきたし、
恋愛初心者で、おかしな手練手管を弄することがない千里と付き合っていくのに、嫉妬だとか、独占欲とかは、無縁なんだろうだと思ってたけど


離婚してからこれまで、いつもどこかで終わりを予感しているような恋愛ばかりしていた
千里を好きになって、こいつだけとちゃんと向き合おうと思いを定めてから、なんだか自分がどんどん不器用になっていくような気がする
これじゃ、優や智のことを、バカになんかできねーよな


俺も修行が足りないねー
と、ため息と一緒にグラスに吐き出して、ラガーの苦味で飲み下す
五臓六腑に染み渡るといったら大げさだけど、思いのほかビールが美味だったので、翔、自分が空腹だったことを思い出す


なー、なんかたべるもの、ある?
と隣の千里に尋ねる
鍋焼きうどんでよければ、支度できるよ
いいねー。具は何?
鶏とかまぼこ、ねぎにほうれんそう、えび天と、玉子。あ、あと椎茸けも
指を折って数える千里
お、うまそーだねー
翔、空腹のおなかを押さえる
したくするから、着替えてきたら?
助かる。さんきゅ。
風、食事は?
俺は済ませてきたよ

あ、でも、なんかつまみになるものが欲しいな
わかった
俺も、なんか食いてーな
横から猛が挙手
まだ食べるの?
千里、呆れ顔
やっぱり、俺にだけ、態度ちがわねーか?
日ごろの行いのせいなんじゃないのー?
空っぽになったケーキ皿と、猛が食べ終わった土鍋を持って、千里、さっさとキッチンに向う
千里に逃げられ、舌打ちする猛


千里の後ろ姿を見送って、1つ伸びをする翔
…あれ?
自分のために食事の支度をしにキッチンに向う千里を見たら、気分がかなり上向きになっている
なんて単純なんだと、自分自身に驚いてしまう


そうなんだよな
考えるより先に、体が動いてしまう千里のことを、あれこれ考えても意味がない
先のことを想像して悩むのは俺の性に合わないし
出くわした問題を、解決してくのが一番手っ取り早いってことだ
もう、あきらめて、振り回されるしか、手はないってことなんだろーな


一喜一憂している自分がおかしくて、翔、顔を隠すみたいにグラスを持って、残りのビールを空ける


風、そんな翔の百面相を,なんだかうれしそうに眺めている


風が自分のことを見ているのに気づいた翔
なに、見てんだよ、きもちわりーなー
なーんにも。
何にもって顔か?
いやー、翔はいい男だなーと思ってさ
はぁ?ばっかじゃねーの?
ニヤニヤ笑いの風を見て、きっとろくなこと考えてないんだろうなと、口の端をゆがめる翔